第五章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
琴音の両親に挨拶を終えた二人は、さっそく次の週には本格的に物件探しを開始した。
と言っても実際に探し始めれば、元々行動力が人よりもずば抜けている杏寿郎によって、あれよあれよと話は進んでいっている。
「では、ここにするとしよう!!」
「ええっ!?……杏寿郎さん、二人で暮らすには広すぎませんか?」
「む?いつか子供が出来た時の為、これくらいの広さは必要だろう?」
「こっ、子供!?それは、……少し気が早いというか……」
なんというか……と、恥ずかしそうにごにょごにょと口を動かした琴音に、不動産屋の男は満面の笑みで口を開いた。
「この物件でしたら部屋数は勿論ですし、セキュリティもしっかりしていますから安心ですよ?」
「うむ!それはありがたい!!子供は三人は欲しいと思っているからな!!広いに越した事はない!!」
「そうでしたか!でしたら、きめつ小学校も近い事ですし、奥様も安心ではないですか?」
「……お、奥様?」
担当者の一言に、ぽぽぽと頬を染めながら呟いた琴音と、その彼女の肩を抱いて満足そうに頷いた杏寿郎に、担当者の男は営業スマイルを浮かべた。
『ご契約ありがとうございます!!』
******
琴音達が本日訪れたのは、きめつ学園まで歩いて10分程度の場所にある新築のマンションである。
当初、賃貸のアパートをと探していた琴音だったが、どうせ世帯を持つのだからと杏寿郎に押し切られ、4LDKのマンションを購入するに至ったのだ。
元々、杏寿郎も琴音も浪費癖がある訳でもなく、貯金もそれなりに溜め込んでいたのだから、将来のためにと言われればマンション購入も躊躇う必要はない。
一軒家とも迷ったが、今後もしかしたらどちらかの実家で暮らす事も考えて、将来手放しやすいマンションをと言う話になったのだ。
しかし、まだ入籍すらしていないのに、些か気が早すぎるのではないか……
そんな事を考えながら、琴音がチラリと隣を見れば、嬉しそうに説明を聞く杏寿郎の姿が目に入る。
うむ!!なるほど!!と時折入る大きすぎる相槌に、思わず琴音がクスクスと笑みを浮かべれば、それに気づいた杏寿郎もニカッと彼女に笑いかける。
それを正面で見ていた担当者の彼も、二人につられる様に笑みを浮かべた。
「ははっ、素敵な旦那様ですね」
「……はい」
その言葉に、琴音は頬を染めながら幸せそうに目を細めた。
******
それから程なくして、二人は新居へと無事に引っ越しを行なった。
といっても、杏寿郎の実家は同じ町内でもあるし、よく知る場所に移り住むだけなのだが……
荷解きをしながら、杏寿郎は新しい匂いに包まれた新居に、ふっと口元を吊り上げた。
今までだって琴音とは職場で毎日顔を合わせていたし、最近では煉獄家で共に暮らしていたのだから、いつも一緒に過ごしていたのには変わりはない。
だが今日からは家族に気を使う事もなければ、琴音との間に割り込む同僚達も今はいないのだ。
杏寿郎が思わずにやけてしまうのも無理はない。
そんな事を考えて杏寿郎が少し手を止めていると、リビングで荷解きをしていた筈の琴音がひょこっと此方に顔を出した。
「杏寿郎さーん、片付けは明日に回して買い物がてら、ご飯を食べに行きませんか?」
「む?もうこんな時間か……」
「だいぶ片づきましたね。後は明日、家具が届けば完了、ですかね?」
「うむ!!やはり二人でやれば片付けも早いな!!」
そう言って立ち上がった杏寿郎が腹をさすりながら「今日は沢山動いたからな!!腹が減った!!」と声を上げるものだから、琴音はクスクスと笑みを落とした。
******
そのあとショッピングモールへとやって来た二人は、食事を済ませるとプラプラと必要そうなものを見て回った。
それは食材やシャンプー、歯ブラシといった必需品だけでなく、
お揃いのマグカップや、お揃いのスリッパ、お揃いのパジャマなんて物まで買い込んで、大量の荷物となってしまった。
因みに、元々琴音のアパートにあった物は一人暮らしサイズが殆どだった為、必要なもの以外処分してしまった。
昔なら手間であったその作業も、今は買取業者が直接家まで取りに来てくれるのだ……随分と便利な世の中になったものだと、琴音は少し感心してしまった程だ。
そんなこんなで、大量の荷物と共に新居へと帰り着いた二人は、少しヘトヘトになりながらもその荷物達をテキパキと片づけていく。
杏寿郎は買ってきた食材を今日届いたばかりの新品の冷蔵庫に入れていく。
そのすぐ後ろでは琴音が真新しい食器達を、洗剤をつけたスポンジで洗っていた。
お揃いのものばかりで思わずにやけてしまいそうになる頬をなんとか堪えて手を動かしていれば、そんな琴音を突然後ろから杏寿郎が抱きしめた。
「ちょっ、杏寿郎さん、泡がついちゃいますよ!?」
琴音の肩に手を回し、後ろからぎゅっと抱きしめた杏寿郎は、楽しそうに声を上げた。
「いや、すまない!今日から琴音を独り占めできると思ったらな……つい、嬉しくなってしまった!!」
「………それを言うなら私の方ですよ?これから杏寿郎さんとずっと一緒に暮らしていけるだなんて……昔の私から妬まれそうです、〝贅沢者って〟」
「ハハッ、そうか……贅沢、か!!」
そう呟いて杏寿郎が笑い出せば琴音もつられて笑みを溢す。
「ふふっ、杏寿郎さん、贅沢ついでに少し休憩しましょう!コーヒを淹れますから」
「うむ!!それはいい、名案だ!!」
手の中の泡だらけのマグカップを琴音が水で洗い流していけば、揃いの柄が顔を出す。
それを慣れた手つきで受け取った杏寿郎が、布巾で水気を切っていく。
可愛らしいクマが描かれたそのカップは、完全に琴音の趣味なのだが、
〝杏寿郎さんが持つと、なんだか可愛い……〟
チラリと杏寿郎を盗み見た琴音は、不釣り合いのカップを手に嬉しそうに笑う恋人の姿に、思わず頬を緩ませた。