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其の三 紅桜

「こっちアルか定春」

「ワン!」

神楽と定春は桂の匂いを辿っていた。
定春は犬だけあって鼻が利く、お利口さんだしこれ以上良いペットはこの世界何処を探しても居ない気がする。
バッと定春が立ち止まるのにつられて神楽の足も止まった。

「ワン?ワンワン!」

「え?もしかして匂いが動いてるネ?」

何も鳴かないのは肯定と受け取っていいだろう。しかし匂いが動いているとなると追跡はしづらいが……

「なにネ、アレ」

見渡せる範囲の視界に大きい船が映りこむ。
恐らく船員二人程だろうかが「岡田さん、変な刀持ち始めたとか」「なんだっけ、『紅桜』?」と話しながら船に戻ろうとしていた。
『紅桜』の名前が出るのならこの船も無関係というわけではなさそうだ。

「定春、お前は姉貴んとこ先に戻っとくアル」

「ワン…」

「心配いらねーヨ、なんたって神楽様なんだから」

なら心配要らないとでも言うように踵を返し、走って家に戻っていった。
やはり言葉が通じているのでは無いかと偶に思う。
そっちのことはさておき正攻法では船に入れはしなさそうなので有り余る力全て使って窓を突き破ることにした。

「ホワチャァァァ!!」

同時に耳に響くけたたましいサイレンの音。
ゾロゾロと人間達がやってくる。
金髪の女がこちらに銃を向け、叫んだ。

「何を企んでいる!」

「紅桜って刀と一応桂とかいうやつを探してるネ」

「素直ッスね!あ、桂?」

◇◆◇◆

「おい坊主に…その着ぐるみの人、こんなとこで何してる」

見廻りをしていた人がコソコソとしていた新八とエリザベスに話しかけてきた。
確かに子供とこんな姿の人が居たら不審に思うだろう、この人の判断は間違ってはいない。

「早く帰った方が良い、最近ここらでは…」

__ビュン

「人斬りが出るんだから」

言い終わる前にその人は倒れた、服に赤黒い血が…滲んでいる。
後ろから斬りかかった人からは敵意が感じ取れ、つい身構える。

[お前は…似蔵!]

「奇遇なものだ、主人の敵討ちにでも来たか」

[お前が桂さんを…]

「ならこの人が『紅桜』を?」

「そっちの小僧が探してるのはこれかい?」

似蔵と呼ばれた男は見せびらかすかのように赤みがかった刀身を見せる。
確か鍛冶屋での話では『紅桜』は赤みがかった刀身と聞いていた。あれが『紅桜』で間違いはないだろう。
男は『紅桜』をエリザベスに振りおろそうとする。

「エリザベス!!」

__ガンッ

「おっさん、んな刀持って物騒だな」

その刀を受け止めそんな言葉を吐いたのは銀髪の少年…銀さんだった。
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