妹と姉の章

 年老いた女は今日、とうとう一生を終えようとしている。
 ベッドに横たわり、ただ天井を見つめる。何ひとつ、悔いはない——心からそう思える人生だった。
 ただ、ひとつだけ心残りがあるとするならば——老婆はベッドのかたわらにいる少女へゆっくりと視線を移した。少女——老婆の姉は、あの頃と変わらない姿のまま微笑みかけた。
「あんたが眠るんなら、あたしもちょっと眠ろうかしら」
 少女は、老婆の眠る狭いベッドに強引に入り込んだ。こんな時までお気楽なんだから、と笑いながら、老婆の意識はついに遠のいていく。
 老婆が穏やかな表情で目を閉じたのを見届けた少女も、おやすみなさいと言って瞼を閉じた。

 ——ベッドの傍らに落ちた小さな瓶。その瓶のラベルには、癖の強い字でこう書かれていた。
"永遠の眠りにつく薬"

 別々の時代、別々の母親から産まれた二人きりの姉妹は、同じ日に眠りについた。——それだけで十分だった。
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