番外編
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夕暮れの校庭。
空が茜に染まり、風がほのかに肌を撫でていた。
部活が終わった後、さくらは荷物を抱えて帰ろうとしていた――。
その時。
「木之本、少し話せるか?」
振り返ると、隣のクラスの男子が立っていた。
どこか緊張したような笑顔で、けれど目の奥には決意がある。
「……ずっと好きだった。オレと付き合ってくれないか」
思わぬ言葉に、さくらの心臓が跳ねた。
「え……あの、わたし……」
返事を探す間もなく、相手が一歩近づいてくる。
「返事は今、聞きたい」
腕を掴まれ、さくらの表情がこわばった。
その瞬間、空気が変わった。
「――悪いが、こいつは俺と付き合っている」
低く、鋭い声。
驚いて振り返った先に、手塚が立っていた。
真っすぐな瞳が相手を射抜く。
「て、手塚……先輩?」
男子が戸惑う間に、
手塚はさくらの腕を自分の方へ引き寄せた。
その仕草は静かで、けれど誰にも割り込めない確かな力があった。
「……そういうことだ。悪いな」
短く言い残し、手塚はさくらを抱き寄せたまま、その場を離れた。
足早に歩く彼の背中越しに、さくらは胸の鼓動がまだ早いことに気づく。
人気のない並木道まで来ると、手塚はようやく立ち止まった。
抱く腕の力が少しだけ強まる。
「国ちゃん?」
小さく呼ぶと、彼は目を伏せたまま、かすかに息を吐いた。
「攫われるかと思った」
その声は震えていて、いつもの冷静さが嘘のようだった。
さくらは驚き、そして優しく笑った。
「そんなわけないよ。
わたしは、国ちゃんの隣がいいの」
その言葉に、手塚は彼女の額にそっと唇を落とした。
「……もう、離さない」
夕陽の残光の中で、二人の影が寄り添って溶けていった。
日はすっかり落ちて、街灯のオレンジ色が道を照らしていた。
手塚と並んで歩く帰り道。
さくらは何度もちらりと横顔を見た。
沈黙が続いていた。
いつもなら静けさが心地いいのに、
今夜ばかりは少し落ち着かない。
さくらは両手で鞄を抱えながら、そっと切り出した。
「……国ちゃん、怒ってる?」
彼は一瞬だけ視線を落とし、首を横に振った。
「怒ってない。ただ――」
短く息をつき、言葉を探すように歩を止めた。
「俺は、自分でも驚くほど焦った」
「焦った?」
「お前が誰かに触れられて、困ってる顔をしてた。
それを見た瞬間、頭の中が真っ白になった」
その言葉に、さくらの胸がきゅっと締め付けられる。
彼の声は低くて穏やかだけど、隠しきれない感情がにじんでいた。
「……国ちゃんが来てくれて、安心したよ」
さくらは小さく笑いながら言った。
「怖かったけど、すぐに"助けてくれる"ってわかった」
そう言って、彼の袖をちょんとつまんだ。
手塚がその仕草に気づき、ようやく表情を緩める。
「……お前は本当に、俺の理性を試す」
その呟きがあまりに真剣で、さくらは思わず吹き出してしまった。
「それって誉め言葉?それとも警告?」
「……どちらでもない。けれど、これだけは言える」
手塚は足を止め、夜風に揺れる髪を指でそっと払った。
そのまま、優しく頬に触れる。
指先が少しだけ冷たい。
「お前を失いたくない」
胸の奥に響くその一言に、さくらは息を呑んだ。
目の奥が熱くなり、気づけば彼の制服の裾をぎゅっと握っていた。
「……大丈夫だよ。どこにも行かない。ちゃんと、ここにいるから」
さくらの言葉に、手塚はふっと目を細め、
額を彼女の額にそっと重ねた。
街灯の光が二人を包む。
風が、桜の花びらのように舞った。
「……帰るか」
「うん」
並んで歩きだす二人の背中は、どこか穏やかであたたかかった。
さくらはそっと彼の頬を指でつん、と触れながら笑う。
「国ちゃん、さっきの"攫われるかと思った"って言葉、
ちょっとカッコ良かったよ?」
「……言わないでくれ」
そう言いながらも、手塚の耳はほんのり赤く染まっていた。
空が茜に染まり、風がほのかに肌を撫でていた。
部活が終わった後、さくらは荷物を抱えて帰ろうとしていた――。
その時。
「木之本、少し話せるか?」
振り返ると、隣のクラスの男子が立っていた。
どこか緊張したような笑顔で、けれど目の奥には決意がある。
「……ずっと好きだった。オレと付き合ってくれないか」
思わぬ言葉に、さくらの心臓が跳ねた。
「え……あの、わたし……」
返事を探す間もなく、相手が一歩近づいてくる。
「返事は今、聞きたい」
腕を掴まれ、さくらの表情がこわばった。
その瞬間、空気が変わった。
「――悪いが、こいつは俺と付き合っている」
低く、鋭い声。
驚いて振り返った先に、手塚が立っていた。
真っすぐな瞳が相手を射抜く。
「て、手塚……先輩?」
男子が戸惑う間に、
手塚はさくらの腕を自分の方へ引き寄せた。
その仕草は静かで、けれど誰にも割り込めない確かな力があった。
「……そういうことだ。悪いな」
短く言い残し、手塚はさくらを抱き寄せたまま、その場を離れた。
足早に歩く彼の背中越しに、さくらは胸の鼓動がまだ早いことに気づく。
人気のない並木道まで来ると、手塚はようやく立ち止まった。
抱く腕の力が少しだけ強まる。
「国ちゃん?」
小さく呼ぶと、彼は目を伏せたまま、かすかに息を吐いた。
「攫われるかと思った」
その声は震えていて、いつもの冷静さが嘘のようだった。
さくらは驚き、そして優しく笑った。
「そんなわけないよ。
わたしは、国ちゃんの隣がいいの」
その言葉に、手塚は彼女の額にそっと唇を落とした。
「……もう、離さない」
夕陽の残光の中で、二人の影が寄り添って溶けていった。
日はすっかり落ちて、街灯のオレンジ色が道を照らしていた。
手塚と並んで歩く帰り道。
さくらは何度もちらりと横顔を見た。
沈黙が続いていた。
いつもなら静けさが心地いいのに、
今夜ばかりは少し落ち着かない。
さくらは両手で鞄を抱えながら、そっと切り出した。
「……国ちゃん、怒ってる?」
彼は一瞬だけ視線を落とし、首を横に振った。
「怒ってない。ただ――」
短く息をつき、言葉を探すように歩を止めた。
「俺は、自分でも驚くほど焦った」
「焦った?」
「お前が誰かに触れられて、困ってる顔をしてた。
それを見た瞬間、頭の中が真っ白になった」
その言葉に、さくらの胸がきゅっと締め付けられる。
彼の声は低くて穏やかだけど、隠しきれない感情がにじんでいた。
「……国ちゃんが来てくれて、安心したよ」
さくらは小さく笑いながら言った。
「怖かったけど、すぐに"助けてくれる"ってわかった」
そう言って、彼の袖をちょんとつまんだ。
手塚がその仕草に気づき、ようやく表情を緩める。
「……お前は本当に、俺の理性を試す」
その呟きがあまりに真剣で、さくらは思わず吹き出してしまった。
「それって誉め言葉?それとも警告?」
「……どちらでもない。けれど、これだけは言える」
手塚は足を止め、夜風に揺れる髪を指でそっと払った。
そのまま、優しく頬に触れる。
指先が少しだけ冷たい。
「お前を失いたくない」
胸の奥に響くその一言に、さくらは息を呑んだ。
目の奥が熱くなり、気づけば彼の制服の裾をぎゅっと握っていた。
「……大丈夫だよ。どこにも行かない。ちゃんと、ここにいるから」
さくらの言葉に、手塚はふっと目を細め、
額を彼女の額にそっと重ねた。
街灯の光が二人を包む。
風が、桜の花びらのように舞った。
「……帰るか」
「うん」
並んで歩きだす二人の背中は、どこか穏やかであたたかかった。
さくらはそっと彼の頬を指でつん、と触れながら笑う。
「国ちゃん、さっきの"攫われるかと思った"って言葉、
ちょっとカッコ良かったよ?」
「……言わないでくれ」
そう言いながらも、手塚の耳はほんのり赤く染まっていた。
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