第二章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「はじめまして、春野 琴音です。よろしくね?」
そう言って笑いかける目の前の女性に、善逸の頭は雷に打たれたかのような衝撃を受けた。
******
杏寿郎から療養中の隊士に訓練をつける旨を聞いた琴音は、翌日、早速蝶屋敷へと足を運んでいた。
三人娘のすみに案内され、道場へと顔を覗かせれば例の隊士達だろうか。三人の少年にしのぶが全集中常中の説明をしている所だった。
一通りしのぶが実演をし終えるまで彼らを眺めていれば「いつまでそこで見ている気ですか?」と此方に向かって声がかかる。
自然と少年達の視線も此方へと移り、なんとなく恥ずかしくなってエヘ、と笑いながら琴音は彼らの元へと足を進めた。その姿を視界の端に捉えて、しのぶは彼らに向かって口く。
「全集中の呼吸においては、彼女から学んでください、、、と言っても2日しか彼女をお借りする事が出来ませんでしたので、死ぬ気で頑張って覚えて下さい」
しのぶはそう説明をし終えると「後は頼みますよ」と琴音に一声かけ、そそくさと道場から出て行ってしまった。そんなしのぶの後ろ姿を見送った琴音は、改めて目の前の少年達に視線を移し、口を開いた。
「はじめまして、春野 琴音です。よろしくね?」
そう言って、優しく笑いかける彼女に、ポカンとその顔を見つめる少年達。
炭治郎は〝綺麗に笑う人だな〟と琴音に一瞬見惚れていたが、挨拶をされたことに、はたと気づき、慌てて口を開いた。
「竈門炭治郎です、よろしくお願いします」
頭を深く下げて挨拶をした少年の名前に、琴音は〝この子が師範の言っていた隊士か〟と目を細めた。
杏寿郎に実弥相手に啖呵を切ったと聞いていた彼女は、礼儀良く挨拶をする姿に〝本当にこの子があの実弥さんに?〟と疑ってしまう。
そんな事を考えていれば、炭治郎の隣から
「お前強いのか?俺の子分にしてやってもいいぜ」
と、見た事もない生き物、、、猪の皮を被った人?のようなものが声をかけてきた。
炭治郎に気を取られてしまっていたが、訓練をつけてやる隊士は確か三人だったな、と琴音は思い出す。
それと同時に〝そう言えば、返ってきた返事は二つだけではないか?〟と気づいた琴音が、ふと、黄色い髪の少年に視線を移す。
琴音を見つめたまま固まっていた少年は、彼女と目があった途端、顔を真っ赤にして口をパクパクと開けたり、閉めたりを繰り返していた。
〝どうかしたのだろうか?〟と心配になった琴音が彼に近づいた瞬間。
「善逸君。言い忘れていましたが、彼女に指一本でも触れた事を知られれば、君の命はありませんよ」
先程道場を出て行った筈のしのぶが、入り口からひょこっと顔を出し呟いた。しのぶに善逸と呼ばれた黄色の髪の少年は、その一言に一瞬固まった後、、、
「嫌ァア"〜〜〜」
耳を塞ぎたくなるような叫び声をあげた。どんどん真っ青な顔色に変わっていく少年を他所に
しのぶは「では、頑張って下さい」と今度こそ、道場を後にするのだった。
******
なんとか落ち着いた善逸に、苦笑いを漏らしながら琴音は口を開いた。
「じゃあ時間もないし、早速やってみようか」
そう言って笑った琴音に、何をするのだろう?と炭治郎達は首を傾けた。カナヲやアオイにつけて貰ったような鍛錬でもするのだろうか?と彼女を三人が見つめていれば
「とりあえず皆の動きが見たいから、今から私と君たち三人とで組手をしよう」と呟いた。
〝一対三、、、先輩隊士で実力者と聞いたが、女性相手にそれは駄目ではないだろうか〟と炭治郎は思ったし
〝組手って絶対琴音さんに触れちゃうじゃん!俺、死ぬの?え、そおなの?そんなの嫌ァ〜〟と善逸は思った。
そんな中、一人伊之助だけはやる気満々で「よっしゃー」と叫ぶや否や、琴音目掛けて突っ込んでいく。
まだ説明の途中でいきなり走り出した伊之助に、二人は慌てて止めに入るが
「うん、元気はいいね。でもここは、ガラ空き」
と琴音は一瞬で伊之助の背中を取り、ツンツンと背中を突いたのだ。
ギョッとして振り向いた伊之助は〝こいつやる奴だぜ〟と冷や汗をながしながら、また彼女へと走り出す。
「ほら、二人も早く」
その光景を驚いて見ていた二人も、琴音の声に、慌てて彼女に向かって駆け出すのだった。
******
「だあぁーーーっ」
地に伏せている伊之助が大声で叫んだ。
あれから一時間ほど組手をしていた彼らだが、三人がかりで挑んだにも関わらず、誰一人として琴音に技をかけるどころか掠りもしないのだ。
長時間彼女に全力で突っ込んで行った三人は
はぁはぁ、と荒い呼吸で地面に突っ伏していた。
それに比べて琴音は、汗ひとつかかず涼しい顔をしている。あまりの力の差に炭治郎が落ち込んでいると、フム、と顎に手を置いた琴音が口を開いた。
「まず伊之助君は、この中で一番相手の動きを読むのが上手い。気配を察知するのかな?瞬時に攻撃に備えて身を交わす技術は素晴らしい物がある。その反面、君の攻撃は分かりやすく単調だからもう少し応用をつけていかないとね?」
そう言われた伊之助は「お、おう」と戸惑いながら返事を返す。それに、にこりと笑い返した琴音は続いて炭治郎に向かって口を開く。
「炭治郎君は、虚をつく攻撃が上手いね。君は冷静に頭を使って戦う事が出来る。戦いにおいて状況を的確に判断するのは、とても大事だから伸ばしていくべきだと思う。だけど、それを生かすには、もう少し速さが必要かな?」
炭治郎は、少し驚きながらも「はい」と頷いた。
「それから善逸君」
そう彼女が口にすれば、善逸は飛び上がるほどの挙動を見せる。それに苦笑いを浮かべて口を開く。
「君はこの中で一番速い。それに周りを見て、炭治郎君達の動きにも、上手く合わせられる技術もある。ただ、踏み込みが弱いのと、軸足を狙われた時の対応が少し荒い。速さを生かすなら、踏み込む際に力をこめる事、且つそこを狙われた際の見のこなしを覚えた方がいいね」
そう言ってにこりと笑った彼女は、善逸の前にしゃがみ込み、今度は「ごめんね」と小さく謝った。
何故琴音が謝ったのか分からず、善逸が首を傾げれば、彼女は眉を下げて申し訳なさそうに話し出した。
「さっきのしのぶの言葉だけど、、、多分、善逸君をからかって言ったんだと思うの。私、君の命を狙ったりしないもの。安心して?
だから、、、もし出来たら、皆んなと同じように、私とも仲良くして欲しいな?」
そう言って困ったように笑う琴音からは、こちらを気遣う優しい音が聴こえてきて、、、
善逸は頬を赤く染め、思わず何度も頷くのであった。
そんな彼の姿に〝こんな素直な少年を揶揄うなんて、しのぶも悪い人だな〟と自分の親友の姿を思い浮かべてため息を吐いてしまう。
〝きっとしのぶなりに、彼らを気に入っている証拠なのだろうが。彼女には困ったものだ〟と考えた琴音だが『でも、、、』と笑みを深くする。
しのぶが直々に頼み込んでくる訳だ
彼らの秘めたる才能に気づいた琴音は、嬉しそうに微笑むのだった。