第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
翌日、本を数冊手にして図書館へ向かった琴音は、受付の男性に事情を伝えていた。
今日彼女が持ちよった本は、栄養学の本、医学書、漢方薬の本などで「このような本が後100冊ほど家にあり、貰い手を探しているのですが、、、」と声をかければ
最初はパラパラと中を確認していただけだった男性が、段々と眉間に皺を寄せ難しい顔をしている事に気づく。
慌てて「無理なお願いでしたか?」と声をかければ、驚いた顔をした男性と目があった。
男性が言うには田舎にある図書館であるため、ここは本の種類も冊数もかなり少ないらしい。
だから、それこそ願ったり叶ったりの申し出らしいのだが
「専門の書物は値がはります。それほどの冊数をお集めになるのにお金も時間もかかったのでしょう?」
それを無償で譲り受けてしまって本当にいいのだろうか、、、と頭を悩ませてくれていたらしい。
琴音からしたら、そんな事気にしなくても大丈夫なのに、、、と思うところだが
きっと本が好きなのであろう男性の優しさに
「では、こちらの図書館の本を数冊譲って頂けませんか?」
これで物々交換をしよう、と持ちかけるのであった。
男性は「貴方がそれでいいのであれば、、、」と了承してくれたので、とりあえず今日持ちよった本数冊を手渡し
「残りは後日お持ちします」と約束を立て帰路につく。
帰り道、琴音はどうやって本を運ぶか悩んでいた。
手で持って運ぶには、いくら師範に手伝って貰ったとしても往復しないといけなさそうだし、、、
かと言って、自分の引っ越しごときで更に人に手伝いを頼む事もできないし、、、
あぁだ、こうだと考えを巡らせていると
ふと、隣の家に住むお婆ちゃんを思い出した。
******
初めての出会いは、今の家に越してきてすぐの事。
任務後、私が家へ向っていると前を歩く人影を見つけた。畑仕事からの帰りなのだろう、
台車に沢山の野菜を乗せてよたよたと歩いていくお婆ちゃんに、声をかけた事が出会いの始まりだった。
随分と重そうな荷物に「家まで押していきますよ」と声をかければ、嬉しそうに「ありがとう」と返事をしたお婆ちゃん。
あの日は色々な話をしながら一緒に並んで歩き、私の家が近づいた所で「ここだよ、ありがとうね」と言われて笑ってしまった。
だって隣の家だったのだから。
、、、あの時の台車、借りれないかしら?
いや、世話好きな優しい彼女だ。「好きなだけ使っていい」と言ってくれるに違いない。
本の移動方法はなんとかなりそうだな〜と、ほっと胸を撫で下ろす。
あの日から何だかんだと、世話を焼いてくれたお婆ちゃん。
顔を合わせれば、「うちで作ってる野菜だから
遠慮しないで食べてね」と女の一人暮らしを案じて、野菜を分けてくれたり
「早く素敵な人を見つけて幸せになりなさいね」
と声をかけれてくれたり。
本当に良くしてもらったのだ。
随分とお世話になったのだから、きちんとお礼をしなければな、、、と彼女の好物を思い浮かべる。
確かおばあちゃんは、だんごが好きだと言っていたな、、、よし、帰りに甘味処に寄って三色団子を手土産にしよう! そう考えていた時だった。
******
「お〜い、琴音ちゃ〜ん!」と自分の名前を呼ぶ存在に気付く。
遠くから手をぶんぶん振って文字通り胸を弾ませながら、桜餅を思わせる鮮やかな髪の女性、甘露寺蜜璃が走ってやってきた。
「こんにちは、恋柱様。こんなところで会うなんて奇遇ですね」と琴音が挨拶すれば
「いやだ〜恋柱なんて他人行儀に呼ばずに、蜜璃ってよんで欲しいな」と返される。
先日、実弥さんと任務後に立ち寄った店先で偶然出会った時も、気さくに声をかけてくれたのを思い出し、
とても明るく人懐っこい人だな〜と笑ってしまう。
蜜璃の可愛らしいお願いに「はい、わかりました」と返事をした琴音は、改めて彼女に話しかけた。
「それで蜜璃さんは、任務帰りですか?」
「そおなの。任務でこう、ぐあああ〜と鬼と戦って疲れたから、甘味処へ行こうとしてた所なの。
遠くに琴音ちゃんが見えたから走って来ちゃった!」
「、、、、、大変な任務だったのですね、それはお疲れ様でした」
そう言って琴音はにこりと微笑んだ。
どんな任務だったのだろうか、、、?少し気になるが、きっと柱が向かう任務なのだから厄介な鬼だったのだろうな、と推測する。
〝やはり疲れた体には糖分補給が必要不可欠!〟
そう考えた琴音は、目をキラキラとさせ興奮気味にこう続けた。
「任務後の甘いものは格別ですもんね!私も今から向かう所だったんです。よかったらご一緒してもいいですか?」
彼女は理由をつけて甘味が食べたいだけなのだが、そんな琴音のお誘いに
「勿論よ!一緒に食べましょう!琴音ちゃんも甘いものが好きなの?」
蜜璃も嬉しそうに笑って返事をしたのだった。