錬金術師はラーメン屋シリーズ

「夜食にラーメンでも食べるか?」
 兄が提案すると、妹は含みのある笑みを浮かべた。
「お兄ちゃん、今日のところは私に任せてよ」
 普段なら料理上手の兄に一任する妹の意外な発言に、兄は眉をひそめる。
「……本当に、任せていいんだな?」
 当然! と鼻息を荒くしながら、妹は使い古した錬金釜を取り出し、使い込まれたテーブルの上にドスンと置いた。
「さ〜て、何味にしよっか?」
「じゃあ味噌……まさかそれで作るのか?」
「うん、そうだけど?」
「だ、大丈夫かぁ?」
「ふっふっふ、まぁ見ててよ」
 妹は自信ありげに言いながら、インスタント麺と水を錬金釜に投げ入れ、蓋を閉めた。
「どれくらいかかるんだ?」
「うーん、砂時計3回分くらい」
「……野菜も入れた方がよかったんじゃないか?」
「え〜野菜?」
「ほら、栄養の偏りが気になるし……」
「も〜しょうがないなぁ」
 そう言って妹は立ち上がり、すたすたと外に出ていった。
 そしてすぐに何か緑色をしたものを持って戻ってきたと思えば、錬金釜の蓋を開けてそのまま放り込んだ。
「え!? えぇっ!? ざ、ざっそ……」
「いいの、ちゃんと食べられるやつ選んできたから」
 兄が困惑していると、錬金釜はグツグツと音を立て始めた。
「うーん、食べられても雑草は雑草なんだけどなぁ」
「いいじゃん。たまには懐かしい味が恋しくなることだってあるでしょ」
 錬金釜からは湯気が立ちのぼり、雑草を入れたとは思えない香ばしい香りを放ちはじめた。
「ははっ、懐かしい味ってなんだよ。まるで雑草を食べたことがあるみたいに」
 兄はまた妹が妙な冗談を言い始めたと思いながら、食器棚から揃いのどんぶりと箸を取り出した。食卓にそれらを置くと、妹はそんな兄を見つめて不敵な笑みを浮かべた。
「……え?」
「あっほら、完成したよ〜」
 意味ありげな表情の妹と目が合って固まっている兄を無視して、妹は錬金釜の蓋を開けた。
 湯気が天井に舞い上がり、部屋中がラーメンの香りに包まれていく。
「ねぇお兄ちゃん! ボーっとしてたら伸びちゃうよ!」
「そ、そうだな! とりあえず話は後だ!」
 兄は我に返ると、慣れた手つきでラーメンを二つのどんぶりに取り分けた。
「ああ、雑草がまるでニラみたいになって……」
「でもおいしそうでしょ?」
 先ほど乱暴に投げ入れられた雑草は、錬金釜の中で立派な具材へと進化を遂げていた。これがあらゆる困難を乗り越えてきた錬金術師の腕前ということなのだろうか。
 妹はふふんと鼻を鳴らすと、兄は早く食べたいといった様子で箸を手に取った。
「ああ、すっごくおいしそうだ。おれの妹はやっぱり天才だな」
「やったぁ〜!」
 妹も兄と同じように箸を手に取ると、二人は顔を見合わせる。
「じゃあ、食べよっか」
「あ、近所迷惑にならないように声抑えめで。いいな?」
「分かってるって。せーの」
「「いただきます」」
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