第五章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「全く、貴方って人は……」
そう言って眉間に皺を寄せた友人に、琴音はばつの悪そうな顔を浮かべた。
「……ご、ごめん?」
「なんで疑問系なんですか……本気で悪いと思ってるんですか?そもそも琴音は……」
口元は笑っているのに、目が全然笑っていないしのぶは、ぶつぶつと小言を呟いた。それにシュンと肩を落とした琴音は、困ったように眉を下げる。
そんな二人のやり取りを見ていた蜜璃は、クスクスと可愛らしく笑みを浮かべた。
「まあまあ、しのぶちゃん!琴音ちゃんには煉獄さんが付いているんだもの!!きっともう大丈夫よ!!」
「………確かに。琴音の事となれば、煉獄さん程敵に回したくない人はいないですからね」
「それはそうね!!煉獄さんたら、琴音ちゃんがよっぽど大切なのね〜!もうっ、キュンキュンしちゃう!!」
「ふふっ、当たり前じゃないですか。相手は過保護で独占欲の塊のような、あの煉獄さんですよ?」
なぜか散々な言われようの杏寿郎を想像し、蜜璃が盛大に吹き出せば、琴音は恥ずかしそうに頬を染めた。
「あ、あの……二人とも。杏寿郎さんは、そんなつもりじゃなくて……ただ、心配してくれているだけで……」
「「そんなわけないじゃない(ですか)」」
そんな琴音に、二人が揃えたかのように同じ台詞を口にするものだから、琴音は益々赤くなってしまうのだった。
******
あの日…
琴音がストーカーの被害を受けていると知った杏寿郎の動きはとても早かった。
琴音を自宅へと招いた彼は、次の日には琴音のことを心配していた同僚達に今回の事を相談した。
「はあっ!?ストーカー!?なんでアイツは肝心な事を言わねぇんだ!」
「うるせェよ、宇髄…… 琴音の性格上、俺らを巻き込みたくはなかったんだろうがァ……おい、煉獄。犯人は分かってんのかァ?」
天元や実弥をはじめ、皆、琴音を心配して口々に杏寿郎に問いかけた。
そんな彼らに杏寿郎はぐっと眉間に皺を寄せ、
「いや、……大体の目星はついているが、あの男が付き纏っているかは、まだ分かってはいない」
そう口にして、皆に向かって頭を下げた。
「すまない!君たちに言われるまで、琴音が悩んでいることにすら気づけないとは……不甲斐ない。……だが、琴音を守ると決めたからには形振りには拘っていられない!!君たちには迷惑をかけるが、琴音を気にかけてやって欲しい……頼む」
彼らが想像していたよりも、琴音が抱えていた問題は大きいものだったが、目の前で頭を下げる杏寿郎の姿に、同僚達は口角を上げた。
「ああ……、私達も出来る事をやろう。煉獄は春野の側に付いていてやればいい。それだけで春野も安心する事だろう……」
そんな彼に、悲鳴嶼がなんとも頼もしい返事を返せば、
「うむ!皆には感謝している!!」
杏寿郎は勢いよく頭を上げ、感謝を述べた。
次の日には学校の休みを利用して、ケータイショップと今のアパートの大家さんの元へと琴音と共に訪れた。
家は勿論、番号を知られてしまった以上、新しく携帯を作り直す他ないと判断した杏寿郎は、部活の合間を見計らい琴音に付き添った。
大家さんには、琴音へのストーカーの被害を包み隠す事なく伝えた。
その上で、当分は荷物を移すことができない為、部屋は借り続けるつもりだが、ポストだけは塞いで欲しいとお願いした。
それからは勿論、行きも帰りも琴音の横には必ず杏寿郎が付き添っていたし、煉獄家の皆も、本当の家族のように彼女を迎え入れ、少しずつ琴音も元気を取り戻してきた。
因みに今日の琴音は、しのぶや蜜璃と一緒にランチに来ている訳だが、今日だって部活の指導前に、わざわざ杏寿郎は琴音をここまで送り届けた。
前回のお誘いは「付き纏われているのに、もってのほかだ!」と杏寿郎に叱られてしまい、延期になってしまった為、蜜璃とは今世で初めて再会した訳だ。
「にしても、わざわざここまで送ってくれるなんて……本当に煉獄さんは琴音ちゃんが大好きなのね!!素敵だわぁ〜」
「まあ、あの煉獄さんですからね。……それより、あれからストーカーの被害は収まったんですか?」
そんな二人に琴音は曖昧に笑いながら、頷いた。
「あれから手紙も電話も、勿論誰かに付けられたりもしてないよ。杏寿郎さんが………」
〝いつも側にいてくれるから〟
そう呟いた琴音の姿に、友人達は嬉しそうに目を細めた。
「ふふっ!琴音ちゃんには、煉獄さんが付いているものね?」
「ええ。煉獄さんは琴音の婚約者ですから」
そう言って笑いあった二人は、頬を染めた琴音に向かって口を開いた。
「「琴音(ちゃん)、婚約おめでとう」」
「あ、ありがとう〜」
あれから……
琴音がストーカー被害を受けてから、一ヶ月。
杏寿郎のおかげで琴音は、再び笑顔を取り戻し、平穏な日常を取り戻しつつあった。