第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あの後蜜璃ちゃんと一緒にお婆ちゃんに挨拶へ行って、無事に台車を借りてきた私達。
お婆ちゃんは少し眉を下げ「寂しくなるね」と笑っていたけど。
次の瞬間には「嫁ぎ先が決まったのかい?」と嬉しそうに聞いてきた。
それを聞いた蜜璃ちゃんが「やっぱりそういう事なのねー!」きゃーっと騒ぎ出すものだから大変だった。
なんとかその場を収め、自宅へ戻り作業に取り掛かる。
汚れないように大きめの風呂敷を敷いた台車の上に、本をこれでもかと載せていく。
事前に師範が本を紐で纏めていておいてくれたから、載せる作業は思ったよりすぐ終わりそうだが、、、
果たしてこの台車は動くのか?と思うくらいの重量にはなっていた。
それを「さぁ、行きましょう」と軽々と引いていく蜜璃ちゃんに吃驚して慌てて後を追う。
意外と軽いのかな?と一瞬思ったが、ギシギシと悲鳴をあげる台車に〝彼女が凄いのだ〟と思い知らされる。
なるほど、、、やっぱり柱は凄いのだな〜
あれ、これ昨日も感じたな、既視感。
などと考えながら申し訳程度の力添えではあるだろうが、後ろから台車を押す。
******
図書館は案外家から近い場所にあった為、三十分もかからずに目的地に到着し、ふぅ〜と一息つく。
建物の中へ入り、事前に用件を伝えていた男性を探せば、先程同様彼は受付業務をしていた。
ふと彼と目が合えば、驚いた表情をしこちらへ走ってきてくれた。
あれからまだ半日くらいしか経っていないのだから、大量の本と共に戻ってきた私に驚いているのだろうな、、、と少し笑ってしまった。
だが、すぐに彼はこちらに姿勢を正して
「こんなに沢山、本当にありがとうございます。約束通り数冊、本をお持ち帰り下さいね」と頭を下げてお礼を言うのだ。
引き取ってくれて助かったのは寧ろこちらの方なので、私も彼に合わせて慌てて頭を下げたのだった。
台車から本を下ろす作業は図書館の職員達が引き受けてくれるらしいので、その間に貰っていく本を探す事にした私達。
蜜璃ちゃんには随分助けてもらったので、彼女にも数冊選ぶように伝えてそれぞれ本棚の前で別れた。
専門的な本をかなりの冊数読み漁ってきた所為もあるが、やはり男性から聞いた通り
ここの図書館は専門的な本の種類が少なく、目ぼしい物はなさそうだった。
ふらふらと本棚の間を彷徨い気づけば、子供向けの絵本が並ぶ所まで歩いてきてしまったようだ。
なんとなく絵本の棚を見つめていると、ある一冊の本をみつけ動きを止めた。
ふふ。と一人静かに笑い、私はそれに手を伸ばすのだった。
******
そうして、一通り棚を見て回り蜜璃ちゃんと合流する。彼女は恋愛小説と、お菓子作りの本とで4冊手にしていた。かく言う私は絵本を一冊。
それを見た蜜璃ちゃんが
「琴音ちゃん、その本一冊だけ?私選びすぎちゃったかしら?」とオロオロし出すから
ちがうの、と口を開いた。
「本は10冊くらい選んでいいと言われてたんだけど、実は欲しい本を見つけられなくて、、、
で、フラフラしてたらこれを見つけてね。
昔よく弟に読んであげてた絵本があったから、懐かしいなって」だから、大丈夫よ?と笑えば
安心したように彼女も笑ってくれた。
お互いの本を確認しあった後、5冊の本を持って男性の元へ向かえば、台車の本を無事おろし終わった所だった。
「こちらの本を頂いてもよろしいですか?」と職員の男性に本を確認もらえば
絵本を手にした私に驚いたのか、一瞬キョトンとした彼だったが
「勿論です。どうぞお持ち帰り下さい」と最後は微笑んでくれた。
******
その後彼にもう一度お礼をし、台車を引いて帰路に着く。色々と手伝ってくれた蜜璃ちゃんにも
「今度改めてお礼をさせて?」と次回、甘味処へ
ご一緒させてもらう約束を取り付けて別々の道に分かれた。
彼女は相変わらず手をブンブン振って、「またね〜」と笑顔を振りまいて帰って行った。
うん、可愛いな蜜璃ちゃんは。
ふふふ。と一人ニヤニヤしながら歩いていれば、あっという間に家が見えてきた。
お婆ちゃんに「助かりました」と台車を返し、改めて片付いた自分の家へと足を踏み入れる。
本の整理をしていて分かったのだが、なんと160冊ほどもの本を溜め込んでいた。
それが一気に減って、今はしのぶに譲る用に分けた20冊ほどが置いてあるだけ、、、
がらんとした部屋に少し淋しさもあるが、、、
これからの日々を思い浮かべ自分に気合いを入れ直し、窓の外で羽を休めていた鎹鴉を呼びつける。
師範宛に〝蜜璃ちゃんに手伝って貰えて無事に図書館へ本を運べた事と、明日にでも師範の家へ向かえる準備ができた事〟を文に書いていく。
よし!と書き終えた文に封をしていればふと、報告する事を思い出し、更に2枚紙を増やして書いていく。
実弥さんに〝先日見つけた甘味処の報告〟と
天元さんに〝煉獄さんに会う機会を作ってくれたお礼、そして煉獄さんの継ぐ子にして頂ける事になった報告〟だ。
「三箇所も報告をお願いしてしまってごめんね?」と干し芋を少し分けてやり、その背を撫でる。
鴉が飛び立つのを見届けて、残された荷物の片付けに手をつけ始める。
と言っても本が大量にあっただけで、もともと服は隊服と寝巻き用の浴衣があるのみだし、
任務後に使う簡易的な応急処置を行う道具がある位な為、すぐに片付いてしまうだろうな、、、
と思いながら作業に取り掛かるのだった。