第二章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「え?私がですか?」
「うむ。胡蝶直々に頼み込まれてしまってな。」
キョトンと首を傾げた琴音に、杏寿郎も渋い顔をしながら口を開いた。そのまま二人してうーん、と悩み込む。
彼らの会話は、杏寿郎が本部から帰ってきた所から始まった。
******
昨日大規模な任務から帰った琴音に、夜新たに任務が入る事はなかった。
その為、しっかり体を休めれた彼女は、翌朝杏寿郎を見送った後、千寿郎に打ち込み稽古をつけていた。
千寿郎は本当に努力家である。
正直〝剣の才能があまりない〟と初めは思っていた琴音だったが、最近ではめきめきと力を伸ばしている彼に、いつも驚かされていた。
だが実際のところは、彼の努力は勿論なのだが、、、
体の成長期という事や、琴音がつける稽古の仕方に要因があったりもする。
人一倍、呼吸の精度を極めるよう努力を怠らない彼女。
腕力ではまだまだ、不安要素は残るものの、体や呼吸の使い方は群を抜いているものがある。
そしてその類い稀ない才能は、こうして人に指導する際に発揮される。
もともと体の仕組みなど、まずは頭で理解する所から鍛錬を始めた彼女にとっては、
どこで力をうまく使えていないか見極める事など造作もない事だった。それを相手に分かりやすく伝えるだけの話術も持ち合わせているため、琴音に稽古をつけて貰った千寿郎は、めきめきと力を伸ばしていったのだ。
だがやはり〝鬼殺隊に入るかどうか〟は別の話で、彼が兄のような剣士になりたい事は分かっていても、それに賛同してやれない自分に気付いて琴音は小さくため息をついた。
そんな彼らの元に、突然後ろから声がかかる。
「千寿郎また力をつけたな!鍛錬を怠っていない証拠だ、感心感心!」
急に聞こえた兄の声に、驚いた千寿郎は一瞬固まったが、嬉しそうに頬を染めるのだった。
******
杏寿郎が帰ってきた事もあり、今日の稽古はそこでお開きとなった。
「琴音、少し話せるか?」
杏寿郎の問いかけに頷いた彼女は、千寿郎に断りを入れ、彼の後ろをついていく。
縁側まできて歩みを止めた杏寿郎と琴音は、そこに腰をかけて、彼から本部での報告を聞いていた。
報告というのはやはり、新たな任務の事で
「今回の任務は長期になるだろう。十二鬼月かもしれん、、、難しい任務になるだろうが、琴音も一緒に同行して貰えるか?」と杏寿郎は口にした。
それに琴音は「勿論です」と笑って答えれば、杏寿郎も嬉しそうに口を開いた。
「琴音がいれば、どのような時でも安心して戦えるからな!だがいつも言うことだが、無茶だけはしないでくれ!」
「ふふ、大丈夫ですよ。師範のおかげでいつも無茶はさせてもらえないですから、、、安心して此方も戦えます」
そう言ってお互い楽しそうに笑っていれば「そういえば」と杏寿郎が口を開いた。
「先日話した、鬼を連れた隊士を覚えているか?」
突然険しい顔をして、そう話し出した杏寿郎に琴音は姿勢を正して彼の話に耳を傾けた。
******
ことの始まりは杏寿郎が本部で、同僚のしのぶとばったり顔を合わした所から始まった。
「出陣ですか?」
「胡蝶か。鬼の新しい目撃情報が入ってな、、、向かわせた隊士がやられたらしい」
そう言って、今しがたお館様から伺った任務の内容を杏寿郎は話していく。それを難しい顔で聞いていたしのぶは「十二鬼月でしょうか?」と一緒になって考えを巡らせた。
顎に手を置きふむ、と暫く考え込んだ彼女だったが
「煉獄さんが行かれるのであれば心配ありませんね」
と笑いかけるのであった。
そんな彼女に今度は杏寿郎が問いかける。
「胡蝶、あの頭突きの少年を預かってどうするつもりだ?」
それを聞いたしのぶは〝待っていました〟と言うかのように口を開いた。
「実は今蝶屋敷にて、機能回復訓練を受けていただいているのですよ。彼らには、療養中に全集中常中をできるようになって貰おうと思いまして」
そこで言葉を区切ったしのぶに、杏寿郎は嫌な予感がした。そんな彼にクスリと笑みを深くしたしのぶは口を開く。
「そこで琴音を 「断る!」
彼女の言葉を遮るように大声で「断る!」と叫んだ杏寿郎に、しのぶは「まだ最後まで言っていませんよ」と呆れながら呟いた。
そもそも、しのぶが頼もうとしたのは例の隊士達に訓練をつけるため、琴音を少し借りたいという事だった。
先程杏寿郎に話したとおり、全集中常中を教えるとなれば呼吸の精度を極めている琴音の名前が真っ先に上がる。経験も実力もあり、人に教えるのも上手いとなれば、これ以上の適任者は彼女しかいないだろう。
それを分かっているからこそ、此方が口に出すより早く彼も拒否してきたのだろう、そうは思うのだが。
しのぶは目の前の彼に視線を移す。
腕を組み「むう」と唸っている辺り、よほどご機嫌ななめなのだろう。
いつからかは知らないが、彼が琴音に思いを寄せているのに気付いているしのぶは小さくため息を吐く。以前琴音が大怪我を負った際には見舞いに来た隊士に詰めよった彼だからこそ、このような反応が返って来ることを想定はしていた。
だが実際にその反応を目の当たりにしてしまうと、大きなため息を吐きたくもなってしまう。
まぁでも、琴音の事を一番側で支えているのは間違いなく彼であるし、琴音もなんだかんだで彼を慕っているから、しのぶが口を挟む事はしないー。
のだが今回は自分も期待を寄せている隊士達なので、杏寿郎には申し訳ないが先に手を打たせて貰った。
「煉獄さん、お館様にはもうお許しを頂いていますので、諦めてくださいね。それにお借りするのは3日、、、いや2日で大丈夫ですから」
しのぶがそうとどめの一言を告げれば、目を見開いた後、額に手をやった杏寿郎は「よもやよもや、、、」と力なく呟くのであった。
******
杏寿郎からことの経緯を聞いた彼女は
冒頭の言葉を呟いた。
「え?私がですか?」
二人はうーん、と一緒に悩み始めるが先に口を開いたのは琴音だった。
「私は別に大丈夫なんですが、、、師範との任務には支障をきたしませんか?」
「胡蝶からは訓練は2日でいいと聞いているから、無理をいうが訓練が終わり次第此方に向かってくれるだろうか?」
そう眉を下げて杏寿郎が琴音を覗きこめば、
「でしたら訓練の件はお任せください」
と笑って彼女は返事をした。
勿論お館様が容認されている事なので、彼にはどうこう言うつもりは毛頭ないのだが、、、
〝こうも簡単に送り出すなんて〟
目の前でにこにこと笑う彼女を視界の端に捉え、杏寿郎は一人項垂れてため息を漏らすのだった。