第四章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
カナヲ達と別れた琴音は、城の中をひたすらに走っていた。
「もうっ!斬っても、斬ってもキリがないっ!」
うじゃうじゃと湧き出てくる鬼を相手に、琴音は苛立ちながら刀を振るっていく。
琴音が、先程から無惨の気配を探ろうとしているものの、この無数の鬼の気配に阻まれてしまっていた。
元々、姿を隠すのが上手い奴なのだから、当然と言えば当然ではあるのだが……
うーむ、と考えて足を一旦止めた琴音は、まずは味方と合流すべきかと判断し、人の気配を探しながらまた走り出した。
******
人の気配を感じた方向へ走り続けていた琴音は、漸く数人の隊士と合流した。
それに少し安心したように息をつけば、隊士達も余程不安だったのだろう。ぱっと顔を明るくさせて、琴音に現状報告をする為口を開いた。
「琴音さん、ご無事だったんですね!」
「良かった、柱が来てくれた!!あっちに無惨の肉片を見つけたみたいで、急ぎましょう!!」
それに頷いた琴音は、隊士達に先導されるまま道を急いだ。
「琴音さんだ!」「炎柱様!」
暫く行けば、沢山の隊士達が一ヶ所に固まっており、その先。四方の壁を使い、中心に浮くようにして無惨の肉片がそこにあった。
「誰か飛べるか、彼処まで」
「それよりまず、四方八方に足がけしている肉を斬ろう」
口々に隊士が声を発する中、琴音は呆然とその肉片を見上げて、震える声で呟いた。
「なにこれ……っ、」
禍々しい雰囲気を放つそれに、背中に冷や汗が伝っていく。
……この中に無惨がいるのは確かだろう。側に来るまで気配すら感じなかったのに、この不穏な空気が漂うそれに、琴音は思わず眉を顰めた。
そもそも奴は弱っているのだろうか。だから、この肉片に閉じこもるようにして回復しようとしているのか。
〝弱った身体を、回復……?〟
その考えに至った琴音は、現状を唐突に理解して慌てて口を開いた。
「皆離れてっ、コイツに近づいては……っ、」
危険だから、と続く筈だった言葉は隊士達の悲鳴によって遮られた。
もの凄い速さで肉片から飛び出した無惨が、周りを取り囲むようにしていた隊士達に襲い掛かったのだ。その速さは琴音ですら目で追うのがやっとな程で、そんな力を持ち合わせていない一般隊士達は無常にも命を奪われていく。
「炎の呼吸 参ノ型 気炎万象」
なんとか背後にいた数名の隊士を庇って攻撃を受け流した琴音は、あたりに広がる血の海に思わず視線を逸らしたくなる。
「千年以上生きていると喰い物が旨いという感覚もなくなってくるが、餓えていた今の食事は実に美味だった……」
「……鬼舞辻無惨」
仲間を目の前で殺されて、きっと無惨を睨みつけた琴音に「ほう、すばしっこい鼠がいるな」と無惨は至極楽しそうに口を開いた。
この状況では、皆を守りきれない。そう判断した琴音は背後の隊士に声を張り上げる。
「皆んなは下がって……一旦退却!」
「で、ですが炎柱様だけではっ」
「私だけでは貴方達を守りきれないっ!いいから下がりなさい!」
無惨から目線を逸らさず、隊士達に声を荒げた琴音は、刀を構えて彼らを守るように一歩前に踏み出した。
「……珍しいな、女の柱か。私の為にわざわざ食糧を運んできたこと、褒めてやろう産屋敷」
琴音を見てそう鼻で笑った無惨は、次に自身の手が掴む〝珠世〟と呼ばれた鬼の一部に視線を移した。
「お前…は…今日…必ず……、地獄に、堕ち……る……っ、」
「今まで何百もの人間が私にその言葉を吐き散らかしたが。それが叶うことは決して無かった。気の毒なことだ」
「私の…夫…と……子供を…かえ…せ……っ、」
「ならばすぐさま死んで、己が殺した身内の元へ行くがいい」
そう吐き捨てて、鬼の一部を握りつぶした無惨はそれを合図に、琴音に向かってもの凄い勢いで攻撃を仕掛ける。
それを何とか防ぎながら、未だに動かぬ隊士達に再び口を開こうとした瞬間、視界の端で無惨の腕が隊士達へと伸びていくのに気がついた。
無理な体制から何とか体を捻じ込ませ、その腕を防いだ琴音だったが、最初からそれが狙いだったように無惨の反対の腕が琴音を狙った。
「くっ、!」
「琴音さん!」「炎柱様っ!!」
無惨の腕に左肩を貫かれ、呻き声を上げた琴音だったが、瞬時にその腕を切り落とし呼吸を使って止血する。
痛む傷口、止血にも時間がかかる程の風穴。左腕はだらりと重力に従い力が全く入らない……
最悪の状況に琴音は、唇を噛みしめる。
「心臓を貫くつもりだったが、上手く避けたか。……気に入った。女、お前を鬼にしてやろう」
「な、んですって……?」
「ちょうど私は殆どの部下を失った所だ。私の前で跪き、頭を垂れるなら考えてやろう」
「そんなの、こっちから願い下げよっ!」
そう言って刀を構え直した琴音に「憐れなものだな」と口を開いた無惨は、再び彼女に向かって腕を伸ばすのだった。
******
「駄目だっ、無惨相手に琴音を一人で戦わせるな!義勇はまだか!?」
「逆方向です……」
ここは産屋敷邸から離れたある屋敷。
そこでは産屋敷の新たな当主、輝利哉が鎹鴉を通じて鬼殺隊の皆の指揮を取っていた。
「このままでは琴音まで……っ、」
「輝利哉様!輝利哉様!」
自分のせいでと狼狽える輝利哉の姿に、くいなは頬に張り手を食らわす。
「しっかりなさいませ、お館様!!」
その声を襖越しに聞いていた護衛三人は、皆一様に険しい表情を浮かべていた。
次々と入る上弦討伐の知らせ。
それに伴い、失った仲間の命。
「琴音の元に柱を集結させる!」
部屋の中から聞こえた声に、杏寿郎はぐっと拳を握りしめる。
それに心配そうに目配せをした愼寿郎と天元だが、彼らが出来ることは何もないのだ。