第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
談笑しながら千寿郎が待つ、居間まで移動してきた杏寿郎と琴音は、箱膳に、美味しそうな料理が並んでいるのを見て、思わずお腹をぐう、と鳴らした。
兄の隣で笑う琴音の姿にほっと安心したような、顔をしている千寿郎に、彼女は気付く。
心配してくれた彼に「ありがとう」と琴音が笑って伝えれば「いえ、、大したことでは、、、。さぁ、折角のご飯が冷えてしまいます」と苦笑を浮かべながら答えてくれた。
その様子を見届けた杏寿郎が「うむ!そうだな!」と座布団に腰を下ろしたのを合図に、皆で箱膳の前に着座する。
杏寿郎の一際大きな「いただきます」が鳴り響き
、皆で昼飯に手を伸ばすのであった。
******
ご飯を食べ終え、千寿郎と片付けを共にした琴音は、杏寿郎に約束通り稽古をつけてもらえる事になった。
煉獄家には大きな道場がある。
その道場の中、静かな空間に二人、、、木刀を持って向かい合う。
怪我の完治後が、いきなり柱と打ち込み稽古とは
かなり酷である。
他の隊士なら悲鳴を上げるところだが、、、
琴音は「本気で行きますよ」と笑いかけ、床を蹴って駆け出すのだった。
******
あれから稽古を始めて、優に二時間は超えたであろう頃。バキッと何かが折れる様な音で、二人の動きがピタっと止まった。
打ち込み稽古を初めてまず杏寿郎が驚いたのは、彼女の早さ、それに判断力だ。
任務で琴音の戦いを見ていた杏寿郎だが、彼女の早さは想像を超えていた。
一瞬で間合いを詰めてきた彼女に木刀を振り下ろせば、軽く身を捻りながら受け流され
体制を変えた彼女の一撃が杏寿郎を狙う。
早さだけでいえば、琴音の方が何倍も上手のように思えた。
杏寿郎がなんとかその早さに食らいついていけば、人間の体とは不思議なもので段々とその早さに慣れてくるのだ。
そうなってしまえば、一振りに重みがある杏寿郎が圧倒的に有利。
今だって彼女が振り下ろした木刀が、杏寿郎のぶれない木刀の強さに耐えられず、根元付近から折れてしまったのだ。
悔しそうに「あ〜ぁ、折れてしまいました」と呟いた彼女に、杏寿郎は思った事を伝えていく。
「琴音は、早いな!俺でも初めは、ついて行くのがやっとだった!
だが、体力の無さが少し目立つ!中盤になった頃から、木刀を振り下ろした際の体のぶれが大きくなっていた!」
それを真剣に聞いていた彼女はなるほど、と考える。
今まで腕の力をつける鍛錬を主に行なっていたが、体がぶれると言う事は足腰を鍛えるところからだろうか、、、
長時間、技を受け続けて手が痺れている感覚にまだまだだな、と考えを巡らせていれば、
「では、今のを忘れぬうちに、素振り1000回行うとしよう!」
と言う杏寿郎の声に、琴音はぎょっとし顔を上げた。
今の流れは稽古の終わり、、、いや、休憩でもいいが、そんな感じだったじゃないかと。
そう、彼、、、煉獄杏寿郎は後輩思いの熱い男。
それなのに何故弟子が甘露寺蜜璃以外いなかったのか。答えは簡単、彼の稽古もまた地獄の様に辛く厳しいからなのだ。
だが、それを日々こなしているからこそ柱は強く、尊敬される。その事を知っている彼女は
「は、はい〜〜」とへろへろになりながら、また立ち上がるのだった。
******
彼女が素振りを始めれば、同じように横に並び杏寿郎も木刀を振り下ろす。
同じ木刀のはずなのに二人の振り下ろす音は全然違う。杏寿郎の木刀は風を切るように
ブン!ブン!と重みを感じる音を奏でている。
まさか素振り一つで力の差を感じてしまうとは、
と内心落ち込んでいる彼女に
「そこだ!振り上げた時琴音は体がふらつくようだ!振り下ろす時に力を入れるのは勿論大切だが、一つ一つの動作に力を乗せてみなさい!」と声がかかる。
彼に言われた通りできるだけ丁寧に、、、
先程よりゆっくり力を入れて振り抜いてみれば、杏寿郎程ではないが琴音の木刀も、重みを感じる音を奏でた。
それが嬉しくて、、、子供が母に「見て!」とするような、キラキラする眼差しで彼を見つめれば
「うむ!先程より良くなったな!残り852回!」
と言いながら杏寿郎は木刀を振り下ろす。
嬉しさのあまり忘れていたその回数に顔を青ざめた琴音がそこにいた、、、
******
それから何とか1000回木刀を振り下ろした琴音は、「ひぇ〜」と奇声を発しながら床にへたり込んだ。もう大きな声は出ないのだろう、絞り出したかのような小さなその悲鳴に杏寿郎は思わず笑みを漏らす。
そこへ、見計ったかのようなタイミングで千寿郎がやってきて声をかける。
「兄上、琴音さん。そろそろ休憩にしませんか?琴音さんが持ってきてくれたスイートポテトを食べましょう?」
その瞬間、もう声も出ません、動けません。
と床にへたり込んでいた琴音がパッと目を輝かせ、〝待ってました〜!〟と言わんばかりに飛び起きた。
そんな元気があるのなら、まだまだ稽古できたのでは、、、と思った杏寿郎だが。
スイートポテトと言う魅惑の響きに
「うむ!では今日はここまでにして、縁側で皆で頂くとしよう!」と答えるのであった。