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昼食を終えた青学テニス部。
そのグラウンドには、心地よい風が吹き抜けていた。
テニスボールが軽やかに弾み、掛け声が響く。
「越前、もう一本!」
手塚の指示に、リョーマが鋭いサーブを打ち返す……が。
「……っ!」
着地の瞬間、バランスを崩し、足首を捻った。
ボールが転がり、リョーマは膝をついた。
「越前!?」
「大丈夫か!?」
大石と菊丸が慌てて駆け寄る。
「救急箱を!」
手塚の指示に、さくらは救急箱を持ってリョーマに近づいた。
「大丈夫?」
リョーマは顔をしかめている。
「このくらい、大丈夫」
そう言いながらも、足を庇っている。
その様子を見て、さくらの胸がきゅっと痛んだ。
―――痛そう……。すぐに治してあげられたら……。
「ちょっと見せてね」
救急箱を置き、さくらは手をリョーマの捻挫した足首に手を当てた。
不思議そうにさくらを見つめるリョーマ。
周りではまだざわざわと部員たちが集まっている。
「……HEALING」
気づけば唱えていた。
あの夢を見た、翌日に捕まえたカード。
『HEALING』
誰にも聞こえない声で、そっと。
ふわり、と淡い光が生まれる。
手のひらから優しい風が流れ出し、リョーマの足首を包み込む。
その光はほんの数秒で消えた。
「あれ?」
リョーマが瞬きをして足首を動かす。
痛みが、ない。
さっきまで腫れていたはずの場所も、もう元通り。
「痛く……ないっす」
「よかった……!」
さくらは安堵の笑みを浮かべた。
だが―――リョーマの視線が、じっと彼女の手元を見ていたのだ。
今の"光"を確かに見ていたのだ。
一瞬、二人の間に沈黙が落ちる。
「……今の、何?」
リョーマの声は小さいけれど、確かな疑問を含んでいる。
さくらはハッとして、手をひっこめた。
そして、人差し指を唇に当てて微笑む。
「秘密」
その時だった。
「越前!無理はするな、今日は上がれ!」
と、手塚の声が飛んできた。
助け舟のようなその声に、さくらは思わずほっと息をついた。
「じゃあ、また明日」
そう言って、リョーマは立ち上がりながら。
ちらりとさくらを見て、――意味深に口の端を上げた。
「……あんた、やっぱり変わってるね」
そして背を向け、ラケットを担いで歩き去っていく。
さくらはその背中を見送りながら、
胸の奥で小さく呟いた。
―――……バレちゃった、かも。
風が優しく吹き抜け、桜の花びらが二人の間を舞った。
―――――
夕暮れに差し掛かったテニスコート。
さくらは昼間のリョーマの件を思い出し、
休憩時間にすぐに『HEALING』が使えるようにスタンバイしていた。
「『HEALING』準備完了っと」
淡い光が一瞬だけ灯る。
その光はすぐに消えるけれど、
さくらの中では魔力が温かく循環しているのが分かった。
―――よし。これで誰かが怪我しても、すぐに使える……!
しろちゃんが彼女の肩にとまって首を傾げる。
「また練習してたの?」
「うん。みんな頑張ってるし、国ちゃんだって無理しちゃうし……
すぐに治せるようにしておきたいの」
「ふふ、さくららしいね。優しい魔法の使い方だよ」
「えへへ」
さくらは照れくさそうに笑って、ボール箱を片付け始めた。
―――『HEALING』って便利だなぁ。でも、ちゃんと"必要な時"だけ使おう
魔法を常に構えている。
それは戦うためじゃなく、守るための癖。
それが木之本桜らしい"備え"だった。
このまま、冷やかしもなくなってくれたらなぁ。
さくらはテニスコートの先を見つめて思いにふけるのだった。
休日の部活も終盤。
夕方の光が差し込む青学テニスコート。
練習も終盤、部員たちが汗を拭いながらボールを拾っている。
その中で、手塚は一人、壁打ちを続けていた。
「手塚、もう休もうよ~!」
と、菊丸が。
「無理をするな、手塚」
と、大石も声をかける。
彼はいつも通り静かに、
「あと少しだ」
とだけ言った。
―――その瞬間。
ボールを打った直後、手塚の表情が僅かに歪む。
「っ……」
大石が眉を上げる。
「今の、変な音しなかった?」
不二がすぐに気づいて駆け寄る。
「手塚……手首痛めたんじゃ?」
その言葉に、さくらの胸がどきんと跳ねた。
――――やっぱり、無理してたんだ……!
彼女はタオルを置いて、迷わず駆け寄った。
「国ちゃん!」
「……大丈夫だ。少し違和感があるだけだ」
平然を装っているけれど、顔色が少し青い。
―――ー大丈夫って言っても、痛そう……
さくらは胸の前で手を重ね、小さく息を吸い込む。
―――準備しておいたんだもん……今だよ!
さくらはそっと手塚の手首を包み込んだ。
「『HEALING』……」
小さい声で確かに呟いた。
ふわり、と桜色の光が舞う。
手塚の左手を包むように、柔らかな風が渦を描いた。
その光は、彼の手首を優しくなでるように広がっていく。
周囲の部員たちは一瞬目を見張ったが、
光がすぐに消えると、不思議と空気は静けさを取り戻した。
手塚は軽く手を握ってみる。
痛みが、消えていた。
腫れも、違和感も、もうない。
「さくら……」
「ひどくなる前で良かったよ……」
ほっとした表情のさくらに、手塚は一瞬だけ目を細め、穏やかに微笑んだ。
「……ありがとう。助かった」
「ううんっ、わたし、国ちゃんが痛いの嫌だもん」
にこっと笑う彼女の姿に、
手塚の頬がほんのり僅かに赤く染まった。
「……まったく、お前は……」
小さく呟きながら、彼は桜の花びらを一枚、
彼女の髪からそっと取った。
「て、手塚……あの、それ、完全に恋人ムーブは!?」
「国ちゃん呼びだけじゃなくてスキンシップもかぁ~!?」
「青春って、まぶしいな……」
さくらは真っ赤になって、
「ち、違うのっ!今のは怪我を見ただけで……!」
と慌てる。
でも、手塚はそんな部員たちを一瞥して、
「静かにしろ」
その一言で、コートはしんと静まり返った
さくらは思わず吹き出して、
「もう……国ちゃんのそういうとこ、ずるいよ」
と笑った。
夕焼けの中、二人の笑い声と桜の風が、
コートを優しく包み込んでいた。
そのグラウンドには、心地よい風が吹き抜けていた。
テニスボールが軽やかに弾み、掛け声が響く。
「越前、もう一本!」
手塚の指示に、リョーマが鋭いサーブを打ち返す……が。
「……っ!」
着地の瞬間、バランスを崩し、足首を捻った。
ボールが転がり、リョーマは膝をついた。
「越前!?」
「大丈夫か!?」
大石と菊丸が慌てて駆け寄る。
「救急箱を!」
手塚の指示に、さくらは救急箱を持ってリョーマに近づいた。
「大丈夫?」
リョーマは顔をしかめている。
「このくらい、大丈夫」
そう言いながらも、足を庇っている。
その様子を見て、さくらの胸がきゅっと痛んだ。
―――痛そう……。すぐに治してあげられたら……。
「ちょっと見せてね」
救急箱を置き、さくらは手をリョーマの捻挫した足首に手を当てた。
不思議そうにさくらを見つめるリョーマ。
周りではまだざわざわと部員たちが集まっている。
「……HEALING」
気づけば唱えていた。
あの夢を見た、翌日に捕まえたカード。
『HEALING』
誰にも聞こえない声で、そっと。
ふわり、と淡い光が生まれる。
手のひらから優しい風が流れ出し、リョーマの足首を包み込む。
その光はほんの数秒で消えた。
「あれ?」
リョーマが瞬きをして足首を動かす。
痛みが、ない。
さっきまで腫れていたはずの場所も、もう元通り。
「痛く……ないっす」
「よかった……!」
さくらは安堵の笑みを浮かべた。
だが―――リョーマの視線が、じっと彼女の手元を見ていたのだ。
今の"光"を確かに見ていたのだ。
一瞬、二人の間に沈黙が落ちる。
「……今の、何?」
リョーマの声は小さいけれど、確かな疑問を含んでいる。
さくらはハッとして、手をひっこめた。
そして、人差し指を唇に当てて微笑む。
「秘密」
その時だった。
「越前!無理はするな、今日は上がれ!」
と、手塚の声が飛んできた。
助け舟のようなその声に、さくらは思わずほっと息をついた。
「じゃあ、また明日」
そう言って、リョーマは立ち上がりながら。
ちらりとさくらを見て、――意味深に口の端を上げた。
「……あんた、やっぱり変わってるね」
そして背を向け、ラケットを担いで歩き去っていく。
さくらはその背中を見送りながら、
胸の奥で小さく呟いた。
―――……バレちゃった、かも。
風が優しく吹き抜け、桜の花びらが二人の間を舞った。
―――――
夕暮れに差し掛かったテニスコート。
さくらは昼間のリョーマの件を思い出し、
休憩時間にすぐに『HEALING』が使えるようにスタンバイしていた。
「『HEALING』準備完了っと」
淡い光が一瞬だけ灯る。
その光はすぐに消えるけれど、
さくらの中では魔力が温かく循環しているのが分かった。
―――よし。これで誰かが怪我しても、すぐに使える……!
しろちゃんが彼女の肩にとまって首を傾げる。
「また練習してたの?」
「うん。みんな頑張ってるし、国ちゃんだって無理しちゃうし……
すぐに治せるようにしておきたいの」
「ふふ、さくららしいね。優しい魔法の使い方だよ」
「えへへ」
さくらは照れくさそうに笑って、ボール箱を片付け始めた。
―――『HEALING』って便利だなぁ。でも、ちゃんと"必要な時"だけ使おう
魔法を常に構えている。
それは戦うためじゃなく、守るための癖。
それが木之本桜らしい"備え"だった。
このまま、冷やかしもなくなってくれたらなぁ。
さくらはテニスコートの先を見つめて思いにふけるのだった。
休日の部活も終盤。
夕方の光が差し込む青学テニスコート。
練習も終盤、部員たちが汗を拭いながらボールを拾っている。
その中で、手塚は一人、壁打ちを続けていた。
「手塚、もう休もうよ~!」
と、菊丸が。
「無理をするな、手塚」
と、大石も声をかける。
彼はいつも通り静かに、
「あと少しだ」
とだけ言った。
―――その瞬間。
ボールを打った直後、手塚の表情が僅かに歪む。
「っ……」
大石が眉を上げる。
「今の、変な音しなかった?」
不二がすぐに気づいて駆け寄る。
「手塚……手首痛めたんじゃ?」
その言葉に、さくらの胸がどきんと跳ねた。
――――やっぱり、無理してたんだ……!
彼女はタオルを置いて、迷わず駆け寄った。
「国ちゃん!」
「……大丈夫だ。少し違和感があるだけだ」
平然を装っているけれど、顔色が少し青い。
―――ー大丈夫って言っても、痛そう……
さくらは胸の前で手を重ね、小さく息を吸い込む。
―――準備しておいたんだもん……今だよ!
さくらはそっと手塚の手首を包み込んだ。
「『HEALING』……」
小さい声で確かに呟いた。
ふわり、と桜色の光が舞う。
手塚の左手を包むように、柔らかな風が渦を描いた。
その光は、彼の手首を優しくなでるように広がっていく。
周囲の部員たちは一瞬目を見張ったが、
光がすぐに消えると、不思議と空気は静けさを取り戻した。
手塚は軽く手を握ってみる。
痛みが、消えていた。
腫れも、違和感も、もうない。
「さくら……」
「ひどくなる前で良かったよ……」
ほっとした表情のさくらに、手塚は一瞬だけ目を細め、穏やかに微笑んだ。
「……ありがとう。助かった」
「ううんっ、わたし、国ちゃんが痛いの嫌だもん」
にこっと笑う彼女の姿に、
手塚の頬がほんのり僅かに赤く染まった。
「……まったく、お前は……」
小さく呟きながら、彼は桜の花びらを一枚、
彼女の髪からそっと取った。
「て、手塚……あの、それ、完全に恋人ムーブは!?」
「国ちゃん呼びだけじゃなくてスキンシップもかぁ~!?」
「青春って、まぶしいな……」
さくらは真っ赤になって、
「ち、違うのっ!今のは怪我を見ただけで……!」
と慌てる。
でも、手塚はそんな部員たちを一瞥して、
「静かにしろ」
その一言で、コートはしんと静まり返った
さくらは思わず吹き出して、
「もう……国ちゃんのそういうとこ、ずるいよ」
と笑った。
夕焼けの中、二人の笑い声と桜の風が、
コートを優しく包み込んでいた。