第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
藤の花が咲き乱れ、美しい日本庭園が広がるー……
ここは鬼殺隊本部、産屋敷邸である。
今日は半年に一度の柱合会議が開かれる日ということもあり、すでに数名の柱が本部の庭に集まっていた。
炎を思わせるような髪をした炎柱の煉獄杏寿郎と、最近恋柱に就任した甘露寺蜜璃もその一人である。
彼らは元々師弟関係であり、元継ぐ子の蜜璃に甲斐甲斐しく世話をやく煉獄の姿は、柱達の間ではもう見慣れてしまった光景である。
そんな二人の元へ、音柱である宇髄天元が声をかけた。
「よう、煉獄!お前は相変わらず派手だな」
「おお、宇髄じゃないか!!君も変わりないようで安心した!!ところで俺に何か用だろうか!!」
ハキハキと答える杏寿郎を前に、天元は昨日の可愛い後輩の願いを叶えてやろうと話し始めた。
「いや、用って程ではないんだがな。お前、甲の隊士で春野 琴音って奴を知っているか?見た目は派手な女隊士で、随分と地味な技を使う奴なんだが」
「春野?聞いたこともない隊士だな!して、その隊士がどうした!!」
何処を見つめているのか分からない杏寿郎の笑顔を眺めながら、天元は本題を話し出す。
「琴音は、お前と同じ炎の呼吸を使うんだが……どうも腕力が足りないみたいで、硬い鬼と出くわすと倒すのに苦労するんだとよ!昨日も随分と無茶をしたのか利き腕に怪我を負ってやがってなー。同じ呼吸の使い手なら、あいつの地味な技もド派手な一撃に変える術を教えてやれるかと思ったんだが」
「うむ、なるほど!!だが……炎の呼吸に地味な技などあっただろうか?」
「あ〜〜まぁ、そりゃ……琴音の戦い方にも原因があるかもだけどな……」
何やら面倒臭そうに語尾を濁した天元の言葉に、杏寿郎はさっぱり分からないという表情を浮かべた。
そんな二人の会話を聞いていた蜜璃がオロオロしながら口を開く。
「宇髄さん、それで琴音ちゃんの怪我は大丈夫なんですか?」
「あ?なんだ、甘露寺は琴音の事知ってんのか?」
そこで漸く、蜜璃に視線を移した天元に彼女は、ぽっと頬を染めながら爆弾を落とす。
「はい!琴音ちゃんと一緒に任務に就いた事はないんですけど……」
そこで彼らから少し離れた場所へと視線を移す。
そこには、こちらを見ている傷だらけの男が立っており、蜜璃の視線に気がついて、不思議そうな表情を浮かべていた。
「先日、不死川さんがとっても可愛い女の子とお食事をしている所に出くわして……思わず声をかけてしまったんです!!その時一緒にいたのが、その琴音ちゃんだったんですが……琴音ちゃんを見つめる不死川さんの目がとっても優しくてっ、…キャーーッ!!思い出すだけでもキュンキュンしちゃう!」
しかし、きゃーきゃーと興奮しながら、蜜璃が有る事無い事話始めるものだから、実弥もギョッとして口を開く。
「おいおい、何勝手な事言ってやがる……あいつとは任務がよく被るから、たまたまあの時は一緒に飯を食ってただけだァ」
そう言って眉間に皺を寄せた実弥が「……それに、琴音はそんなに弱くねェだろ。」と続けた事で、その場に居た者達は驚いたように彼を見つめた。
この男、不死川実弥は鬼殺隊内で最も恐れられている男なのだ。
自分にも他人にもとても厳しくいつも荒々しい態度の男が、まさか貶すどころか褒めるだなんて……
〝その隊士って、どんな奴だ?〟
その場にいた者達は思わず考えを巡らせる。
そこへ遅れて登場した蟲柱の胡蝶しのぶが「あらあら、随分楽しそうなお話ですね〜。とても気になる所ではありますが……」と笑顔を貼り付けた顔で振り返り、天元を見上げて首を傾げた。
「琴音は昨日大怪我を負っていたらしいのですが、宇髄さんは知らなかったんですか〜?」
「は?大怪我……?いや、あいつ普通にけろっとしてたぞ?」
「元忍びの宇髄さんでも気づけなかったんですか〜?そうですか、元忍びでも〜……」
ふふ……と口元に笑みを浮かべながら、しのぶに毒づかれてしまう有様だ。
******
笑顔なのに目が全然笑っていないしのぶの話では、昨日の任務で琴音は利き腕を20針も縫う大怪我を負っていたのだとか。
しかもその時たまたま近くにいた隠しが彼女の怪我に気づいた為、なんとか治療をさせて貰ったが、なんとその怪我を「呼吸で止血したから問題ありません」などと言って治療を一度は拒んだらしい。
もともと琴音は怪我を負っても呼吸を使って応急処置をし、また別の任務に就いたりするような所があった為、「怪我をしたら必ず蝶屋敷に来る事」と毎回耳が痛くなる程言われているのだが……
行ったら行ったで自分を大切にしろ…なんて怒られるものだから、怪我を負っても自力でなんとかなりそうなものは、バレないように隠すようになっていた。
そんな琴音の暴挙に勿論気づいていたしのぶは、隠し達に必ず治療するようにと口を酸っぱくして伝えていた。
今回はその事もあり「怪我の治療をさせて頂かないと私が胡蝶様に怒られます〜」と泣きつかれた琴音が大人しく治療を受けた、との内容だった。
しのぶは笑顔で「どいつも、こいつも……」などとブツブツ言っているが、天元はそれを聞き流すことにした。
〝……だいたい、何で俺が琴音の怪我の事で怒られなきゃなんねえんだ〟と心の中だけで反論はしておく。
そんな天元は杏寿郎に再び視線を戻し「まぁ、琴音と任務が被る事があったら、よろしく頼むな」と声をかけた。
すかさずその横から「その時は一度、蝶屋敷に来る様に伝えて下さいね?」としのぶの声が聞こえたのとほぼ同時……
「お館様の御成です。」
少女の声が響き、我らが鬼殺隊の当主が顔を見せた。
それを合図にその会話はお開きとなり、柱合会議が始まるのだった。