6、ヌル
突然現れたたまはその腕に大きいカメラ───時間泥棒の頭を持っていた。
この時代にたまはいない。ならば、その解は。
いや、でも、そんなはずは…どうしてこの時代に?全てを終わらせるために呼び出した過去の銀時は失敗したのだろうか。それにしてもたまがこの時代に来る理由が分からない。
なんにせよ白詛、時間泥棒、たま、ここまで揃い踏みだとなると…
「もう全ては終わりました」
「白詛に感染する前に魘魅を、銀時様が殺して」
「は…」
拍子抜けだった。
もう終わった後だったなんて、身構えた銀時が馬鹿みたいだった。
「…なら、おかしいだろ。なんでこの時代にまた白詛が流行ってる」
たまは言う言葉を思案している。
驚きもしない、つまりは、知っている。白詛がこの時代に来ていることを。
「…どうやら、あのとき過去に飛ばされたのはあなたが呼んだ銀時様だけではなく…」
「あなたと、その身に宿っていた魘魅も飛ばされていたようなのです。攘夷時代よりも、さらに前の時代に」
───なんだそら
たまの言うあのとき、とは5年前の銀時が過去へ赴くために時間泥棒を使い、一体が光に包まれたときのことを言っているのだろう。
だがそれで自分がこの世界を生きているのでは結局繰り返さなければならないではないか。
もっと前、この亡霊が目を覚ます、松陽と出会うその前の自分を殺しに。
「もうその必要はありません」
「…どういうことだ?」
そう聞き返してからハッとした。
松陽は言っていたではないか。『最近"離れ"で病が流行ってるらしいですね』と。
銀時が白詛感染の中心にいるのなら真っ先に感染するべきは松陽と松下村塾の子供たちである。
特に、松陽とはこの時代に目が覚めてからずっと一緒にいるではないか。なのに、感染していない。
つまり、今の感染源は銀時ではない。
「寄生主の元から離れたことで魘魅がひとりでに暴走しているんです」
「なんつー迷惑なクソウイルス…」
「そして、魘魅の向かう先は…あなたです。銀時様」
「…俺?一回寄生したからか?」
「そうだと思われます。時間が無いのでしょう。身体がないのでは自由に動けませんから」
──そのままくたばってくりゃいいのに
銀時がそう思うのも無理はないだろう。
なにしろ、魘魅の迷惑を一番被っているのは銀時だ。知らぬ間に寄生され、知らぬ間に周りに病をばら撒かれ、知らぬ間に大魔王にされていた、なんて
それだけで怒り心頭だというのに、挙句逆行しても着いてこられる方の身にもなって欲しい。本当。
「でもそれならたまがこの時代に来なくたって良かったんじゃねーか?時間が解決してただろ」
「…いいえ、私もここまで戻るつもりはありませんでした。少し設定を間違えてしまって…でもどうやら意味はあったみたいです」
意味?彼女が来た意味、まさか、こうやって銀時に真実を話すことがだというのか?
確かに銀時は真実を知った。だとしても変わらない。
──銀時の存在が、この時代に面倒事を持ってきたということは。
「銀時様は、これから何をされるつもりですか」
「俺ぁ追われてるんだろ?なら消えてくれるまで逃げるしかないだろ、松下村塾から離れることにはなるけどな」
「本当に、それでいいのですか」
「あたりめぇだろ。俺がちょっと離れるだけでアイツらは巻き込まれずに済むんだったら、それがいい」
「では、銀時様がそうせずに済む方法があるとすれば?」
彼女は、たまは何が言いたいのだろう。
銀時が松下村塾から離れず、かつアイツらが無事で済む方法?
あったら人生苦労しない。あれだけしつこい魘魅のことだ、完全に消え去るまで銀時の事を逃がしてはくれないだろう。
「そりゃ確定保証付きか?」
いつも動かない表情が、穏やかに、優しく微笑んだ。
「はい。それはもうとっておきです。」
たまは何かを決意したように息を吸って、言う
「私を、使ってください」
◆◇◆◇
使うとは、どういうことか。
銀時の疑問を汲み取ってたまは話す。
「コレで魘魅を未来に飛ばします」
たまが持ち上げたのは腕の中にあった時間泥棒の頭だ。しかし、未来?未来に飛ばすということはまた未来で白詛が────
「未来には魘魅はいない。これは確定している事実です。魘魅が死んだ時間より先に飛ばせば、事実上魘魅は存在できない。──過去に存在しないことになるから。」
「飛ばすっつっても一定範囲内には近づかなきゃなんねぇぞ」
「そこは安心してください。銀時様。」
たまはまた笑った。
どうしてたまはそこまでの自信が持てるのだろうか。彼女の中で勝算があることには違いない。
だが、なぜそれを言わない?
その勝算を、銀時に具体的に話そうとしないのはなぜか。
この作戦はどうしても魘魅に近づかなければいけない。あの表情あの笑み、『とっておき』という言葉、私を使って?───まさか。
「お前まさか、そのまま突っ込んでいこうなんざ」
彼女はどこかの方角へと体を向け、銀時の声に少し振り返り、言った。
「私は、まだこの時代にいません。ですが銀時様は違います。」
「今を、生きてるんです」
「…おいおい、俺が聞きたかったのはそんな言葉じゃねぇぞ」
振り返っていた頭を前方に向け、たまは完全に銀時に背を向ける。
「あなたのおかげで、皆日常に戻れました」
「次はあなたの番です」
これじゃぁ、まだ。
「──どうか、救われてください」
銀時が去る方がマシだった────。
この時代にたまはいない。ならば、その解は。
いや、でも、そんなはずは…どうしてこの時代に?全てを終わらせるために呼び出した過去の銀時は失敗したのだろうか。それにしてもたまがこの時代に来る理由が分からない。
なんにせよ白詛、時間泥棒、たま、ここまで揃い踏みだとなると…
「もう全ては終わりました」
「白詛に感染する前に魘魅を、銀時様が殺して」
「は…」
拍子抜けだった。
もう終わった後だったなんて、身構えた銀時が馬鹿みたいだった。
「…なら、おかしいだろ。なんでこの時代にまた白詛が流行ってる」
たまは言う言葉を思案している。
驚きもしない、つまりは、知っている。白詛がこの時代に来ていることを。
「…どうやら、あのとき過去に飛ばされたのはあなたが呼んだ銀時様だけではなく…」
「あなたと、その身に宿っていた魘魅も飛ばされていたようなのです。攘夷時代よりも、さらに前の時代に」
───なんだそら
たまの言うあのとき、とは5年前の銀時が過去へ赴くために時間泥棒を使い、一体が光に包まれたときのことを言っているのだろう。
だがそれで自分がこの世界を生きているのでは結局繰り返さなければならないではないか。
もっと前、この亡霊が目を覚ます、松陽と出会うその前の自分を殺しに。
「もうその必要はありません」
「…どういうことだ?」
そう聞き返してからハッとした。
松陽は言っていたではないか。『最近"離れ"で病が流行ってるらしいですね』と。
銀時が白詛感染の中心にいるのなら真っ先に感染するべきは松陽と松下村塾の子供たちである。
特に、松陽とはこの時代に目が覚めてからずっと一緒にいるではないか。なのに、感染していない。
つまり、今の感染源は銀時ではない。
「寄生主の元から離れたことで魘魅がひとりでに暴走しているんです」
「なんつー迷惑なクソウイルス…」
「そして、魘魅の向かう先は…あなたです。銀時様」
「…俺?一回寄生したからか?」
「そうだと思われます。時間が無いのでしょう。身体がないのでは自由に動けませんから」
──そのままくたばってくりゃいいのに
銀時がそう思うのも無理はないだろう。
なにしろ、魘魅の迷惑を一番被っているのは銀時だ。知らぬ間に寄生され、知らぬ間に周りに病をばら撒かれ、知らぬ間に大魔王にされていた、なんて
それだけで怒り心頭だというのに、挙句逆行しても着いてこられる方の身にもなって欲しい。本当。
「でもそれならたまがこの時代に来なくたって良かったんじゃねーか?時間が解決してただろ」
「…いいえ、私もここまで戻るつもりはありませんでした。少し設定を間違えてしまって…でもどうやら意味はあったみたいです」
意味?彼女が来た意味、まさか、こうやって銀時に真実を話すことがだというのか?
確かに銀時は真実を知った。だとしても変わらない。
──銀時の存在が、この時代に面倒事を持ってきたということは。
「銀時様は、これから何をされるつもりですか」
「俺ぁ追われてるんだろ?なら消えてくれるまで逃げるしかないだろ、松下村塾から離れることにはなるけどな」
「本当に、それでいいのですか」
「あたりめぇだろ。俺がちょっと離れるだけでアイツらは巻き込まれずに済むんだったら、それがいい」
「では、銀時様がそうせずに済む方法があるとすれば?」
彼女は、たまは何が言いたいのだろう。
銀時が松下村塾から離れず、かつアイツらが無事で済む方法?
あったら人生苦労しない。あれだけしつこい魘魅のことだ、完全に消え去るまで銀時の事を逃がしてはくれないだろう。
「そりゃ確定保証付きか?」
いつも動かない表情が、穏やかに、優しく微笑んだ。
「はい。それはもうとっておきです。」
たまは何かを決意したように息を吸って、言う
「私を、使ってください」
◆◇◆◇
使うとは、どういうことか。
銀時の疑問を汲み取ってたまは話す。
「コレで魘魅を未来に飛ばします」
たまが持ち上げたのは腕の中にあった時間泥棒の頭だ。しかし、未来?未来に飛ばすということはまた未来で白詛が────
「未来には魘魅はいない。これは確定している事実です。魘魅が死んだ時間より先に飛ばせば、事実上魘魅は存在できない。──過去に存在しないことになるから。」
「飛ばすっつっても一定範囲内には近づかなきゃなんねぇぞ」
「そこは安心してください。銀時様。」
たまはまた笑った。
どうしてたまはそこまでの自信が持てるのだろうか。彼女の中で勝算があることには違いない。
だが、なぜそれを言わない?
その勝算を、銀時に具体的に話そうとしないのはなぜか。
この作戦はどうしても魘魅に近づかなければいけない。あの表情あの笑み、『とっておき』という言葉、私を使って?───まさか。
「お前まさか、そのまま突っ込んでいこうなんざ」
彼女はどこかの方角へと体を向け、銀時の声に少し振り返り、言った。
「私は、まだこの時代にいません。ですが銀時様は違います。」
「今を、生きてるんです」
「…おいおい、俺が聞きたかったのはそんな言葉じゃねぇぞ」
振り返っていた頭を前方に向け、たまは完全に銀時に背を向ける。
「あなたのおかげで、皆日常に戻れました」
「次はあなたの番です」
これじゃぁ、まだ。
「──どうか、救われてください」
銀時が去る方がマシだった────。
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