番外編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
なんなんだ、こいつ、、、
俺は初めて出会った少女に驚きを隠せなかった。
〜音柱との出会い〜
最近、噂になっている隊士がいる。
なんでも入隊半年程しか経っていないのに
甲の地位まで上り詰めた、とかなんとか。
そいつが偉く可憐な少女らしい、とか。
本当にそんな奴いるのか、と思ってしまう噂だが
今日の合同任務の相手がそいつらしい。
先程、鎹鴉が伝えに来た待ち合わせ場所。
そこから、更に視覚になる屋敷の屋根に登った俺はあたりを見回す。
随分と人通りの少ない道のようで、御目当ての相手はすぐに見つかった。約束場所でこちらに背を向ける黒髪の女が、噂の隊士なんだろう。
それにしても、後ろ姿しか見えないが、真っ黒の羽織りを着ている姿に「地味な野郎だな」とぼやいてしまう。
高い位置で結ばれている長い黒髪が、風に揺れるのを眺めていれば
「あの〜」
とこちらを振り返る女と目が合う。
そして「え〜っと、、、今日任務にご一緒していただける音柱様、、、ですよね?」
と遠慮がちに声をかけてきた。
は?いやいや、
こっちは気配消して伺ってたのに、
なんで気づいてやがる。俺は元忍びだぞ⁉︎と
内心驚きはあったが、相手に悟られる事もなくスタッと、女の横に降り立ち声をかける。
「俺は神だ!宇髄天元様だ!」
そう声をかけた俺は、そこで改めて女の顔を見る。
女、、、と言うより少女と言った所か。
目はくりくりと丸く、鼻筋も通ったド派手に美人
がそこにいた。
そして、心底呆れた顔で俺を見ていた。
おいおい、俺はお前の上司だぞ!
と思いながらも、最後の決め台詞まで吐き捨てる。
「派手を司る祭りの神だ!派手に敬えよ!」
一瞬、ポカン。とした少女は、次の瞬間には肩を震わせクスクスと笑い
「はい、了解しました。私は隊士の春野 琴音です。階級は、甲。よろしくお願いします」
と答えた。
階級が甲、可憐な少女、
確か名前が春野とかなんとか、
うろ覚えではあるが、目の前で名乗った少女があの噂の隊士なのだろうと判断する。
しかし、見るからに弱そうな少女に、そんな実力があるのかは怪しい所である。
まぁ、任務に支障を来さなければいいかと、とりあえず今回の任務について、俺が知っている情報を伝えていく。
******
今回の任務には、既に何人かの隊士を向かわせていたものの、皆消息を経っていた。
付近の住民によれば「街の裏手にある山へ足を踏み入れた者が、帰ってこなくなった」という。
隊士も含めれば、被害は数十人にのぼるだろう。
今回は、警備する地区の付近という事で、俺が駆り出された訳だが、、、
もう少し情報を集めた方が良さそうだな、という考えに至る。
俺の話を、顎に手を当て黙って聞いていた少女も、同じ考えに至ったらしく、徐に口を開いた。
「もう少し確証を得たいですね、手分けして聞き込みをしますか?」
という彼女に「そうだな」と返し、俺たちは別々に調査に向かうのだった。
******
結局、日が傾きかけた頃
合流した俺たちがお互い持ちよった情報は元々得ていたものと同じようなものだった。
奇怪が起き始めたのは二ヶ月前。
最初に猟師数名が戻らなくなり、心配して探しに行った者もそれっきり、、、
噂を小馬鹿にして足を踏み入れた若者達や、山へ花を摘みに行った幼い兄弟。
老若男女関係なく、分かる数だけで〝18人〟もの村人が被害に遭っていた。
隊士も合わせれば、短期間でかなりの人を食っているだろう。
その全てが『山に入ったっきり戻らない』。
そうなれば、やはり山に鬼がいるのだろうと確信して、二人は、暗い山の中に入って行くのだった。
******
山の中腹までこれば、禍々しい気配がする小さな小屋を見つけた。
この中に鬼がいる、、、
即座にそう判断し、気配を消して小屋に近づく。
次の瞬間、大きな爪で引っ掻いたような斬撃が、扉を破壊しながら二人に襲いかかる。
それを左右に分かれるように飛びのいて、攻撃を避けた彼らが目にしたのは
、、、破壊された扉の奥。
折り重なるように食い散らかされた人の死体。
扉が破壊された事で、一体に死臭が充満し、二人は顔を歪ませる。
そんな二人の元にぐしゃり、ぐしゃりと、亡骸を踏みつける音が近づいてきて
「よく来たね、鬼狩り。」
と若い女の姿をした鬼が小屋から顔を覗かせた。
月明かりに照らされた鬼の姿。
先程は暗闇で気づかなかったが、血のような赤黒い色をした眼にぞっとした。
その鬼が眼を細めてこちらに笑いかける。
その姿を視界に捉えた瞬間だった。
「っっ!」
ぐにゃり、ぐにゃり、、、視界が揺れる。
波が揺れるかのように波打つ視界に、慌てて鬼から目を逸らすがもう遅かった。
こちらの様子を確認した鬼は、嬉しそうに話し出す。
「随分と美味しそうなのが来たわね。私はね、幼い子供の肉が大好きなの。少し育ってしまっているけど、女の方はとっても柔らかそう」
そこまで言って、うっとりとした顔を浮かべた鬼は、小屋へと視線を移す。
「少し前に食べた幼い兄弟がね、それはそれは美味しくてね。あの味が忘れられないの、、、
弟が稀血だったから、食べた瞬間から力が漲るのが分かったのよ?兄の方は、稀血ではなかったのが残念だけど、一生懸命に弟を守ろうとして可愛かったわぁ」
鬼が上機嫌で話してる間に、俺はこの鬼の血鬼術について考えを巡らせる。
先程、鬼の眼を見た瞬間に歪んだ視界。
脳震盪のように波打つかのような感覚は、目を閉じ光を遮断すれば全く感じられない。
おそらく脳の神経に影響するものではなく、視覚を奪うものなのだろうと仮定する。
そんな俺に気づいたのか、鬼はなおも機嫌よく語りかける。
「もう気づいたのかしらぁ?私の血鬼術は視覚を奪うのよ。
でも眼を瞑ってしまえばいいのよ?そしたら、ただの暗闇が広がるだけで、視界がぐるぐるまわったりしないわぁ。
人は光を見て生きる生き物だから、そんな状態で戦うのは酷でしょうけどねぇ?」
随分親切な鬼は、俺が導いた考えを最も容易く肯定した。それだけ、自分の術に自信があるのだろう。
俺は他の奴より聴覚がいい。眼を瞑った所で、音を拾いら気配を探って戦うことも出来るだろう、、、
だが、そこで誰かを守りながら戦うには、かなり厄介な能力。
眼を閉じてしまっているから、例の隊士がどんな表情をしているかは分からないが、ここは俺一人で戦うべきだと判断して
「この任務、お前は直ぐに離脱しろ」
と命令する。
しかし、彼女から返ってきたのは
「いえ、心配には及びません。援護いたしますので、首を切り落としてください」
と思っていた答えには程遠いものだった。
こんな状況下では助けてやれねーぞ、と少女に気を向けた一瞬。
ものすごい勢いで、俺の前に鬼の気配がやってきて、なんとか間合いを取ろうと後方へ飛びのいた。
そんな俺と鬼の間に〝別の気配〟が割って入り、鬼の攻撃を防いでいく。
今、ここでそんな事が出来るのは一人しかいないのだが
〝眼を瞑った状態で味方を守りながら戦う、そんな事ができるはずがない!〟
と血鬼術の事も忘れて、驚いて目を開ける。
ぐらぐらと揺れる視線の先で、眼を固くつぶった少女が短かい刀を手に、また鬼の攻撃を防いでいる姿をなんとか捉える。
俺は眼を瞑り、冷静さを取り戻すかのように息を深く吐き出した。
どうやら、こいつは噂以上の実力者のようだ。
鬼と対局している少女の気配に集中し、自ずと頭の中で譜面を完成させていく。
少女が鬼の腕を切り落とした、その瞬間、、、
「音の呼吸 壱ノ型 轟」
ドーーーンッ!
爆発のような轟音を出すほどの斬撃を放ち、鬼の首を切り落とす。切り落とされた首は呆気なく灰となっていった。
それには、先程まで鬼とやり合っていた少女も驚いたようで「わぁっ!びっくりした」と叫んでいる。
その時、思わず眼を開けてしまっただろう彼女「音柱様、血鬼術もう解けたみたいです」と伝えてくるものだから、
先程と打って変わった様子にじわじわと笑いが込み上げてくる。
いきなりニヤニヤし出した俺に、可笑しな者を見るような視線をよこした後、少女は自分の鎹鴉をよびよせ事後処理班の隠しを依頼するのだった。
隠しの到着を待つ間、もう一度少女に目線を落とし、ふと頭によぎった事を話しかける。
「ところで、お前。なんで目を閉じた状態で戦えた?」
俺のように聴覚が優れているのか、と問いかければ
うーん、と顎に手を置いて難しい顔をする。
そんなに答えに困る質問じゃないだろうと、少女を見つめれば、眉を下げ困った顔をしながら話し出す。
「全集中の呼吸を使ったんです。普段目に使うはずの力全てを遮断して、、、それを耳に割り振れば、いつもよりも聴覚が優れるので、、、」
と説明し終えた少女。
意味は分かる。
だが理解ができない。
そんな事やれるものなのか?と思ったが、先程の戦闘で彼女はそれを証明してのけた。
なんなんだ、こいつ、、、
そう思ってしまうのは当たり前だろう。
「ふーん。ま、噂どおりの実力ってわけね?派手に納得だわ」
と俺が話しかければ、少女は噂?と首を傾げる。
「入隊半年あまりの隊士が、バッサバッサと鬼を倒して、あっという間に甲の階級に上り詰めた、、、
お前のことだろ?」
と続ければ、今度はオロオロしながら
「なんですか、その噂!?それに私は援護専門で、鬼の首は切れないのに、、、」
なんて言い出すから
は?どういう事だ?とお互い顔を見合わす。
よくよく話を聞けば、彼女の戦い方はもともと援護向きらしい。腕力がないから、鬼の首は切れるがかなり苦労しているのだとか。
それから一番驚いたのが、なんとお館様が直接鎹鴉をよこして「他の隊士の援護を専門にするように」と言伝された事。
柱でもないのにお館様に認められる実力、、、
〝ド派手な女だな〟と少女を見つめ、思いたった事を口にする。
「お前、俺がド派手に育ててやろう!俺の継ぐ子になれ!」
キョトン、と俺を見上げる少女が間髪入れずに
「お断りします!」と言うものだから
まさか断られると思っていなかった俺は面食らった。
だが、面白い、、、なんだこいつ。
自分が悪い顔をして笑っている自覚はある。
「じゃあ、お前、、、琴音だったか?俺の嫁になれ!」
「なりませーん!もう、揶揄わないで下さい!」
真っ赤な顔して怒る琴音と、ゲラゲラ笑う俺とのやり取りは、隠しが到着するまで続くのだった。
そしてこの任務がきっかけで、派手に琴音を気に行った宇髄。
合同任務が入る度、名指しで琴音を指名するようになったのは、それから直ぐのことだった。