ポッキーゲーム
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
放課後の青学テニス部。
いつもなら練習の音が響く時間に、部室は妙に静かだった。
その中心で、さくらが嬉しそうにポッキーの箱を掲げていた。
「じゃーん! 今日はポッキーの日だよ!」
「……またそれか」
と、手塚。
しかし声のトーンはどこか諦め気味。
先日の"部室ポッキー事件"がまだ記憶に新しいのだ。
「今日は誰とする気だ?」
「え?誰って……国ちゃんと!」
にっこり笑うさくらに、ほんの一瞬だけ手塚の口元が緩む。
その時――。
「ふん、甘いイベントに浮かれてんじゃねぇか、さくら嬢。」
ドアが勢いよく開く。
金色の髪が夕陽を反射し、
氷帝の跡部景吾が堂々と立っていた。
「跡部くん!? どうしてここに!?」
「たまたま用事で来てみりゃ、面白そうなイベントやってるじゃねぇの」
「……用事?」
「テニス部間の親交だ。お前の監督、了承済みだぜ?」
と、さらりとウインク。
さくらはぽかんと口を開け、
手塚はこめかみを押さえる。
「跡部、ここは部外者立入禁止だ」
「俺様は特別枠だろ?」
「誰が認めた」
「この可愛い子だ」
跡部が指差すと、さくらは慌てて手を振る。
「ち、ちがっ……! ただポッキーを……!」
「ほぉ、ポッキーねぇ。じゃあ勝負するか?」
「勝負?」
「"ポッキーゲーム"ってやつ、俺様にも体験させてみろ」
「はぁぁぁ!?!?」
部室の温度が一瞬で変わる。
さくらは真っ赤、手塚の目は冷たく光った。
「……断る」
「お前に聞いてねぇ、さくら嬢に聞いてんだよ」
跡部が一歩踏み出す。
目の前でポッキーを一本抜き、差し出した。
「さぁ、どっちが折れるか、試してみようぜ」
「え、えぇぇっ!?だ、だめだよそんな……!」
「怖がるな。俺様、優しいからな?」
「跡部」
低い声。
空気が変わった。
さくらがびくっとして振り向くと、
手塚の目がまっすぐ跡部を射抜いていた。
「……それは、俺のだ」
部室が静まり返る。
跡部は数秒、固まった。
そして――。
吹き出した。
「ははっ、冗談だ冗談。さすが手塚、独占欲強ぇな」
「お前が軽口を叩くからだ」
「お前も、顔が真っ赤じゃねぇか?」
さくらはふたりの間をおろおろと見上げ、
「あ、あの、じゃあ三人でポッキー食べよう!」と
強引に割り込んだ。
「……三人で?」跡部が眉を上げる。
「そう! みんなで食べれば楽しいよ!」
「……なるほどな」
跡部は笑って、ポッキーをもう一本咥えた。
「なら、こうだ」
そう言って、さくらの手を取る。
手塚の眉がピクリと動く。
「おい」
「心配すんな、口は近づけねぇよ。ただし――」
跡部はにやりと笑う。
「お前が見てる前で、こうして手は離さないけどな。」
「……跡部」
「おっと、殺気出すな。ほらさくら嬢、こいつ怖ぇだろ?」
「こ、怖くないよ!国ちゃん、優しいもん!」
その一言に、手塚の表情がわずかに緩む。
跡部はそれを見逃さず、
「ふん、勝負ありだな」とポッキーを噛み砕いた。
その日の帰り道。
「跡部くん、悪気なかったんだよ?」と、さくら。
「分かっている」
「でも、国ちゃんが"俺のだ"って言ってくれたとき……ちょっと嬉しかった」
「……言わなければ落ち着かなかった」
「え?」
「お前が笑うたびに、誰かが近づこうとするからな」
その言葉に、さくらの顔が真っ赤になる。
「……国ちゃん、ポッキー、まだあるよ?」
「いらん」
「ほんとに? じゃあ――」
差し出された一本。
そのまま手塚の唇へ。
ぽきっ、と音を立てて。
「……さっきの続きだ」
「えっ?」
「俺も、ちゃんと"記念日"にしておく。」
小さくキスが落ちる。
甘いチョコと、少し苦い独占欲。
それが、ふたりのポッキーの日だった。