番外編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
なんなんだ、こいつ、、、
俺は初めて出会った女に驚きを隠せなかった。
〜風柱との出会い〜
その日は朝から、あいにくの天気だった。
漸く長期任務が終わり、非番をもらったというのに、、、
こんな天気だ、いつ鬼が現れるか分からねェ
緊急要請が入るかもしれねェな。
チッと舌打ちを落とし、空を睨みつければ、
今にも雨が降ってきそうなどんよりとした空に、思わずため息が出た。
******
とりあえず任務明けの疲れきった体を休める為、風柱邸へ久々に帰りつき、風呂で汚れを落としてから眠りについた。
昼前に目を覚まし、適当に飯をすませて鍛錬をしようと袴に着替える。
このまま、何も要請がないようなら今日は久々に富田屋のおはぎでも食いに行こう。
そうと決まれば、と木刀へと手を伸ばした時だった。
見慣れぬ鎹鴉が勢いよく飛んできて伝令を口にする。
「風柱、緊急要請。下弦ノ鬼ト、数名ノ隊士ガ応戦中。負傷者多数〜救援ニムカエ〜」
その言葉を聞くや否や、チッ。と舌打ちを漏らし、急いで隊服へ着替え家から飛び出した。
朝から暗い空に、嫌な予感はしていたが
まさか本当に要請が来るとは、、、
しかも今回の緊急要請は十二鬼月、
並の隊士では命がないだろう、、、
くそっ、と吐き捨て、目の前を飛ぶ鴉に着いて走っていく。
暫くすれば、前方に山が見えてくる。
鴉はそこへ向かって真っ直ぐ飛んでいるようだから〝鬼はあの山か〟と当たりをつけて、鴉を追い抜くように山道へ足を踏み入れる。
山の中腹まで来ると、救援を呼んだであろう隊士たちが見えてきた。
確かに負傷者は出ているようだが、的確に応急処置が施してあるように見える。
止血する為に包帯が巻かれていたり、骨が折れているのか、添え木をし固定していたり、、、
周りを見渡しても、鬼が一向に見当たらないあたり〝鬼の首を斬った後か?〟と一瞬で判断し、念のため近くの隊士に確認をとる。
「どうなってやがる?鬼は殺したんだろォな?」
すると、あろうことか一人の隊士が
「琴音さんが、鬼から逃がしてくれました。、、、彼女を助けてください。」
と、わんわん泣きながら縋り付いてきた。
そいつが言うには、俺より先に救援要請で駆けつけた隊士が、到着してすぐに、他の奴の怪我を確認し応急処置の仕方を口頭で伝え、
「鬼の相手は私がします。怪我人の手当てを頼みます。」
と鬼を引きつけて山の中へ入っていったとの事。
何を考えてやがる。
1人で行かせるこいつらも悪いが、十二鬼月を一人で対処するなど無謀だろうがァ。
人の怪我の具合を心配してる場合じゃねェだろ。
この糞みたいな状況に苛立ちを隠そうともせず
「で、そのは馬鹿はどこ行ったァ?」
と問いかければ、目の前の隊士が脅えながらも
「琴音さんは、多分この先の小さな集落にいます、、、」と答えた。
「テメェらは山を降りろォ」
と指示を出し、俺はそいつが指差した方向へ、全速力で駆け出すのだった。
******
暫く行けば、木が生い茂っ場所にいきなりぽっかりと何もない空間が現れる。
その先には、ぽつぽつと家があるのを確認し、これが先程の隊士が言っていた小さな集落か?と辺りを伺う。
すると遠くから戦っているような音が聞こえてきたため、そちらへ急いで足を進めれば
ボロボロになった家々に囲まれるように、女が鬼と対峙しており、
炎を纏った刀身を振りかざし、血気術だろう〝花吹雪〟を切り落としていた。
俺がきた気配に気づいたのか、チラリとこちらに視線を寄越した女は
「この鬼の花吹雪は触れたものを刻む威力があります。他にも能力があるかもしれません。」
と、こちらが問いかける前に報告してきた。
鬼に視線を移せば目に刻まれた数字、下弦の壱か。
まぁ、先程の隊士よりは使えるかも知れねェが、この隊士が目の前でやられる前に、俺がこの鬼を斬るしかねェな、、、
そう判断し、一瞬で鬼に近づき技を繰り出そうとした時、思わぬ方向から蔓のようなものが、こちらに伸びてきた。
〝チッ。厄介な血気術かもな〟と
相手から一度距離を取る為に、技を繰り出そうとした瞬間
目の前に一瞬で小さな黒い影、、、
否先程の女隊士が割り込んできた。
驚いて思わず、その女の脇腹を蹴り付け怒鳴りつけた。
「テメェ、俺の間合いに入るんじゃねェ!刻まれてェのか!」
ギロリと睨みつけるが、近くの民家に吹っ飛んだ女は起き上がってくる気配はない。焦って力加減が出来なかった為、大方気絶させてしまったのだろう、、、
それを見ていた鬼が嬉しそうに
「仲間割れかい?あの女、、、、ちょこまかと私の血気術を切り落として、迷惑してたんだよ?お前を殺したら、あの女から食べるとしよう」
と話しかけくるもんだから
「誰が誰を殺すって?寝言は寝て言え、、ぶっ殺してやる」
と声を荒げ、地を蹴った。
その瞬間、四方向から蔓が伸びる。目で追えば土の中から出ているようで、全部を斬り落とす。
「壱ノ型 塵旋風 削ぎ」
凄い勢いで螺旋状に地面を抉りながら、突進して斬り刻む、、、
これで鬼の首は目の前、という所でニヤリと笑う鬼と目があった。
「血気術 溢れ桜 血吹雪」
するといきなり強い風と共に、最初に見た花吹雪が俺に襲いかかる。
だが『全部叩き斬ってやれば問題ねェ』と刀を振るおうとした瞬間、、、
「炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり」
燃えさかる炎と、猛烈な勢いで敵の技を薙ぎ払っていく女の姿。
また俺の間合いに入ったそいつに蹴りを喰らわそうとすれば
「ちょっと、相手が違うでしょ!」
と片腕で蹴りをとめて、睨みつけてくる。
は?蹴りを止めやがっただと?と呆気に取られていれば、鬼に不意をつかれ、地面から出てきた蔓に足を取られる。
訳の分からない隊士と、この糞みたいな状況に苛立ち、俺は迷わず自分の腕に刀を走らせる。
「なっ、!」
何してるの?と目で訴える女を無視して、鬼を睨みつければ
「稀血、、、稀血か!お前!」と
ふらふらとこちらへ近寄ってきていた。
俺の血の匂いに酩酊している間に、鬼の首を斬り落としてやる、と刀を構えた、、、
その瞬間には、鬼が断末魔を上げ、灰に変わっていた。
なにが起きた、、、
顔を顰めて辺りを見回せば、鬼を斬ったであろう女隊士が、キッとこちらを睨みつけて近寄ってくる。
そこで改めてその女を見れば、体の小さな少女で持っている刀もえらく短い事に気づく。
そして整った顔をこれでもかと歪めて
「なんて戦い方をするんですか!?手の治療をするので見せてください」
と声を荒げてきた。
下弦の鬼を目の前の少女が切り捨てたことに驚いて、一瞬反応が遅れてしまったが
「あァ?そんなもの必要ねェ」
と吐き捨てる。
大体この女が間に割って入らなければ、俺だってあんな鬼に捕まる様なヘマはしない。
途中蹴り飛ばしたのだって、俺の間合いにいきなり飛び出てきたこいつを、斬っちまわねェようにしたまでで、、、こいつが悪いだろォが。と思っていれば
少女に腕を掴まれ「必要あります、ここに座って下さい!」とまた怒鳴られる。
流石にカチンときて「俺は柱だぞ」と言えば、少女からは「柱だからなんですか?」と返される。
なんなんだ、こいつは、、、
一瞬、掴まれている手を振り解こうかとも思ったが、先程全力で蹴り飛ばしてしまった事への後ろめたさもあり「早くしろォ」と手を出してその場に座り、目の前の少女から逃げるのを諦める。
すると、先程まで怒っていた少女は、少し困ったように笑い「失礼します」と一声かけてから、俺の腕の傷に手を伸ばした。
手際よく処置を行なっていく姿をなんとなく眺めていれば「いつも、ああなんですか?」と不意に声をかけられる。
それに返事をせずにいれば「無茶な戦いは控えて下さい」ぽつりと小さな声で言われて
「うるせェ」と思わず舌打ちをしてしまう。
大体の奴はこんな態度を取れば、脅えて離れていくのに、、、
目の前の少女は、離れるどころか眉を下げ寂しげに笑っている。
そんな少女を見つめていれば、不意に目が合い
「すみません、お節介してしまいました、、、」
とまた笑う。
そして、ぽつりぽつりと語りだした。
「私、弟がいるんですけど、、、
私を守る、とか言って、鬼殺隊を目指しているんですよ。どんなに反対しても折れてくれなくて、、、
私の弟は、戦いとか向いていないんです。すごい優しくて、自分より他人を優先しちゃうような子で。それがどんなに無茶なことでも、自分が傷つくのは厭わない。
そんなんだから、私が弟を守る為に鬼殺隊になったって言うのに、、、
風柱様が強いのは知っているんです。
、、、ですけど、その。少し弟と重なってしまって、、、すみません。」
そう言ってまた笑う少女に、ため息をつく。
〝弟って、お前俺より年下だろうが〟とは思うが、弟を思う姉の気持ちなら痛いほど分かる。
もしも玄弥が俺の後を追って鬼殺隊に入るといえば、俺だって断固拒否するだろうし、気が気じゃないだろう。
目の前の少女が他人事には思えなくて「弟ってのは手がかかるもんだろォ」と思わず声をかけ、頭をぽんぽんと撫でてやる。
すると、ばっと顔を上げた少女は「そう、、、ですね」と驚いた顔をしたあと、破顔した。
******
それから手当てが無事に済み、報告を終わらせた頃には、やっと日の光が空から漏れ出していて。
〝今からなら、まだおはぎを食べに行けるな〟などと考えていれば、後ろから明るい声がかかる。
「風柱様、では行きましょう」
なんだ?と思い振り返れば、俺の腕を掴んでぐいぐい引っ張っられる。
「オイ、テメェ!」と声をかければ
「任務後は甘味処と決まっています」と、さも当然と答えが返ってくる。
俺が何も答えずにいれば「それとも風柱様は甘いものが苦手ですか?」と一瞬にして、シュンとしてしまった少女に、思わず噴き出して今度は少女の手を引いて歩き出す。
「風柱様?」と少し慌てた声に
「おら、おはぎを食いに行くぞォ。」と呟けば、
少女は、それはそれは嬉しそうに笑った。
なんだか妹ができたみたいな感覚を覚えて、バレねえように俺も少し笑い、甘味処へ向かって歩みを進めるのであった。
******
それからと言うもの、何かにつけて琴音は実弥を追い回す様になる。
琴音の憧れ
『私にお兄ちゃんがいたら、、、』を再現したかのような、不器用な実弥の優しさに完全に懐いてしまったのだ。
「一緒に甘味処へ行こう」やら
「鍛錬に付き合って下さい」やら
挙げ句の果ては「怪我はしていないですか?」と心配までする有り様。
だが実弥も、自分を慕ってくれる存在に満更でもなく、
知らぬ間に妹のように、溺愛するようになっていくのはまだ先のお話。
俺は初めて出会った女に驚きを隠せなかった。
〜風柱との出会い〜
その日は朝から、あいにくの天気だった。
漸く長期任務が終わり、非番をもらったというのに、、、
こんな天気だ、いつ鬼が現れるか分からねェ
緊急要請が入るかもしれねェな。
チッと舌打ちを落とし、空を睨みつければ、
今にも雨が降ってきそうなどんよりとした空に、思わずため息が出た。
******
とりあえず任務明けの疲れきった体を休める為、風柱邸へ久々に帰りつき、風呂で汚れを落としてから眠りについた。
昼前に目を覚まし、適当に飯をすませて鍛錬をしようと袴に着替える。
このまま、何も要請がないようなら今日は久々に富田屋のおはぎでも食いに行こう。
そうと決まれば、と木刀へと手を伸ばした時だった。
見慣れぬ鎹鴉が勢いよく飛んできて伝令を口にする。
「風柱、緊急要請。下弦ノ鬼ト、数名ノ隊士ガ応戦中。負傷者多数〜救援ニムカエ〜」
その言葉を聞くや否や、チッ。と舌打ちを漏らし、急いで隊服へ着替え家から飛び出した。
朝から暗い空に、嫌な予感はしていたが
まさか本当に要請が来るとは、、、
しかも今回の緊急要請は十二鬼月、
並の隊士では命がないだろう、、、
くそっ、と吐き捨て、目の前を飛ぶ鴉に着いて走っていく。
暫くすれば、前方に山が見えてくる。
鴉はそこへ向かって真っ直ぐ飛んでいるようだから〝鬼はあの山か〟と当たりをつけて、鴉を追い抜くように山道へ足を踏み入れる。
山の中腹まで来ると、救援を呼んだであろう隊士たちが見えてきた。
確かに負傷者は出ているようだが、的確に応急処置が施してあるように見える。
止血する為に包帯が巻かれていたり、骨が折れているのか、添え木をし固定していたり、、、
周りを見渡しても、鬼が一向に見当たらないあたり〝鬼の首を斬った後か?〟と一瞬で判断し、念のため近くの隊士に確認をとる。
「どうなってやがる?鬼は殺したんだろォな?」
すると、あろうことか一人の隊士が
「琴音さんが、鬼から逃がしてくれました。、、、彼女を助けてください。」
と、わんわん泣きながら縋り付いてきた。
そいつが言うには、俺より先に救援要請で駆けつけた隊士が、到着してすぐに、他の奴の怪我を確認し応急処置の仕方を口頭で伝え、
「鬼の相手は私がします。怪我人の手当てを頼みます。」
と鬼を引きつけて山の中へ入っていったとの事。
何を考えてやがる。
1人で行かせるこいつらも悪いが、十二鬼月を一人で対処するなど無謀だろうがァ。
人の怪我の具合を心配してる場合じゃねェだろ。
この糞みたいな状況に苛立ちを隠そうともせず
「で、そのは馬鹿はどこ行ったァ?」
と問いかければ、目の前の隊士が脅えながらも
「琴音さんは、多分この先の小さな集落にいます、、、」と答えた。
「テメェらは山を降りろォ」
と指示を出し、俺はそいつが指差した方向へ、全速力で駆け出すのだった。
******
暫く行けば、木が生い茂っ場所にいきなりぽっかりと何もない空間が現れる。
その先には、ぽつぽつと家があるのを確認し、これが先程の隊士が言っていた小さな集落か?と辺りを伺う。
すると遠くから戦っているような音が聞こえてきたため、そちらへ急いで足を進めれば
ボロボロになった家々に囲まれるように、女が鬼と対峙しており、
炎を纏った刀身を振りかざし、血気術だろう〝花吹雪〟を切り落としていた。
俺がきた気配に気づいたのか、チラリとこちらに視線を寄越した女は
「この鬼の花吹雪は触れたものを刻む威力があります。他にも能力があるかもしれません。」
と、こちらが問いかける前に報告してきた。
鬼に視線を移せば目に刻まれた数字、下弦の壱か。
まぁ、先程の隊士よりは使えるかも知れねェが、この隊士が目の前でやられる前に、俺がこの鬼を斬るしかねェな、、、
そう判断し、一瞬で鬼に近づき技を繰り出そうとした時、思わぬ方向から蔓のようなものが、こちらに伸びてきた。
〝チッ。厄介な血気術かもな〟と
相手から一度距離を取る為に、技を繰り出そうとした瞬間
目の前に一瞬で小さな黒い影、、、
否先程の女隊士が割り込んできた。
驚いて思わず、その女の脇腹を蹴り付け怒鳴りつけた。
「テメェ、俺の間合いに入るんじゃねェ!刻まれてェのか!」
ギロリと睨みつけるが、近くの民家に吹っ飛んだ女は起き上がってくる気配はない。焦って力加減が出来なかった為、大方気絶させてしまったのだろう、、、
それを見ていた鬼が嬉しそうに
「仲間割れかい?あの女、、、、ちょこまかと私の血気術を切り落として、迷惑してたんだよ?お前を殺したら、あの女から食べるとしよう」
と話しかけくるもんだから
「誰が誰を殺すって?寝言は寝て言え、、ぶっ殺してやる」
と声を荒げ、地を蹴った。
その瞬間、四方向から蔓が伸びる。目で追えば土の中から出ているようで、全部を斬り落とす。
「壱ノ型 塵旋風 削ぎ」
凄い勢いで螺旋状に地面を抉りながら、突進して斬り刻む、、、
これで鬼の首は目の前、という所でニヤリと笑う鬼と目があった。
「血気術 溢れ桜 血吹雪」
するといきなり強い風と共に、最初に見た花吹雪が俺に襲いかかる。
だが『全部叩き斬ってやれば問題ねェ』と刀を振るおうとした瞬間、、、
「炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり」
燃えさかる炎と、猛烈な勢いで敵の技を薙ぎ払っていく女の姿。
また俺の間合いに入ったそいつに蹴りを喰らわそうとすれば
「ちょっと、相手が違うでしょ!」
と片腕で蹴りをとめて、睨みつけてくる。
は?蹴りを止めやがっただと?と呆気に取られていれば、鬼に不意をつかれ、地面から出てきた蔓に足を取られる。
訳の分からない隊士と、この糞みたいな状況に苛立ち、俺は迷わず自分の腕に刀を走らせる。
「なっ、!」
何してるの?と目で訴える女を無視して、鬼を睨みつければ
「稀血、、、稀血か!お前!」と
ふらふらとこちらへ近寄ってきていた。
俺の血の匂いに酩酊している間に、鬼の首を斬り落としてやる、と刀を構えた、、、
その瞬間には、鬼が断末魔を上げ、灰に変わっていた。
なにが起きた、、、
顔を顰めて辺りを見回せば、鬼を斬ったであろう女隊士が、キッとこちらを睨みつけて近寄ってくる。
そこで改めてその女を見れば、体の小さな少女で持っている刀もえらく短い事に気づく。
そして整った顔をこれでもかと歪めて
「なんて戦い方をするんですか!?手の治療をするので見せてください」
と声を荒げてきた。
下弦の鬼を目の前の少女が切り捨てたことに驚いて、一瞬反応が遅れてしまったが
「あァ?そんなもの必要ねェ」
と吐き捨てる。
大体この女が間に割って入らなければ、俺だってあんな鬼に捕まる様なヘマはしない。
途中蹴り飛ばしたのだって、俺の間合いにいきなり飛び出てきたこいつを、斬っちまわねェようにしたまでで、、、こいつが悪いだろォが。と思っていれば
少女に腕を掴まれ「必要あります、ここに座って下さい!」とまた怒鳴られる。
流石にカチンときて「俺は柱だぞ」と言えば、少女からは「柱だからなんですか?」と返される。
なんなんだ、こいつは、、、
一瞬、掴まれている手を振り解こうかとも思ったが、先程全力で蹴り飛ばしてしまった事への後ろめたさもあり「早くしろォ」と手を出してその場に座り、目の前の少女から逃げるのを諦める。
すると、先程まで怒っていた少女は、少し困ったように笑い「失礼します」と一声かけてから、俺の腕の傷に手を伸ばした。
手際よく処置を行なっていく姿をなんとなく眺めていれば「いつも、ああなんですか?」と不意に声をかけられる。
それに返事をせずにいれば「無茶な戦いは控えて下さい」ぽつりと小さな声で言われて
「うるせェ」と思わず舌打ちをしてしまう。
大体の奴はこんな態度を取れば、脅えて離れていくのに、、、
目の前の少女は、離れるどころか眉を下げ寂しげに笑っている。
そんな少女を見つめていれば、不意に目が合い
「すみません、お節介してしまいました、、、」
とまた笑う。
そして、ぽつりぽつりと語りだした。
「私、弟がいるんですけど、、、
私を守る、とか言って、鬼殺隊を目指しているんですよ。どんなに反対しても折れてくれなくて、、、
私の弟は、戦いとか向いていないんです。すごい優しくて、自分より他人を優先しちゃうような子で。それがどんなに無茶なことでも、自分が傷つくのは厭わない。
そんなんだから、私が弟を守る為に鬼殺隊になったって言うのに、、、
風柱様が強いのは知っているんです。
、、、ですけど、その。少し弟と重なってしまって、、、すみません。」
そう言ってまた笑う少女に、ため息をつく。
〝弟って、お前俺より年下だろうが〟とは思うが、弟を思う姉の気持ちなら痛いほど分かる。
もしも玄弥が俺の後を追って鬼殺隊に入るといえば、俺だって断固拒否するだろうし、気が気じゃないだろう。
目の前の少女が他人事には思えなくて「弟ってのは手がかかるもんだろォ」と思わず声をかけ、頭をぽんぽんと撫でてやる。
すると、ばっと顔を上げた少女は「そう、、、ですね」と驚いた顔をしたあと、破顔した。
******
それから手当てが無事に済み、報告を終わらせた頃には、やっと日の光が空から漏れ出していて。
〝今からなら、まだおはぎを食べに行けるな〟などと考えていれば、後ろから明るい声がかかる。
「風柱様、では行きましょう」
なんだ?と思い振り返れば、俺の腕を掴んでぐいぐい引っ張っられる。
「オイ、テメェ!」と声をかければ
「任務後は甘味処と決まっています」と、さも当然と答えが返ってくる。
俺が何も答えずにいれば「それとも風柱様は甘いものが苦手ですか?」と一瞬にして、シュンとしてしまった少女に、思わず噴き出して今度は少女の手を引いて歩き出す。
「風柱様?」と少し慌てた声に
「おら、おはぎを食いに行くぞォ。」と呟けば、
少女は、それはそれは嬉しそうに笑った。
なんだか妹ができたみたいな感覚を覚えて、バレねえように俺も少し笑い、甘味処へ向かって歩みを進めるのであった。
******
それからと言うもの、何かにつけて琴音は実弥を追い回す様になる。
琴音の憧れ
『私にお兄ちゃんがいたら、、、』を再現したかのような、不器用な実弥の優しさに完全に懐いてしまったのだ。
「一緒に甘味処へ行こう」やら
「鍛錬に付き合って下さい」やら
挙げ句の果ては「怪我はしていないですか?」と心配までする有り様。
だが実弥も、自分を慕ってくれる存在に満更でもなく、
知らぬ間に妹のように、溺愛するようになっていくのはまだ先のお話。