第四章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
片膝を付き、肩で大きく息をする琴音を見下した無惨は、表情を変えることなく口を開く。
「女、最後に言い残すことはあるか?」
そう言って琴音の首へと腕を伸ばした無惨は、その首をぐっと締め付けた。
「っ、……」
「どうだ?何か言ってみろ。先程の威勢はどうした?」
琴音の首を掴み、自身の顔の位置まで持ち上げた無惨は、声どころか息も吸えない状況の琴音を見て、心底鬱陶しいとでも言うように顔を顰めた。
「本当に人間とは惨めなものよ……鬼になると言えばいいものを、何に必死にしがみついているのか理解できんな」
そう吐き捨てた無惨を睨みつける琴音の頬に、無意識のうちに涙が伝う。
〝……守れなかった、誰も〟
先程、無惨の攻撃から守った筈の数名の隊士も、一瞬で無惨に殺された。自身の刀も早々に折られ、動かぬ左手では碌に体も動かせられない。
呼吸ができない苦しみと、自分の不甲斐なさに打ちのめされながらも、何とか右手で無惨の腕を掴んだが、そんなものに効果はない。
そんな琴音を、ふんっ、と鼻で笑った無惨は頭から、がばりと大きな口を出現させた。なんとも不気味なその口が琴音を今にも食べようと迫ってきた時ーー。
******
べん、べん、べん、べん、べん!!
琵琶の音が鳴り響き、突然彼らの前に冨岡と炭治郎が現れた。
今にも琴音に喰らいつこうとしている無惨の姿に、炭治郎はカッと頭に血を登らせる。
「無惨、お前ぇぇっ!!」
それを面倒くさそうに見やった無惨は、手にしていた琴音をぼろ雑巾のように投げ捨てた。
「がはっ、ごほっ、………はっ、はっ。」
漸く入ってきた酸素に思わず琴音が咳き込めば、炭治郎が心配そうに駆け寄って来る。そんな彼らを背後に隠すように、二人の前に立ちはだかった冨岡を見て、無惨は冷たく言い放つ。
「しつこい、お前達は本当にしつこい。飽き飽きする。心底うんざりした……口を開けば親の仇、子の仇、兄弟の仇、仲間の仇と馬鹿の一つ覚え。」
炭治郎がその言葉を聞き、きっと無惨を睨みつければ、それを見た無惨は炭治郎に向かって問いかける。
「お前達は生き残ったのだから、それで充分だろう?身内が殺されたから何だと言うのか。自分は幸運だったと元の生活を続ければ済むこと」
「お前何を言っているんだ?」
炭治郎だけじゃない。冨岡も琴音も、その言葉を聞き怒りに顔を歪めた。それでも無惨は話を続ける。
殺された者達は
「お前達がそうしない理由は一つ。鬼狩りは異常者の集まりだからだ。異常者の相手は疲れた。いい加減終わりにしたいのは私の方だ」
そう吐き捨てた無惨に、炭治郎はぽつりと小さく呟いた。
「無惨、お前は存在してはいけない生き物だ……」
そう口にした炭治郎は、無惨に向かって刀を構え直す。
首を斬っても倒せないなら、太陽の下へ引きずり出さなければいけない。司令通り皆んなの到着を待って、夜明けまでの戦いの攻略を探る。それまで生き残る……そこからが本当の戦いだ。
考えを巡らせながらふと隣を見やれば、琴音がフラフラと立ち上がっていた。その際、足に力を入れた為かボタボタッと床に血が落ちた。
「琴音さん、その傷……」
そこで改めて琴音の怪我を確認した炭治郎は、思わず言葉を失った。
左肩には抉れた傷痕、頭や手足にも無数の切り傷、そのどれもが止血すらままならない状態だった。
〝あの琴音さんが……?呼吸の使い方は、鬼殺隊の中でも群を抜いている彼女をここまで追い詰めるなんて……〟
驚く炭治郎を尻目に、隊服に隠すように閉まってある左足の付け根のホルダーから、片腕で予備の刀を取り出した琴音は、二人に向かって口を開く。
「……私なら大丈夫っ!こんな傷、3分もあれば止血できる!それよりアイツの攻撃は、速さが異常すぎる。あの伸びる腕に注意して!!」
そう言って改めて刀を構えた琴音に、無惨は隠すことなく顔を歪めた。
「お前達のそういう所が嫌なんだ。諦めて死んでおけばいいものを……何でそんなに
そんな言葉を吐き捨てる無惨を見つめて、琴音はすっと目を細めた。
正直、体は限界だった。
肩は痛いし、肋も数本折れている。頭を強く打った為、ぐらぐらと視界が歪むが、それでも仲間の為に。託された想いのために、琴音はぐっと肺に酸素を溜め込んだ。
呼吸に意識を集中させ、目の前の敵に標準を絞る。そして不敵に笑って見せた。
「あら、それは残念ね?……私、単独で戦うのが苦手なの。援護専門だから」
そこで、すっと笑みを消した琴音は一歩前に踏み出した。
「だから、本当の戦いはここからよ!!」