第五章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「なんなのォォオ〜!!なんで俺だけェェェ〜ッ!!」
校舎にまで響いているのではないか。
そう思うくらいに大きな声で喚き散らす少年に、琴音は思わず苦笑いを浮かべた。
「口答えをするな!何回言ったら髪を黒くするんだ」
「ヒィィィィッ!」
理不尽な物言いに、流石の少年も反論したのだが、そんな事は知った事ではないと、冨岡は問答無用で竹刀を振り回す。
それをギリギリの所で避けていく少年は、昔と変わらぬ俊敏さを持ち合わせている様だ。だが避けてこそいるが、彼の恐怖は顔面に滲み出ていて……
流石に可哀想だと感じた琴音は、二人の間に割って入った。
「冨岡先生、今日はそれ位にしてあげて下さい。」
「………へ?」
第三者の声で、驚き動きを止めた少年は、そこで漸く琴音の姿に気づく。そして数秒見つめあったまま動きを停止した彼は「えェェェーっ!」と、これまた奇声を上げた。
「琴音さん?琴音さんだよね!?……あれ、これ夢なの?それとも現実!?どっちィィィ〜!!!」
それにはすかさず冨岡が「五月蝿い、騒ぐなっ!」と竹刀を振り回すものだから、琴音は乾いた笑みを漏らした。
「善逸君も記憶があるんだね」
そう呟いた琴音は、ふわりと微笑むと再び彼へと口を開いた。
「今日から私もこの学校でお世話になるの。昔みたいにまた仲良くしてね?」
「琴音さん……もしかして、やっぱり俺たち運命じゃ 「猪突猛進」 へぶっ!」
そこへ善逸の言葉を遮って、これまた見覚えのある顔が飛び込んできた。……と言っても、猪頭じゃない彼の顔は数回しか見た事がないのだが。
「……嘴平、ボタンを止めろ」
「ああ?いいぜ?やってみろよ!止めさせたかったら、俺を捕まえてみろ!!ぬははは」
「なんで俺ばっかりこんな目に……」
冨岡を挑発する伊之助と、その後ろ。伊之助に激突された善逸は、おいおいと泣き出す始末。するとそこへ、またまた見知った顔が現れる。
「コラコラ、伊之助!冨岡先生を困らせては駄目だろう?おはようございます、冨岡先生!」
「炭治郎……その耳飾りを外せ。校則違反だ」
「すみません!父の形見ですので!!」
静かに問い詰める冨岡に、全く悪びれた様子も無く、炭治郎は堂々と謝罪を口にした。
目の前で繰り広げられる光景に、さすがの琴音も我慢の限界だった。思わず笑みを溢し「ふふっ、皆んな、おはようっ」と声をかければ、遅れてやってきた二人は驚きの声を口にする。
「おはようございます……って、琴音さん!?」
「真っ黒女!!なんだお前、全然真っ黒じゃねぇ!」
それには、クスクスと笑みを浮かべた彼女だったが
「あらあら〜、琴音先生は、随分と人気者なのね?」
背後からかかった声に振り返って、ピタリと動きを停止した。可愛らしく微笑むカナエの後ろで、此方を見つめ同じように、目を見開いた少女は次の瞬間、至極不機嫌そうに口を開いた。
「姉さん……知ってたのね?」
「やだぁ〜、しのぶったら!怒ったら可愛い顔が台無しよ?せっかく、琴音ちゃんに久しぶりに会えたって言うのに〜」
ふわりともう一度笑ったカナエに「もう、姉さん!!」と声を荒げたしのぶは、不機嫌そうに口を開く。
「琴音………なんで貴方だけ、そんなに大人になっているんですか?」
え、そこ?と思うような問いかけに、琴音は思わず苦笑いを浮かべるが、昔より感情が豊かになった友の姿に自然と口角は上がっていく。
「元々私の方がお姉さんだったでしょう?」
「一つしか違いませんでした」
「あれ?そうだっけ?」
「………はぁ、貴方は全然変わっていませんね」
そう言ってくすりと笑みを漏らしたしのぶに、琴音はぎゅーっと抱きついて「しのぶ、会いたかったよ」と笑ってみせた。
それにはしのぶも「どちらが歳上だか分かりませんね」と呆れたように笑みを漏らした。
昔と同じように笑い合う二人を、少年三人は嬉しそうに眺めていたのだが
「琴音ちゃん、煉獄君にもそうやってあげたら喜ぶはずよ?」
その隣でうふふ、と笑みを浮かべていたカナエが発した一言に、場の空気は一変した。
ぇえ!?と慌てる琴音と、それを見て頬を染める少年二人。ちなみに伊之助は「あ?ギョロギョロ目ん玉が喜ぶのは騎馬戦だろ!?」とよく分からない事を口走っている。
それに対して「煉獄には妻子がいるのだろう?」と冨岡が口を開けば、しのぶが呆れたような視線を送る。
「冨岡さん、なんの話をしているんですか?そんなだから皆に嫌われるんですよ」
「……俺は嫌われてない」
それを眺めていたカナエがあらあら、と笑みを深め「あの時の琴音ちゃんの可愛さったら、……ね?ふふ」と口を開けば、しのぶが「あら姉さん。煉獄さんの事となると、琴音はいつだって可愛いくなるんだから」と相槌をうつ。
それに真っ赤な顔で眉を下げた琴音が力なく「………忘れてください」と呟けば、胡蝶姉妹はクスクスと声を合わせて微笑んだ。
そうこうしていれば、遠くで呼び鈴が聞こえ始め、皆はいそいそと校舎へ向かう。
ただ一人……
「遅刻は許さないと言っているだろう!」
「ねえェェ〜ッ!!なんで俺だけェェェ〜ッ!!ギャーーー!!」
冨岡に追いかけられる善逸を除いては。