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其の二 拾い犬

「銀ちゃーん!」

いちご牛乳を飲んでいたところで外から聞こえてくる活発な少女の声に邪魔されてしまった。甘味の時間を奪うほどの重要なことなのだろうか、そうでなかったらいくら神楽と言えど拳が出てしまうかもしれない。
銀時はため息をつきながら外に出てみればいの一番に目に付いたのは「ワン」と鳴く犬の形をした白いモフモフの塊だった。犬の形をした、といったのはそれが犬とは思えぬほどの大きさだったからだ。

「そいつは…」

「さっき拾ってきたネ、名前は定春アル!」

「まさか飼うつもりとか」

「そうヨ、飼うつもりアル」

「てめぇは新八を過労死させる気か」

このサイズ感みれば一目瞭然、確実に食費が二倍になる。銀時と神楽も払い屋の仕事はやっているがまだ見習いな訳で稼ぎとして見れば新八が大黒柱なのだ。ただでさえ神楽が良く食うというのにこれ以上増やされては新八がストライキを起こしかねない。
何とかこの事態を回避するには定春と名ずけられた犬、此奴の里親を探すしかない。が、そのままストーレートにやると神楽が機嫌を悪くして家を壊しかねない。

「俺ぁ新八に話してくるからそいつと散歩にでも行ってこい」

「ラジャーヨ!」

そう言って神楽は定春に飛び乗り元気に町へと繰り出して行った。新八に断られる可能性を考えて居ないところが純粋無垢と言うべきか無意識な悪意とでも言うべきか、何にせよそんな姿を見ていてはこれからすることに心が痛むというものだ。

◆◇◆◇

「まぁこれくらい貼りゃいいか」

定春の写真と里親募集中の文字、家のスペースも取られて食費もかかる。こんなでかい犬を飼いたいと思うやつは神楽のようなよっぽど物好きなやつだろう。そんなことを考えているといつのまにいたやら後ろから声をかけられる。

「もうあの家にゃメガネにゴリラ女と選り取りみどりなのにデケェわんころまで加えりゃ動物園になりやすぜ、旦那」

振り向けば里親募集中の紙を持った年下を旦那呼びする変わり者、制服の黒い服に茶髪の少年──沖田総悟がそこにいた。以前、沖田には何回か会ったことがあるが随分と久しいように感じる。

「俺じゃねー、第二のゴリラ女が拾って来たんだよ」

「そいつは初耳だ、旦那といいそのゴリラ女といいあのメガネ拾い癖があんじゃねェですかィ」

それはそうだ、本人は自覚しているか怪しいが新八には神楽に負けず劣らずの拾い癖がある。生来のモノなのか親がそんな性格だったのかは知るはずも無いが。

「俺ぁアイツに拾われた判定かよ」

「なら俺が拾い主名乗っていいんで?」

「やめろ薄ら寒ィ…ところでお前のとこであの犬飼えたりしねぇの?」

「土方の野郎がうるせぇんで」

確かにあの中で一番排他的だったのは彼奴だったしそういうことにはうるさそうだ、目もガンギマリだし、犬よりゴリラのほうが好きそうな人間だ。
仕方ない、他にも当てはあるのだ。
そこ次第だが…

「…銀ちゃん、それ何アル?」

気づけば定春を連れた神楽がそこにいた。
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