第四章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
戦局は大きく動き出していた。
琴音と炭治郎が無惨を攻撃する最中、愈史郎は意識を失った柱を治療してまわっていた。だが、やはり片足や片腕失った彼らは重症で……彼は治療を施しながら、涙を流す。
〝珠世様……炭治郎を守ってやって下さい……〟
遠くで聞こえる激しい破壊音を聞きながら、愈史郎は祈る気持ちで、荒々しく手を動かしていくのであった。
******
琴音が炭治郎を守るように無惨の攻撃を斬り落とす。その隙に炭治郎が奴を狙うが……
突然彼の動きがガクンと落ちる。体を酷使し過ぎたのだと、琴音が気づいた時にはもう遅かった。
彼へと駆け出そうとした琴音に、無数の触手が立ち塞がり、とてもじゃないが間に合わない。
琴音が見つめる視界の先……、炭治郎に目前に迫った攻撃に、琴音は思わず彼の名前を大声で叫ぶ。
「炭治郎君っ、駄目ーーっ!」
しかし、その攻撃が届く寸前。
縞模様の羽織が、その攻撃に割って入る。彼が……伊黒が自身の体を身代わりに炭治郎を守ったのだ。
そのまま彼は、炭治郎を抱えて飛躍するが、顔面を斬りつけられた伊黒に容赦ない攻撃が襲いかかる。
「炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天」
だが今度こそ、その攻撃に追いついた琴音が、彼らに伸びる触手を斬りつけた。
次から次へと伸びる其れらに三人が必死に対峙していれば、無惨の体の変化に炭治郎がいち早く気付く。……奴の体に無数の傷跡が現れたのだ。
炭治郎が縁壱がつけた傷跡だと気づいたと同時、無惨も自身の体の異変に気がついた。取り繕えなくなってきた己の体に、無惨が苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた時、鎹鴉が口を開く。
「夜明ケマデ四十分!!」
その言葉に後押しされるように、琴音達が気合いを入れ直した時。
いきなり無惨は彼らに背を向け駆け出した。
なりふり構わず〝生〟に固執する行動を見せた無惨に、慌てて彼らも後を追う。
其れから逃げるように、無惨は仲間の亡骸を踏みつけながら進んでいく。その姿に、三人の頭には血が昇る。炭治郎が仲間の刀を投げつけながら攻撃をすれば、琴音と伊黒がその隙をついて切りかかる。
それに怒りを露わにした無惨が至近距離で攻撃を繰り出せば、炭治郎が伊黒に向かって愈史郎から貰った札を数枚投げつける。
「伊黒さんこれを受け取って下さい!!鏑丸と視界を共有して……」
だがそれを阻止する様に無惨が炭治郎に触手を集結させれば
「鏑丸くん、お願い………、ぐっ!」
今度は琴音が炭治郎を庇う。彼をその場から突き飛ばした琴音に、触手の束が襲いかかる。其れらを斬り落とした琴音だったが、その内の一本を取りこぼし、彼女の左の太腿を抉った。
だが次の瞬間にはその触手さえも焼き払い、後ろに庇った炭治郎の手をすぐ様拾い上げる。
「琴音さん、足が……っ!!俺を庇ったせいで!!」
「こんな傷、大した事ないから大丈夫!それより、今は戦いに集中して」
二人してまた無惨に向かって駆け出せば、既に無惨に攻撃を仕掛けている伊黒の姿を捉えた。
「炭治郎、感謝する」
先程、二人が作った一瞬の隙をついて、札を手に入れた伊黒は炭治郎に向かって礼をいう。動きの速さが増した伊黒と、向かい合わせで二人は並走して攻撃を繰り出していけば、無惨の様子がおかしい事に炭治郎が気づいた。
「伊黒さん、琴音さんっ!無惨が分裂する!細かく飛び散って逃げる!!」
「「……っ、!!?」」
その言葉に三人が更に足を早めれば、目の前でぶくぶくと膨れ上がる無惨の腕。今にも弾け飛ばんとするそれに、琴音は驚き目を見開くが……
そのまま奴の腕の動きが止まった。そして今度は何故か突然吐血したのだ。
〝これは好機だ!必ずここで奴を仕留める!!〟
三人が刀に力を込めるのと同時、無惨は驚愕の事実を珠世の細胞から告げられる。
彼女達が作り出した薬の効力は四つ。
人間返り、老化、分裂阻害 ……そして、細胞破壊 。
目を見開く無惨に、珠世の細胞は語りかける。
『さぁ お前の大嫌いな死がすぐ其処まで来たぞ?
お前を殺す為にお前より強くなる必要はない、お前を弱くすればいいだけの話。
お前が生きる為に手段を選ばないように、私も…私たちも……お前を殺す為に手段を選ばない』
珠世から伝えられた言葉に一頻り考えを巡らせた無惨はピタリと動きを止めた。唐突に動きが止まった無惨を見て〝珠世さんの薬だ!きっとそうだ〟と考えた炭治郎が攻めに転じようとしたその瞬間……
ズドォォォンッ!!
無惨の体を中心に大規模な衝撃波が辺りを襲う。
それは近くで戦っていた伊黒、琴音、炭治郎にも例外なく、彼らの体を貫いた。
******
時同じくしてーー。
産屋敷当主、輝利哉の元にも愈史郎の札を通して衝撃波が到達していた。
鼻血を垂らし、ヨロヨロと机に凭れかかる姿に、慌てて護衛をしていた三人は駆け寄るが、輝利哉はそれを片手で制した。
「大、大丈夫だ。私に構うな……小芭内、炭治郎、琴音は無事か?」
ここまで攻撃が及ぶなど考えもしていなかった。ここが感づかれれば、この産屋敷邸も襲撃を受けるかもしれない……
その考えに三人の背中に冷や汗が伝う。
杏寿郎は久々に腰に下げた日輪刀に手を伸ばす。
鍔が無くなったそれは、幾分か頼りなく思うが……
今は彼女が持っている。
其れを使うのは恐れ多いと……予備の刀に御守りとして付けますね、と言って笑っていた琴音を思い出し、刀を握る手に力を込めた。
ここまで攻撃が届くのだ。現場は更に過酷で、混乱を極めるだろう。
〝琴音……〟
最愛の彼女を思い浮かべ、杏寿郎は遠くの薄暗い空を見つめた。
……夜明けまで残り二十五分。