番外編
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お弁当を食べた後、さくらは空になった重箱を膝に置いて、ふぅっと一息。
横で手塚が水筒の蓋を開けて、お茶を注いでくれる。
「ありがとう、国ちゃん」
「当たり前だ。さくらが作ってくれたからな。さくらが作る弁当はどれも別格だからな」
手塚にそう言われ、さくらの頬が赤く染まる。
ほんの些細なやり取りなのに、さくらの胸がきゅんと締め付けられる。
照れて頬を染めながらも、嬉しくて仕方がない。
しろちゃんはすでに満腹モードで、芝生の上にごろりと横になり、尻尾をぱたぱた。
「二人とも、ラブラブしてればいいだろ」なんてぼやくけど、何処か満足そう。
さくらは少し躊躇したあと、小さな声で言った。
「……国ちゃん、誕生日、楽しい?」
手塚はその問いにまっすぐな瞳で答える。
「最高だ。お前と一緒にいる。それだけで十分だ」
「……っ!」
思わず両手で顔を隠してしまうさくら。
耳まで真っ赤だ。
「……ほんとに、国ちゃんは、そういうこと……急に言うんだから」
「事実を言っただけだ」
照れるさくらと真顔で言い切る手塚。
その温度差がまた胸をドキドキさせて、さくらは彼の腕にそっともたれかかる。
「……もうちょっとだけ、このままでもいい?」
「もちろんだ」
木漏れ日の下、寄り添うふたり。
手を重ねると、心臓の鼓動まで重なり合うように響いて―――。
さくらは目を閉じ、心の中で呟いた。
―――国ちゃんといる時間が、わたしにとってのいちばんのプレゼントだよ。
さくらと手塚が寄り添っていると、さくらのカード達がふわりと光を放った。
特に、手塚専用カード達は一斉に現れて、キラキラと宙に舞いながら祝福の気配を漂わせる。
「え?」
さくらが目を丸くしていると、カード達の声が心に響いてきた。
《庇護》 ― 「主よ、大切な者を守り続けよ。今日はそのための誕生日だ」
《加護》 ― 「お前たちだけを護る」
《特別》 ― 「さくら様と国ちゃん、二人だけの世界だ」
《特権》 ― 「この瞬間に許されるのは、お前たちだけ」
《威厳》 ― 「無粋なものは立ち入れぬ……」
《忠愛》 ― 「国ちゃんを支えるさくら様、さくら様を護る国ちゃん……揺るがぬ絆だ」
《溺愛》 ― 「もっと、もっと……愛を重ねていけ……」
その声にさくらは思わず瞳を潤ませ、手塚の腕をぎゅっと握った。
「……カード達まで。……国ちゃん、お祝いしてくれてる」
「……あぁ」
手塚の瞳は、珍しく優しく揺らいでいる。
彼はカードの存在を知ってはいたが、こんな風に直接「祝福」を告げられるとは思ってもいなかった。
「……お前は本当に……特別だな」
「ち、違うよ!特別なのは国ちゃんだもん」
言い返すさくらの声は涙と笑顔で震えていた。
しろちゃんは横でぱちぱちと小さく前足を叩いて「おめでとー」
と茶化し、二人をさらに赤くさせた。
七枚のカードも一斉に煌めき、祝福の鐘のような音が響き渡る。
二人の誓いを守るように。
――――
「そろそろ帰るか」
「うん!」
さくらは重箱とレジャーシートをバスケットに入れて、
手塚の手を握って歩き出す。
横ではしろちゃんがぽわーんとしながら、
「次はケーキが待ってる~!」
とはしゃいでいた。
さくらは真っ赤になって、「しろちゃんは食べすぎ!!」
と呆れて言うのだった。
手塚の家に着くと、さくらは手塚の部屋に案内される。
「ケーキとお茶を持ってくるから待っててくれ」
「うん」
そう言われて、ちょこんと座って待つさくら。
階段ですれ違った手塚の母、リビングで新聞を読んでいた祖父にも挨拶をし、
ドキドキしている。
そこへ手塚がケーキと飲み物を持って現れた。
「待たせたな」
「ううん」
そう言って手塚はケーキをテーブルに置くと、腰を落とした。
しろちゃんの目は、もうケーキで輝いていた。
さくらがケーキを箱から取り出すと、そこには「国ちゃん、お誕生日おめでとう」のチョコレートのプレートが。
さくらは頬を染めながら言った。
「へへ、早起きしてお弁当と一緒に作ったの」
「これを、さくらがか…?」
「うん」
「ボクが味を保証するよ!味見したもん!」
ふにゃっと笑うさくら。
手塚は驚きで瞬きをするばかりだった。
「俺の為にこんなに……ありがとう、さくら」
そう言って手塚はさくらの頭を撫でる。
「早く食べよー!」
しろちゃんがさくら達を急かす。
「もう、待ってよ、しろちゃん。ろうそく消すのが先!」
さくらはちょっと頬を膨らませながら、ろうそくをケーキに刺した。
「はい、国ちゃん。お誕生日おめでとう!」
にこっとさくらに言われ、手塚はろうそくの灯火を消す。
パチパチとさくらとしろちゃんから拍手が漏れる。
ケーキをとりわけするさくら。
「せっかくだから、お母さんとおじいさん、あとお父さんにも食べてもらいたいな」
「わかった。母さんたちの分は俺が持っていく」
わきあいあいと話しながら、ケーキを食べるさくらと手塚としろちゃん。
「美味い!」
手塚が一口食べて、そう言ってくれたことにさくらの笑顔がぱぁぁぁっと明るくなる。
「早起きして頑張った甲斐があったよぉ……」
その一言でさくらは嬉しそうに目を潤ませた。
「あっ、そうだ。プレゼントあるんだ」
さくらは鞄からプレゼントの包みを取り出して、手塚に差し出した。
「はい、国ちゃん。お誕生日おめでとう」
手塚は照れ隠しに眼鏡を直すが、耳まで真っ赤だった。
プレゼントを受け取り、包みを開くと中には実用的なテニス用のリストバンドと……。
お揃いの小さなキーホルダーが入っていた。
「……これも」
「うん、国ちゃんと一緒につけたいなって」
さくらが言った瞬間、もう顔は笑顔の真っ赤でふにゃふにゃ状態。
手塚は言葉少なに、でも確かに微笑む。
「……一番のプレゼントは、さくらと過ごせることだ」
「えっ……」
勘違いして固まって、さくらはさらに耳まで真っ赤になる。
―――その瞬間。
空気がキラキラ光り、七大手塚専用カードがふわりと舞い降りる。
「国ちゃんに祝福を!」
「国ちゃんは特別!」
「国ちゃんの誕生日を邪魔するものは許さぬ!」
「ちょ、ちょっとみんな、恥ずかしいからやめて―――!」
「だが、悪くない」
甘いケーキの時間は、カードの騒がしい祝福で包まれていく。
カードの一枚が唐突に言い始めた。
「我らも国ちゃんにプレゼントを贈ろう」
「え?」
その言葉にさくらが固まった。
NURTURE(庇護) ― 「我は国ちゃんの体調が常に整うように疲労回復バフを」
FAVOR(加護) ― 「我は試合などで絶対に守れる力を」
EXCLUSIVE(特別)」 ― 「我は国ちゃんとさくら様スイートルーム作成」
PRIVILEGE(特権) ― 「特別な日には、無条件でさくら様と二人きりに」
COURTESY(威厳) ― 「周りを黙らせるオーラを国ちゃんに」
LOYALTY(忠愛) ― 「怪我をしてもすぐに癒えるように」
「AFFECTION(溺愛)」 ― 「どんな時も愛を証明できるように」
「な、なんか……カードのプレゼントのほうが豪華すぎるよ!ってか、スイートルームって何!?」
「……いや。俺にはお前がいてくれるだけで十分だ」
さくらはまた誤解して、赤面する。
「さくら、俺からもお返ししよう」
「えっ、お返し?今日は国ちゃんの誕生日だよ?」
首を傾げたさくらを手塚は抱き寄せた。
次の瞬間、唇と唇が重なる。
「……!」
驚きはしたものの、目を閉じて手塚のキスを受け入れるさくら。
「俺にとっては、こうしてお前と一緒にいる時間が一番の贈り物だ。
だから……これは、そのお返しだ」
「く、国ちゃんのばかぁぁぁぁぁぁぁぁ」
両手で顔を覆って、真っ赤になるさくら。
「おおーっ!青春だね!!ご馳走様!!」
「国ちゃん最高!」
「もっとやれ!」
甘いケーキの時間は、騒がしい中に溶けていったのだった。