第四章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
杏寿郎に想いを打ち明けてから、琴音は何かが吹っ切れたように明るくなった。
元々人懐っこくよく笑う彼女だが、嬉しそうにしてニコニコしている姿も増えたし、鍛錬にも今まで以上に気合いが入っている。
精神論ではないが……やはり身体を鍛えるにしても、悩みを抱えた時より動きに迷いがなくなったし、格段に技の感覚も吉原での任務の時に近づいてきているように思う。
〝最近では、柱同士の稽古も始まったし、助言を仰いだり速さを磨くいい機会だな〟
そんな事を考えながら、にこにこと手を動かす琴音に杏寿郎が近づき声をかける。
「朝から姿が見えないと思えば、こんなに大量におはぎを作っていようとはな……」
「あっ!杏寿郎さん、いいところに来ましたね!今なら出来立てほやほやのおはぎを、味見させてあげましょう!」
そう言って一つを手にした琴音は、杏寿郎の口元にそれを持っていってやる。その可愛らしい誘惑に、杏寿郎は迷う事なく口を開け、おはぎを一口頬張った。
「杏寿郎さん、如何ですか?」
「うむ、とても美味いぞ!!……だが、こんなに大量にどうするのだ?」
「あれ?言ってませんでしたっけ?今日は実弥さんの所に手伝いに伺うんです」
「不死川の所へ?手伝い?」
「実弥さんの稽古が凄すぎて怪我人が続出しているようなのですよ。一応怪我の処置の仕方や呼吸を使って治癒するやり方は、私の所で教えたつもりだったんですが……多分それを上回る早さで隊士達を扱いているんでしょうね?」
そう。琴音が予想した通り、彼がつける稽古は想像を絶する程過酷なものだった。気絶する者、吐き散らす者が後をたたない……
それを想像した杏寿郎は〝彼ならばやりかねない〟と納得のいった表情を浮かべるのだった。
「それにしても、なぜおはぎなのだろうか?」
「ふふっ、それは実弥さんの好物だからですよ。あの人、あの見た目に反して甘党なんです!」
そう言ってクスクス笑った琴音は、手にしたままだった食べかけのおはぎを、再び杏寿郎の口元に近づけた。
「はい、杏寿郎さん。あーん」
やはり機嫌良くニコニコ笑う琴音に、杏寿郎は頬を染め、再び口を開くのであった。
******
近頃琴音は、実弥に関わらず他の柱稽古にも顔を出し、甲斐甲斐しく隊士たちの世話をしていた。勿論それだけが目的ではなく、柱たちにあわよくば新しい技を生み出す助言を貰おうと言う魂胆ではあるのだが。
何しろ今の柱達は、蛇だの、恋だの、霞だの……独自の呼吸を生み出した隊士達が多いのだ。
ただ琴音が考える程、彼らは一筋縄ではいかない。
天元のところへ行けば、何故か「(善逸くんに)温泉を掘らせたから一緒に入りましょう?」と嫁達から迫られ、
蜜璃のところへ行けば、なんだかんだで甘味をご馳走されて
伊黒のところへ行った際には「そんな事も自分で考えられないのか」とかなんとかネチネチ小言を言われる始末だ。余りにもしつこい
無一郎には「こればかりは本人の感覚だから分からないや…」と言って、謝られた。
「ううん、そおだよね……無一郎君、ありがとう」
とても柔らかくなった彼の雰囲気に、琴音が戸惑ってしまうほどだった。
〝みんな、個性豊かだな〜〜〟
近頃の出来事を振り返りながら、風柱邸を目指している琴音もまた、その個性豊かな面子の一人であるという事には、本人は全く気づいていないのだった。
******
「ごめん下さーい」
風柱邸について、玄関先で声をかける琴音だが、家の中からは返事がない。
だが、何やら叫び声が庭の方から聞こえる為、琴音は勝手に其方へと足を進めていく。
庭に近づくにつれて、倒れ込むようにして気を失っている隊士がちらほらと目につき始め、琴音は思わず苦笑いを浮かべた。
だが、そんな彼女の元へ此方へ逃げるようにして走ってきた隊士が、驚いたように足を止めた。
「えっ、琴音さん、何故ここに?」
「何故って、お手伝いだけど……そんなに慌ててどうかしたの?」
「そうでした!!琴音さん、助けてください!!風柱様が……っ!!」
その隊士からことの詳細を聞いた琴音は、持っていた包みを彼に預け、庭へと物凄い早さで駆け出した。
「実弥さんっ!!……っ、」
琴音が駆けつけた先は地獄絵図だった。
たくさんの隊士が投げ飛ばされ、その中心では炭治郎と実弥が本気の取っ組み合いを繰り広げていた。
思わず引き攣った口元に喝を入れ、琴音は彼らの仲裁をするべく足を踏みだすのだった。