第四章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「どけやァ!!ぶっ殺すぞ!!」
「玄弥を再起不能になんかさせてやらない!!」
実弥が殴りかかった拳を顔面に食いながら、炭治郎も負けじと首元に蹴りをお見舞いしてやる。それを見ていた玄弥が「炭治郎は関係ない」と声を上げるが、実弥は全く聞く耳を持たない。見かねた善逸が玄弥を外に連れ出そうとして、腕を引いていく。だが玄弥は玄弥で、善逸が実弥の事を
それを呆然と眺めていた隊士達も我に帰り、彼らを止めるべく動き出したが、血が上った実弥に叶う筈もなく、どんどん投げ飛ばされていく。
そこへ駆けつけた琴音は、目の前で繰り広げられる乱闘に思わず口元を引き攣らせた。
〝えーーー。何これ……〟
余りの光景に、一瞬遠のきそうになった思考を慌てて呼び戻した琴音は、とりあえず実弥と炭治郎を止めるべきだと判断して、二人に向かって駆け出した。
******
「……二人とも落ち着いて」
ふわりと炭治郎と実弥の間に降りたった琴音は、実弥の拳を右手で受け止め炭治郎の足を左手で凌いでいた。
驚いて動きを止めた炭治郎に対し、彼女の気配に気づいていたのだろう。然程驚きも見せず「琴音どけェ」と実弥が再び拳を振り上げるものだから、琴音も負けじと其れを受け止める。
「実弥さん、これが稽古なのでしたら口出しはしませんが……私には本気でやり合っている様にしか見えません。隊士同士の争いはご法度ですよ?」
こてんと首を傾げた琴音を睨みつける実弥の姿。
周りの隊士達はそんな二人を息を呑んで見つめていたが、おや?とある事に気がついた。あんなに暴れていた実弥が、口を閉ざし睨みつけるだけになってはいないだろうか……
そんな彼を前に、大きなため息を一つ落とした琴音は、その場にいた隊士に口を開く。
「今日の稽古は一旦中止!後で怪我人を見るからその場で待機!ああ、これありがとう!」
そう言って皆に命令を下した琴音は、先程荷物を預けた隊士からそれを受け取り、ニコニコと実弥の背中を押して去って行った。
〝〝〝すげ〜……琴音さん、あんなに荒れ狂う風柱を宥めたぞ………〟〟〟
その場に居合わせた隊士達は、皆一様に同じ事を考えて、琴音の背中を見送るのだった。
そんな隊士達と別れた琴音は、不貞腐れたようにズカズカと歩みを進める実弥の後ろ姿を、静かに歩いて着いていっていた。
暫く歩いたところで突然立ち止まった実弥は、振り返ることなく口を開いた。
「さっきは悪かったなァ……」
「ふふっ、気にしてませんよ?まぁ、流石に実弥さんの拳は重いですからね、ジンジンしてはいますけど」
「……ふっ、そうかよ」
ぶっきらぼうな言葉を述べる実弥に、琴音は小さく笑みを漏らす。そして近くにある縁側を指差して「あそこで少し話しませんか?」と口を開いた。
******
「なんで炭治郎君と喧嘩を?」
「……アイツとは馬が合わねぇ」
そう言って、眉間にこれでもかと言うほど深い皺を刻んだ実弥に、琴音は小さくため息を吐いた。
〝そう言えば、炭治郎君って実弥さんに頭突きを喰らわせてたんだっけ…〟
だいぶ前に杏寿郎から聞かされていた話を思い出し、ふむ、と顎に手を置いた。
確かに人には相性と言うものがあるだろう。だがそれを加味した上で考えても、あんな乱闘騒ぎを起こす程、実弥も炭治郎も非常識な人間ではない。
普段厳しい実弥だが、琴音が信頼を寄せる証拠に、彼の言い分にはいつも筋が通っている。
炭治郎に関しては思いやり溢れる真面目な少年なのだ。何処か自身の弟を思わせる彼の姿に、琴音は何かと気にかけてやっているのだが……
そんな二人が乱闘を起こすとは、其れなりの理由がある筈だろう。そう結論付けた琴音は、ふと炭治郎の後ろにいた
「不死川玄弥君……」
「なっ、……!」
琴音がぽつりと口にした名前に、実弥はバッと琴音に顔を向ける。
「お前、なんで玄弥のこと……」
「やっぱり弟さんでしたか」
そう言って苦笑いを浮かべた琴音は、可愛らしく首を傾げた。
「実弥さん、お忘れですか?私も柱稽古をつけているんですから、彼には勿論あっているんですよ?」
「………」
「不死川という姓に、あんなにお顔がそっくりなんですもん!誰でも気がつきますよ?」
「………弟じゃねェ」
視線を逸らして呟かれた言葉には、全く覇気が感じられない。彼にしては珍しいその様子に琴音は思わず眉を下げ、困ったような笑みを浮かべる。
「実弥さん、弟って手がかかるものですよね……」
そう言って微笑んだ琴音は、懐かしむように空を見上げた。
そして、そっと目を閉じた琴音は彼に語りかけるように口を開いた。
ずっと秘めていた想いをぽつり、ぽつりと紡ぐ琴音は〝弟を思う姉〟。
その表情そのものだった……