ポッキーゲーム
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放課後の部室。
練習が終わって、みんなが帰ったあと。
さくらはカバンの中から細長い箱を取り出した。
「じゃーんっ! 今日は何の日でしょう!」
手塚がノートを閉じながら、眉を少しだけ上げる。
「……何の日だ?」
「11月11日! ポッキーの日だよ!」
笑顔で箱を差し出すさくらに、手塚は一瞬だけ無表情になった。
「……そういう記念日をよく覚えてるな」
「えへへ。だって、甘いの好きなんだもん」
彼女はポッキーを一本抜いて、ぱくっと食べる。
「ほら、国ちゃんも!」
「……俺は遠慮しておく」
「ダメっ! 一緒に食べるのが楽しいんだよ!」
むっとした顔で差し出され、仕方なく手塚も一本取る。
数分後。
「ねぇねぇ、知ってる? "ポッキーゲーム"ってあるんだよ!」
「……聞いたことはある」
「やろっ!」
「断る」
「えぇ~っ!?」
さくらが上目遣いで見上げる。
「国ちゃん、部活のときは真面目なんだから……たまには遊んでもいいでしょ?」
無言。
けれど、視線が一瞬揺れた。
「……一回だけだ」
「やった!」
さくらが嬉しそうにポッキーをくわえて、
その反対側を手塚の前に差し出す。
「はい、どうぞ!」
「……本気でやるのか」
「もちろんっ!」
小さくため息をついて、
手塚はもう一方を口にくわえた。
(近い……!)
さくらの心臓が跳ねる。
少しずつ近づく唇。
チョコの香りと、心拍の音が混ざって――。
ぽきっ。
途中で折れた。
「……あぁっ、残念~!」
さくらが笑いながら言うと、
手塚はわずかに息を吐く。
「やはり、こういう遊びは向いていない」
「もう一回!」
「……は?」
「だって途中で折れちゃったもん!」
抗議の声に、手塚は観念したように目を細める。
「最後だぞ」
「うんっ!」
再挑戦。
今度はお互い慎重に。
さくらの頬がほんのり赤い。
手塚の表情も、どこか硬い。
あと数センチ。
あと一口。
(……どうしよう、これ……!)
視線が合った瞬間、さくらの頭が真っ白になる。
そのまま、ぽきっと音がして――。
今度は、折れなかった。
代わりに、触れた。
チョコの甘さより、
彼の唇の熱のほうがずっと鮮明だった。
一瞬の沈黙。
さくらの顔が真っ赤に染まる。
「く、く、国ちゃん……!」
「……すまない」
手塚も目をそらし、咳払いひとつ。
「……お前が近づくからだ」
「えぇ!?国ちゃんも動いたじゃない!」
「……無意識だった」
その言葉に、さくらは小さく笑って、
口元を押さえたまま言った。
「じゃあ、無意識でも……。"好き"が出ちゃったってこと?」
「……っ」
耳まで真っ赤になった手塚を見て、
さくらは楽しそうに笑った。
帰り際、
さくらはもう一本ポッキーを渡した。
「これ、今日の記念に。次は一緒に食べようね」
「……来年か」
「うん!来年も一緒に!」
窓の外では、
夕焼けがふたりを金色に染めていた。
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