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2、フィーア

『松陽の傍にいる資格がない』
そんな自分の想いとは裏腹に銀時は授業をサボる生徒第一号としての機能を見事全うしてしまった。逃げれなかった、逃げることが許されなかったのだ。
────松陽は銀時に何かあることにもう恐らく気づいている、その"何か"が無ければ自分のような戦争孤児が優しく差し伸べられた手を払い除けるようなことはするはずもないのだから。
それでも逃がそうとしてくれないのは銀時が何処かに去っていってしまうことを危惧してかはたまた離せば消えいってしまうことに気づいてか、どちらにしても銀時にとっては同じことといえるだろう。
村塾の生徒が増えていく中、そのままズルズル春、夏、秋、冬、一年、二年と流れていき未だ村塾…というより松陽から定期的に逃げ出そうとしており、今もその最中だ。

「銀時!どうせ先生に見つかるのだから逃げるのは辞めたらどうだ」

木の上で留まっていれば探しに来たヅラが声をあげ出す。
前はヅラと高杉を助けていた記憶がうっすらあるが今回は会わないようにしていたはずなのにも関わらずどういう因果なのか高杉の野郎は道場破りに来てからは前と同じ、結果的に二人とも村塾に入った。
最初は銀時がいなくなっていることに不安を感じていたようだが何回か繰り返していればその危機感も薄れていったようだ。
あんな大声を出して銀時に気づかれることを考えていないのだろうか、というよりあんな馬鹿なやつであっただろうか、戦の時は策士の名を轟かせていたような気がするが気のせいだったかもしれない。

何にせよあんな呼びかけに応える気は無いのでさっさとその場から去ることにした。

◇◆◇◆

さも当然かのように道を歩く、こういうのは大抵自然体だと見つかりにくいのだ。
実際、こうしている時が一番見つかっていないのだから説得力があるというものだ。
奥から少年…今の自分の姿からしてみれば年上ぐらいの子供だろうかが歩いてくる。

妙に時の流れが遅く感じる、今か今かと覚えもない編み笠を深く被ったあの少年とすれ違う瞬間を待っているかのように。
こちらに気づいてか少年が編み笠をちらりと上げた、覚えがあるようで、ないような。

ダッ

すれ違うその瞬間咄嗟に少年の腕を掴んでしまう。なんだかそうしないと取り返しのつかないことになるような気がして、悲劇を繰り返してしまうような気がして。
どうしてそう感じるかも分からずにそんな行動に出てしまったことを深く後悔した。
これでもかというくらいクマのある目で睨みつけられる。
クマ、顔の傷、灰色の髪、この特徴を何処かで見た覚えがある。こんな少年の姿ではなくもっと大人の……

「…なんのつもりだ」

そこには奈落首領の男、朧がいた。
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