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其の四 分岐点

薄暗い路地裏、二人の男がひっそりと立ち会っていた。
鼠か烏にでも食い荒らされたのか汚い食べカスがそこら中に転がっている、誰かが吐いたのか嘔吐物もあった。
見るに堪えない無惨な光景がある場所に長居はしたくないので高杉はすぐに用を済まそうと、目の前にいる随分と長い付き合いであろう男__坂本辰馬に話しかける。

「ブツは持ってきたか」

「おう、無くしてもうた」

「…ハァ?」

まず口から出たのは素っ頓狂な声だった。
聞き間違いかと疑うが、坂本がやってしまったという顔をしているのを見て自分の顔を手で覆った。
どういうことだという疑問を胸に坂本を力一杯睨みつける。

「盗ってきたは盗ってきたけど気づいたら無うなっちょったぜよ、アハハハ」

「俺ァ一応重要物って先生から聞いてんだが」

「吉田さんにはすまん言うちょいて」

「……」
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