第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あの後僅か三十分で片付けが終わった琴音は
、軽く食事を済ませ早めにお風呂へ入り、
今は布団の上で、全集中の呼吸の精度を上げるための瞑想を行なっていた。
体の隅々まで酸素を運ぶように深く、深く息を吸い、体の血の巡りや、心臓の鼓動に集中して、頭の先から足の先まで神経を研ぎ澄ましていく。
就寝前の日課になっているこの時間こそが、彼女の呼吸が上達した一番の理由なのだ。
今は怪我の為任務には出ていないのだが怪我をしていようが、任務でヘトヘトになっていようが、毎日毎日、これだけは必ず続けているのだ。並々ならぬ努力である。
そして呼吸の精度を高める事で、治癒力も格段に上がる、、、今回の怪我もわりかし大きな怪我だったにも関わらず、怪我を負って5日で傷は完全に塞がっていた。
これでいつでも任務に出れるだろうと琴音が考えていれば、窓の外に何かが降り立つ気配がした。
閉じていた目を開け、窓に近づけば鎹鴉が文を持って帰ってきた所だった。
琴音は紙が三枚あるのを確認し、一枚ずつ目を通していく。
最初のは実弥さん。
彼からは「お前が見つけた店なら、今度お前が案内しろ」と綺麗な字で書かれていた。
口は悪いし、荒々しい彼だが〝書は人となりを表す〟と言う通り、真面目で優しい彼らしい字にほっこりしてしまう。そして、これは一緒に行こうというお誘いだなとクスリと笑った。
次に開いたのは、師範のもの。
「了解した。では都合がいい時間に家に向かってほしい。俺は任務が入っているから、終わり次第急いで帰る。」と書かれていた。
フムと顎に手を当てた琴音は〝明日は朝一に蝶屋敷に本を手渡しに行き、その足で師範のお宅に向かおう〟という考えに至り、部屋の隅にある本へ目をやる。
重そう、、、と少し弱気になるが、これも鍛錬だな!と苦笑し最後の手紙を開く。
そこにはたった三文字
「貸し一」
、、、これは誰か見なくても分かる、天元さんだ。
〝あぁ、そうか彼に借りを作ったのか私〟と少し固まっていた琴音だが、今まで色々気にかけてくれたのだから一どころじゃ済まないのでは?となんだか可笑しくて笑ってしまった。
******
翌日、予定通り朝一に蝶屋敷へと足を運んだ琴音。屋敷の主は任務で不在だったが、朝からにこにこと迎え入れてくれた蝶屋敷の3人娘に本を預け、その足で煉獄家へと歩みを進める。
少し距離はあるが昼前にはつけるだろうと、一応千寿郎君宛に鴉を飛ばす。
その道中にあったカフェーに立ち寄り、確か師範は「さつまいもが、わっしょい?」、、、だったとか言っていた事を思い出し
スイートポテトを手土産として持ち寄る事にし、道のりを急いだ。
蝶屋敷から少し距離はあったが、なんとか昼前に師範の家にたどり着き「御免ください」と声をかけた瞬間扉が開く。
一瞬師範かと思ったが、無精髭を生やし、こちらを人睨みする男性が、彼よりだいぶ年上なのに気づき、慌てて頭を下げて挨拶をする。
「師範の、お父上様ですか?私、今日から炎柱様の継ぐ子としてこちらでお世話になります、春野 琴音です」
よろしくお願いします、と続くはずの言葉は、目の前の男、愼寿郎の言葉で消えてしまう。
「女なんかが鬼狩りなんて出来るわけがない。どうせすぐに死ぬんだ、鬼殺隊なんか辞めてしまえ」
その言葉に思わず顔を上げ男を凝視してしまう。
でも、、、
目の前の男がどこか辛そうに見えてしまうのは、きっと琴音の思い過ごしではないだろう、、、
彼女は軽く息を吐き、安心させるように笑顔を作り
「では、死なないように鍛錬に励みますので、よろしくお願いします」と頭を下げ直す。
それに男はふん、と鼻を鳴らし横を通り過ぎていく。
その瞬間に鼻を掠めた酒の匂いに、小さく溜息を漏らし琴音が頭を上げれば、、、
玄関の扉の奥から眉を下げこちらを伺う千寿郎君。
見られていた事に、苦笑しながら
「今日からよろしくね?」と伝えとりあえず家へと入るのであった。
******
家の中へ入った瞬間、千寿郎君は「父が申し訳ありません」と話し出す。
「先日、兄が父上に琴音さんの事は話をしていたのですが。その、、、父はお酒が手放せなくて。
ああやって、当たり散らすこともしばしばで、、、だから決して琴音さんの所為ではないんです!」と必死になっている姿に、思わず琴音は噴き出してしまう。
千寿郎は知らないが、彼女の育ては随分と厳しくて常日頃からあのような罵声は聞き慣れていたし、あんな顔して言われても
〝あの人顔に「心配です」て書いてあったしな〟と本人はケロっとしているのだ。
いきなり笑い出す琴音に「どこか笑うとこありましたか?」と、千寿郎は少し機嫌を損ねてしまう。
ブスッとしだす目の前の彼に、慌てて「ごめん、ごめん」と謝りつつ
「私当面の目標は、あの人に認めてもらう事にするわ」と、できるだけ優しく笑いかける。
千寿郎君は優しい子だからこそ、こんな自分なんかの事で心を痛めてほしくない、、、
と琴音は思い、全く違う話題を口にする。
「あ、お土産があるから師範が帰ってきたら後で食べよ〜!」
そんな琴音にはぁ、と分かりやすくため息を吐いて
「その前に昼飯にしましょう、ご飯はもう出来ていますので用意しますね。
先程鎹鴉からの伝達があって、多分兄上も、もうそろそろ帰ってきますので、
琴音さんは、荷物を部屋へ置いてきてください」と声をかけるのであった。