第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
二人が縁側に着くとそこへ見計ったかのように、
おはぎとお茶を用意した千寿郎が現れる。
彼は本当にできた弟なのである。
そんな千寿郎の視線は自ずと兄の後ろいる彼女へと向けられる。
しかし、何故だろう。
先程と打って変わって、大人しくなった彼女は下を向いてもじもじとしている。
どうかしたのだろうかと兄を見上げれば、見上げた先の兄の顔が随分と楽しそうだという事に気づいた千寿郎。
自分がお茶を入れている間に何があったのかと
少しオロオロとしてしまうが、意を決して二人に話しかける。
「琴音さん、こんなに沢山ありがとうございます。お茶を用意したので、こちらで一緒に食べましょう」
千寿郎はとりあえず、縁側に座るように二人に伝える。
そんな彼の気遣いに気づきちらっと、千寿郎を見て「ありがとう」と小さく呟き腰を下ろした琴音。
その横に兄が腰を下ろしたのを確認し、千寿郎は頂いたおはぎが入った包みを開く。
先程まであまりの恥ずかしさに下を向いていた琴音だが、甘い匂いに誘われて恐る恐る顔をあげる。
その姿を捉えて、また杏寿郎は声を上げて笑いそうになったが、ここで笑ってしまえば今度こそ琴音の機嫌を損ねてしまうだろう、となんとか笑うのを堪える。
そして、琴音が遠慮しないように
「どれどれ」なんて言いながら、おはぎを手にし
「ほら、お前たちも食べなさい!」と促すのであった。
眉を下げ「ありがとうございます」と笑った琴音は、恥ずかしそうに少し視線を彷徨わせた後おはぎを手にする。
その姿を確認し、うむ!と頷いた杏寿郎は、おはぎを一口頬張り
「うまい!」
と、食べた感想を大声で述べるのだった。
見慣れている千寿郎は
「本当ですね〜、やはりおはぎにはお茶がよく合います」なんて可愛らしく笑っているが
琴音は、初めて見る光景に驚いて固まっている。
大声で「うまい!」「うまい!」「うまい!」
と連呼する杏寿郎を凝視していると、そんな視線に気づいた彼が声をかける。
「ん?琴音は食べないのか?甘いものが好きなのだろう?」
その声に、我にかえった琴音は咄嗟にすみません、と謝った。人の顔をジロジロと見て固まっていたのだ、失礼だろうと自分を心の中で叱りつけ「いただきます」と慌てて、おはぎを一口頬張る。
先程からもじもじしてみたり、困った顔して笑ってみたり、こうして何故か急に謝ったり。
ころころと感情がかわる彼女に、おはぎを食べたらどんな反応をするのかと二人の視線が集中する。
そんなことなどつゆ知らず、おはぎをモグモグと一口飲み込んだ琴音は「わぁ、とっても美味しいですね〜」ととても幸せそうに、ふにゃりと笑うものだから
それに釣られて、杏寿郎も千寿郎も、兄弟揃って顔を赤くする。凄い破壊力である。
今日は任務にも出ていないし、力がいる作業は全て杏寿郎がやってくれたので体力的には全然疲れはないのだが
片付けと言っても全ての本に軽く目を通し、必要か判断する作業は思いの外、精神的に来るものがある。
やはり疲れた後の甘味に勝るものはないな、と機嫌を取り戻した彼女は、それはそれはニコニコと話し出すのだった。
皆と一緒に食べる甘味は格別ですね、とか。
甘味があればなんでも乗り越えられる気がします、とか。
甘いものは世界を救うのですよ、とか。
その勢いに呆気に取られていた二人だが
甘いものさえあれば彼女の機嫌は治るのか、覚えておこうと、、、少し失礼な事を同じように考えている辺り、さすがは兄弟である。
******
あれから、おはぎを三つも食べた琴音は満腹なお腹を軽く摩る。
甘いものは大好きだが人並みにしか食べれない彼女は隣で未だ、おはぎを口いっぱいに頬張る杏寿郎へ視線を移し姿勢を正す。
「師範。今日は私のために色々と手伝っていただき、ありがとうございました。
師範は任務明けなのでしょう?今日の所は、ここでお暇させていただきますので、夜に向けて少し体を休めて下さい。」
そこまで言って、今度は千寿郎へ視線を移し
「千寿郎くん、さっきは、その、、、ごめんね?あんまりにも師範にそっくりだったもので、ちょっと取り乱してしまって。
私にも千寿郎くん位の弟がいるものだから、なんだか嬉しくなってしまって。もし千寿郎くんさえよければ、姉のように甘えてくれると嬉しいな」
とはにかんで笑うのであった。
千寿郎は兄以外に甘えて欲しいなどと、言われた事がなかったから、なんて言えばいいのか分からず不安げに彼女を見つめる。
それに気づいた琴音は、反応できずいる事には触れず「これからよろしくね」と優しく笑いかけるのであった。
なんだか恥ずかしいような、それでいて胸がじんわり暖かくなるような感覚に
千寿郎も笑みをこぼし、「こちらこそ宜しくお願いします」と返すのであった。