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最近巷で一つの漫画が流行っている。
簡単に言うと、バンドマンたちが戦う話。 詳しく語ると3時間はかかるのでここでは割愛しておく。
とりあえず、最高なのだ。 V系や和楽器、ロックなど様々なバンドがあって飽きない。 しかも女性バンドもあるので男性にも大人気。
オタクの5人に4人は知っていると言われるほどの知名度。 流石だ。 神か、神なのか。
おっと語りすぎた。 まぁ端的に話すと私は今これに絶賛ハマり中だ。
そして、ついに、ついに今日私はギターを買ってしまった。
ニヤニヤが止まらない。 しかもこれキャラが持ってたギターにそっくりだ。 リサイクルショップで買ったから値段もお手頃。非の打ち所がないとはまさにこのこと。
しかし、これを私がニヤニヤするためだけに持っておくのはもったいない気がする。うーん、どうしよう……あっ!アイツならいける!
『という訳でギター買っちゃった!見て!凄くない?ヤバくない?』
「いきなり名前が家来るとか言うから何かと思ったらそういうことかよ」
『もう本当ヤバイよね、一郎ならこの半端なさ分かってくれると思って!』
語彙力が死んでいるのは自分でもわかる。けれどもこれは仕方ない。一郎だってあの漫画好きだから私の感動を分かってくれるはず‼︎
「いや、凄いけど、 俺は今仕事の時間なんだよ、依頼人来たらどうすんだよ」
『大丈夫、来ない』
「何も大丈夫じゃねぇよ、稼ぎ無くなるじゃねぇか」
『えー、せっかく一郎に見てもらおうと思ったのに』
「本音は?」
『自分の家だと弾いたとき音が漏れそうだけど、ここなら多分大丈夫』
「あぁどうせそんなことだと思ったけどよ」
『だめ?』
はーい、女子の必殺〔上目遣いからの、だめ?〕もうこれは効くね、一郎君ドキドキしちゃうね、なんたって彼女がやってるんだから!
「キモい」
『うわっ、ひどっ!!!』
は? 彼女がサービスしてんだよ? 何がキモいだ、しかも真顔で言うとか。 べ、別に傷ついてなんかいなんだからねっ!ちょっとシュンってしてるだけだからっ!
「はぁ、まぁどーせ帰れったってここで弾くんだろ?」
『え? いいの? ありがとう好き!』
流石一郎! 優しい! 好き、本当に好き!
「っつ、あーもう!お前はこれだから……ったく、分かったよ。じゃあ俺は向こうで色々してるから。ここで弾いとけ」
『うん、ありがとう! 流石一郎、心が広いね』
「あーはいはい、じゃあな」
こういう一郎の優しさが私は好きだ。 ツンデレってやつ? 本人に言っても否定されるだけだけど。
まぁ、もうそんなことどうでもいいや、せっかく、一郎がOKしてくれたんだ。 さっさと練習しよう。
手元の携帯を開いて楽譜を探す。今やハイテクの時代、ネットでキャラソンの楽譜をだすなんて簡単なのだ。 ほら、すぐに見つかる。
『よっし!頑張ろう』
言い忘れていたが私はやれば出来る子なのだ。という訳で、今日一日で絶対にこれを弾けるようにしてみせる!! ソファーに深く腰掛け、スタンバイOK! さぁ練習を始めよう! 譜面を読みながらピックを持つ手を動かしてみる。だけど……
『え、難しすぎません?』
初めから挫折を味わう日が来ようとは思いもしなかった、だが、ここは私名前の名にかけてやってやろうじゃありませんか!
~1時間半経過~
「どーせ名前のヤツもう諦めてんじゃねぇのかな、ちょっと様子見るか」
コンコン
「入るぞ名前、そろそろお前も諦め『ごめん、今集中してるから邪魔しないで』
「お、おうわりぃ」
(あいつが真面目にやってる? しかも集中してる? 明日槍でも降るんじゃねえか?)
さらに1時間経過
「名前、そろそろ終わって『ちょっとやってる途中だから静かにしてて』
「ご、ごめん」
一郎には悪いけど今はギターだ。ようやく掴めてきたからこの感覚を捨てたくない。
さらに30分経過
「お前そろそろ次郎と三郎が帰って『ごめん、少し待って後ちょっと』
「え、あぁ」
(いや、アイツら帰ってきたらまた面倒なことになるし……、なんで俺ん家にいるのにここまで無視されなきゃなんねぇんだよ……)
「おい」
『ぎょあっ』
「変な声だな」
『う、うるさいっ』
いきなり声掛けられたんだからびっくりもするでしょ! てか何?声低すぎるでしょ! 怖い、怖いよ一郎!
『ど、ど、ど、どしたの』
「ここ誰の家?」
『えっ、えっと山田一郎君のお家です』
「だったら少しくらい遠慮してもいいんじゃねぇの?」
『そ、そうだけど……私何かした?』
「ッチ」
うえええ、怒ってる。一郎怒ってる。 私本当に何かしたかな。 やばい、まずい。
「あのさぁ、ギターやりすぎじゃね?」
『え?あ、うるさかった?』
「そういうことじゃねぇよ」
『じゃあどういうこと?』
「だからギターやりすぎ」
ギターやりすぎ? でもうるさい訳じゃないってことは……あ、そうか長居しすぎたのかも。
『ご、ごめん長くいすぎたよね。 すぐ帰るからちょっと待って』
「ったく本当にお前ってやつは……」
『え? なんか言った? ちょっと待ってもう出るから』
「だから、そういうことじゃねぇって」
は? 帰るのも違うと、じゃあ一郎が言ってるのはどういうこと?ハテナマークを頭に浮かべて彼を見るとため息をつきながら徐々に近づいてきた。
『ちょ、ストップ。 なんか怖い!一郎止まって!」
「うるせぇ」
尚も一郎は近づいてくる。 本能的に恐怖。 目がマジなんだよ、無理、私死んじゃう。
「はぁ……」
目の前に仁王立ちした彼は私を見て1つ大きなため息をついた。 え、なんか馬鹿にされてる気がする。 そんなことばっか頭ん中で呟いてると、とうとう一郎が私に手を伸ばした。やべぇ、殺られる。
『ぐえっ』
「ほんと色気のねぇ声だな」
一郎が私を見て手を出したと感じギュッと目を瞑る。その次襲ってきたのは鋭い痛み……ではなく、よろけるような重さだった。
『い、色気!? そんなのい、いらないし。てか、何この状況!! 一郎どいて重いって!』
「うるせぇな、彼氏が彼女のこと抱きしめて何が悪い」
『なっ!?』
重さの原因は一郎が覆いかぶさって来たからだった。 しかも、彼氏と彼女とか、なんか照れるし……顔に血が上ってく。今絶対私の顔赤いじゃんっ! この格好だから見られないのが唯一の救いだけど。
「お前今照れてんだろ」
『う、うるさいって! 大体なんでこんなことしてくんのよ!』
「お前が……から」
『は?なんて言ったの? ちゃんと言って』
「お前が、ギターばっかやってて構ってくれなかったから」
え、何言ってんのこの人。 私がギターをやりすぎて一郎と話さなかったから抱きついてきたってこと? つまり……
『一郎寂しかったの?』
「さ、寂しかったとかじゃねぇし」
『じゃあどういうこと?』
「少しでいいから話したかっつーか……」
え、なんか一郎が可愛い? これはもしかして、もしかすると……
『ねぇ、一郎。 今照れてる?』
「って、照れてねーし」
『嘘だ』
「嘘じゃねーし」
『じゃあなんで耳赤いの?』
「っつ!? もっ元はと言えばお前が悪いんじゃねーか」
あ、デレた。 一郎がデレてる、可愛い。そっと髪の毛に沿わすように頭を撫でてみる。あっ、これ結構フワフワ、癖になりそう。
「名前、何してんだよ」
『一郎が可愛いなーって思って頭撫でてる』
「可愛くねーから」
『でも寂しくて拗ねちゃったんでしょ』
「ちげーし、それはその……」
『下手に言わなくていいって、これからも今まで以上にお喋りするから、ね?』
「……約束な」
『うん。約束』
笑って返すと一郎も笑ったらしかった。 少し体が震えてる。 本当に一郎は一緒にいてて飽きない。 大切な私の彼氏、なんだけど……
『ねぇいつまでこの格好?』
「もうちょい」
『いい加減疲れるんだけど』
「なんならこのままもっと疲れることすっか?」
『弟君たち帰ってくるよ』
「チッ」
一郎はさも残念という顔をしながら私から離れた。 さっさとしてくれたら良かったのに、おかげで腰が痛い。 こんなこと言ったらもっと痛くなることしようとか言うんだろうけど。
もういいや、とりあえず今日は帰ろう。 私は一郎にそう告げて帰ろうとしたした……のに
「いち兄ただいま帰りました!」
「兄ちゃんラノベの新刊買ってきたよ!」
「二郎、今僕はいち兄に帰宅の知らせをしてたの、お前が被せてくるといち兄が返答に困るだろ」
「は?俺は兄ちゃんの好きなラノベの新刊買ってきてんだよ、報告するのが筋ってもんだろーが。 お前の帰宅の知らせよりもこっちの方がよっぽど大事だっつーの」
出た、二郎くんと三郎くん!彼らに会わないようにしてたのにっ!一郎が抱きついてきたせいだ。 恨むぞ、怨念込めた目で彼を見るとまぁまぁ焦ってるようだった。
私も焦ってんだよ、お前が焦るなよ。 私はそんな言葉を飲み込んで覚悟を決めた。 行こう、正面突破だ。
『あ、二郎くん、三郎くんおかえり。 お邪魔してました』
ひょっこり廊下に登場して挨拶をしてみると2人とも目を丸くして驚いた。 ちくしょう、可愛いかよ。 なんだよ、愛くるしいわ。
「名前姉! 来てたんですか!すみません、邪魔しちゃいましたね。 おい二郎1回外でよう」
「あ、名前さん、こんばんは。 兄ちゃんと相変わらずラブラブっすね」
なっ! ラブラブって! 二人にあうといつもこんな風に気を使って貰ったり、からかわれて気恥しくなるから困るのだ。 さらに困ったことに2人は全て善意なのだ。 無下に出来ない。
『あ、外行かなくていいよ、今から帰るとこだから』
「でも名前姉、僕らが帰ってきたから帰るんじゃ」
『そんなことないよ、もう帰るとこだったし。』
「そうですか……」
あれ、三郎くんなんか寂しそう。 これはもうちょっと居た方がいいのかな? でも今更残るとは言えないし……
『また2人がいるときにも来るからね』
「本当ですか?いち兄に申し訳ないですけど、嬉しいです!」
あ、天使だ。 この子、天使だ。可愛い。
『えへへー、ありがとう三郎くん。 本当三郎くんみたいな良い弟欲しいわぁ』
思わず頬が緩む。 頭を撫でたいけど、中学生の男の子に対してちょっと失礼な気がして疼く手を抑える。
「はい、僕も名前姉に本当の姉になって欲しいです!」
「ちょっ三郎何言って」
「俺も名前さんに姉になって貰いたいな」
「おい二郎っ!?」
『うふふー、2人ともありがとう。お世辞でも照れちゃう』
弟くん達の可愛さで緩みきった顔で返すと、一瞬キョトンとした顔をされた。 え?私何か変なこと言った? よく分からないといった顔で一郎を見るとため息をつかれた。 なんかムカつく。
「あのな二郎、三郎、こいつは少し、いやかなり鈍いからそんなこと言っても分からないし俺がテンパるだけなんだよ……」
『凄い失礼なこと言われてる気がするけど今回は弟くん達に免じて許してあげる!感謝してね一郎、じゃあバイバイ』
「えっ、おい送ってくから待てって!」
後ろで何か言ってる一郎を無視して私は家まで駆け出した。 夜風が体を通り抜けて気持ちいい。
しばらくして、捕まっちゃったけど偶には鬼ごっこもいいよね。 逃げないようにって手を掴まれたのは恥ずかしかったけど。
結局、その日の深夜あの言葉の意味が分かって自分の無知を呪った。
それでも、そんな未来も有りだなって思ったりしたことは一郎には絶対内緒。
簡単に言うと、バンドマンたちが戦う話。 詳しく語ると3時間はかかるのでここでは割愛しておく。
とりあえず、最高なのだ。 V系や和楽器、ロックなど様々なバンドがあって飽きない。 しかも女性バンドもあるので男性にも大人気。
オタクの5人に4人は知っていると言われるほどの知名度。 流石だ。 神か、神なのか。
おっと語りすぎた。 まぁ端的に話すと私は今これに絶賛ハマり中だ。
そして、ついに、ついに今日私はギターを買ってしまった。
ニヤニヤが止まらない。 しかもこれキャラが持ってたギターにそっくりだ。 リサイクルショップで買ったから値段もお手頃。非の打ち所がないとはまさにこのこと。
しかし、これを私がニヤニヤするためだけに持っておくのはもったいない気がする。うーん、どうしよう……あっ!アイツならいける!
『という訳でギター買っちゃった!見て!凄くない?ヤバくない?』
「いきなり名前が家来るとか言うから何かと思ったらそういうことかよ」
『もう本当ヤバイよね、一郎ならこの半端なさ分かってくれると思って!』
語彙力が死んでいるのは自分でもわかる。けれどもこれは仕方ない。一郎だってあの漫画好きだから私の感動を分かってくれるはず‼︎
「いや、凄いけど、 俺は今仕事の時間なんだよ、依頼人来たらどうすんだよ」
『大丈夫、来ない』
「何も大丈夫じゃねぇよ、稼ぎ無くなるじゃねぇか」
『えー、せっかく一郎に見てもらおうと思ったのに』
「本音は?」
『自分の家だと弾いたとき音が漏れそうだけど、ここなら多分大丈夫』
「あぁどうせそんなことだと思ったけどよ」
『だめ?』
はーい、女子の必殺〔上目遣いからの、だめ?〕もうこれは効くね、一郎君ドキドキしちゃうね、なんたって彼女がやってるんだから!
「キモい」
『うわっ、ひどっ!!!』
は? 彼女がサービスしてんだよ? 何がキモいだ、しかも真顔で言うとか。 べ、別に傷ついてなんかいなんだからねっ!ちょっとシュンってしてるだけだからっ!
「はぁ、まぁどーせ帰れったってここで弾くんだろ?」
『え? いいの? ありがとう好き!』
流石一郎! 優しい! 好き、本当に好き!
「っつ、あーもう!お前はこれだから……ったく、分かったよ。じゃあ俺は向こうで色々してるから。ここで弾いとけ」
『うん、ありがとう! 流石一郎、心が広いね』
「あーはいはい、じゃあな」
こういう一郎の優しさが私は好きだ。 ツンデレってやつ? 本人に言っても否定されるだけだけど。
まぁ、もうそんなことどうでもいいや、せっかく、一郎がOKしてくれたんだ。 さっさと練習しよう。
手元の携帯を開いて楽譜を探す。今やハイテクの時代、ネットでキャラソンの楽譜をだすなんて簡単なのだ。 ほら、すぐに見つかる。
『よっし!頑張ろう』
言い忘れていたが私はやれば出来る子なのだ。という訳で、今日一日で絶対にこれを弾けるようにしてみせる!! ソファーに深く腰掛け、スタンバイOK! さぁ練習を始めよう! 譜面を読みながらピックを持つ手を動かしてみる。だけど……
『え、難しすぎません?』
初めから挫折を味わう日が来ようとは思いもしなかった、だが、ここは私名前の名にかけてやってやろうじゃありませんか!
~1時間半経過~
「どーせ名前のヤツもう諦めてんじゃねぇのかな、ちょっと様子見るか」
コンコン
「入るぞ名前、そろそろお前も諦め『ごめん、今集中してるから邪魔しないで』
「お、おうわりぃ」
(あいつが真面目にやってる? しかも集中してる? 明日槍でも降るんじゃねえか?)
さらに1時間経過
「名前、そろそろ終わって『ちょっとやってる途中だから静かにしてて』
「ご、ごめん」
一郎には悪いけど今はギターだ。ようやく掴めてきたからこの感覚を捨てたくない。
さらに30分経過
「お前そろそろ次郎と三郎が帰って『ごめん、少し待って後ちょっと』
「え、あぁ」
(いや、アイツら帰ってきたらまた面倒なことになるし……、なんで俺ん家にいるのにここまで無視されなきゃなんねぇんだよ……)
「おい」
『ぎょあっ』
「変な声だな」
『う、うるさいっ』
いきなり声掛けられたんだからびっくりもするでしょ! てか何?声低すぎるでしょ! 怖い、怖いよ一郎!
『ど、ど、ど、どしたの』
「ここ誰の家?」
『えっ、えっと山田一郎君のお家です』
「だったら少しくらい遠慮してもいいんじゃねぇの?」
『そ、そうだけど……私何かした?』
「ッチ」
うえええ、怒ってる。一郎怒ってる。 私本当に何かしたかな。 やばい、まずい。
「あのさぁ、ギターやりすぎじゃね?」
『え?あ、うるさかった?』
「そういうことじゃねぇよ」
『じゃあどういうこと?』
「だからギターやりすぎ」
ギターやりすぎ? でもうるさい訳じゃないってことは……あ、そうか長居しすぎたのかも。
『ご、ごめん長くいすぎたよね。 すぐ帰るからちょっと待って』
「ったく本当にお前ってやつは……」
『え? なんか言った? ちょっと待ってもう出るから』
「だから、そういうことじゃねぇって」
は? 帰るのも違うと、じゃあ一郎が言ってるのはどういうこと?ハテナマークを頭に浮かべて彼を見るとため息をつきながら徐々に近づいてきた。
『ちょ、ストップ。 なんか怖い!一郎止まって!」
「うるせぇ」
尚も一郎は近づいてくる。 本能的に恐怖。 目がマジなんだよ、無理、私死んじゃう。
「はぁ……」
目の前に仁王立ちした彼は私を見て1つ大きなため息をついた。 え、なんか馬鹿にされてる気がする。 そんなことばっか頭ん中で呟いてると、とうとう一郎が私に手を伸ばした。やべぇ、殺られる。
『ぐえっ』
「ほんと色気のねぇ声だな」
一郎が私を見て手を出したと感じギュッと目を瞑る。その次襲ってきたのは鋭い痛み……ではなく、よろけるような重さだった。
『い、色気!? そんなのい、いらないし。てか、何この状況!! 一郎どいて重いって!』
「うるせぇな、彼氏が彼女のこと抱きしめて何が悪い」
『なっ!?』
重さの原因は一郎が覆いかぶさって来たからだった。 しかも、彼氏と彼女とか、なんか照れるし……顔に血が上ってく。今絶対私の顔赤いじゃんっ! この格好だから見られないのが唯一の救いだけど。
「お前今照れてんだろ」
『う、うるさいって! 大体なんでこんなことしてくんのよ!』
「お前が……から」
『は?なんて言ったの? ちゃんと言って』
「お前が、ギターばっかやってて構ってくれなかったから」
え、何言ってんのこの人。 私がギターをやりすぎて一郎と話さなかったから抱きついてきたってこと? つまり……
『一郎寂しかったの?』
「さ、寂しかったとかじゃねぇし」
『じゃあどういうこと?』
「少しでいいから話したかっつーか……」
え、なんか一郎が可愛い? これはもしかして、もしかすると……
『ねぇ、一郎。 今照れてる?』
「って、照れてねーし」
『嘘だ』
「嘘じゃねーし」
『じゃあなんで耳赤いの?』
「っつ!? もっ元はと言えばお前が悪いんじゃねーか」
あ、デレた。 一郎がデレてる、可愛い。そっと髪の毛に沿わすように頭を撫でてみる。あっ、これ結構フワフワ、癖になりそう。
「名前、何してんだよ」
『一郎が可愛いなーって思って頭撫でてる』
「可愛くねーから」
『でも寂しくて拗ねちゃったんでしょ』
「ちげーし、それはその……」
『下手に言わなくていいって、これからも今まで以上にお喋りするから、ね?』
「……約束な」
『うん。約束』
笑って返すと一郎も笑ったらしかった。 少し体が震えてる。 本当に一郎は一緒にいてて飽きない。 大切な私の彼氏、なんだけど……
『ねぇいつまでこの格好?』
「もうちょい」
『いい加減疲れるんだけど』
「なんならこのままもっと疲れることすっか?」
『弟君たち帰ってくるよ』
「チッ」
一郎はさも残念という顔をしながら私から離れた。 さっさとしてくれたら良かったのに、おかげで腰が痛い。 こんなこと言ったらもっと痛くなることしようとか言うんだろうけど。
もういいや、とりあえず今日は帰ろう。 私は一郎にそう告げて帰ろうとしたした……のに
「いち兄ただいま帰りました!」
「兄ちゃんラノベの新刊買ってきたよ!」
「二郎、今僕はいち兄に帰宅の知らせをしてたの、お前が被せてくるといち兄が返答に困るだろ」
「は?俺は兄ちゃんの好きなラノベの新刊買ってきてんだよ、報告するのが筋ってもんだろーが。 お前の帰宅の知らせよりもこっちの方がよっぽど大事だっつーの」
出た、二郎くんと三郎くん!彼らに会わないようにしてたのにっ!一郎が抱きついてきたせいだ。 恨むぞ、怨念込めた目で彼を見るとまぁまぁ焦ってるようだった。
私も焦ってんだよ、お前が焦るなよ。 私はそんな言葉を飲み込んで覚悟を決めた。 行こう、正面突破だ。
『あ、二郎くん、三郎くんおかえり。 お邪魔してました』
ひょっこり廊下に登場して挨拶をしてみると2人とも目を丸くして驚いた。 ちくしょう、可愛いかよ。 なんだよ、愛くるしいわ。
「名前姉! 来てたんですか!すみません、邪魔しちゃいましたね。 おい二郎1回外でよう」
「あ、名前さん、こんばんは。 兄ちゃんと相変わらずラブラブっすね」
なっ! ラブラブって! 二人にあうといつもこんな風に気を使って貰ったり、からかわれて気恥しくなるから困るのだ。 さらに困ったことに2人は全て善意なのだ。 無下に出来ない。
『あ、外行かなくていいよ、今から帰るとこだから』
「でも名前姉、僕らが帰ってきたから帰るんじゃ」
『そんなことないよ、もう帰るとこだったし。』
「そうですか……」
あれ、三郎くんなんか寂しそう。 これはもうちょっと居た方がいいのかな? でも今更残るとは言えないし……
『また2人がいるときにも来るからね』
「本当ですか?いち兄に申し訳ないですけど、嬉しいです!」
あ、天使だ。 この子、天使だ。可愛い。
『えへへー、ありがとう三郎くん。 本当三郎くんみたいな良い弟欲しいわぁ』
思わず頬が緩む。 頭を撫でたいけど、中学生の男の子に対してちょっと失礼な気がして疼く手を抑える。
「はい、僕も名前姉に本当の姉になって欲しいです!」
「ちょっ三郎何言って」
「俺も名前さんに姉になって貰いたいな」
「おい二郎っ!?」
『うふふー、2人ともありがとう。お世辞でも照れちゃう』
弟くん達の可愛さで緩みきった顔で返すと、一瞬キョトンとした顔をされた。 え?私何か変なこと言った? よく分からないといった顔で一郎を見るとため息をつかれた。 なんかムカつく。
「あのな二郎、三郎、こいつは少し、いやかなり鈍いからそんなこと言っても分からないし俺がテンパるだけなんだよ……」
『凄い失礼なこと言われてる気がするけど今回は弟くん達に免じて許してあげる!感謝してね一郎、じゃあバイバイ』
「えっ、おい送ってくから待てって!」
後ろで何か言ってる一郎を無視して私は家まで駆け出した。 夜風が体を通り抜けて気持ちいい。
しばらくして、捕まっちゃったけど偶には鬼ごっこもいいよね。 逃げないようにって手を掴まれたのは恥ずかしかったけど。
結局、その日の深夜あの言葉の意味が分かって自分の無知を呪った。
それでも、そんな未来も有りだなって思ったりしたことは一郎には絶対内緒。
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