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式を終えた校門前。
さくらは新しい制服の袖をぎゅっと握りしめながら、
落ち着かない様子で誰かを待っていた。
「国ちゃん」
入学式の時の手塚もカッコよかったななんて頬を染める。
人の波が途切れたころ、ようやく見慣れた背中が現れる。
手塚国光だった。
「待たせたな」
短くそう言うと、彼は少し歩みを止め、さくらに視線を向ける。
「……部活、見ていくか?」
「えっ、いいの!?」
ぱぁっと顔を輝かせるさくら。
「仮入部までまだあるが……見学くらいなら構わん」
二人は並んでテニスコートへ向かう。
そこでは、すでに部員たちが汗を飛ばしながら練習に励んでいた。
鋭いサーブ、軽やかなラリー、力強い声。
「わぁ……!」
さくらは思わず声を漏らす。
「みんなすごい……!一生懸命で、かっこいい……!」
コートの外から、その様子を夢中で見守るさくらの横顔を、
手塚は横目でちらりとみる。
その目には、何処か誇らしげな光があった。
少し離れたところで、不二周助がラケットを持ったまま歩いてくる。
ちらりと視線を向け、さくらを見つけると、目を細めた。
「……あれ?あの子……」
何も続けず、ただ穏やかに微笑んだ。
春風が桜の花びらをさらっていき、
さくらの胸は仮入部の日への期待でいっぱいになっていた。
――――
放課後の陽射しは、昼間よりも柔らかく、
桜並木の道を淡い金色に染めていた。
部活帰りの生徒たちが遠ざかり、
道にはもう二人しかいない。
風に揺れる花びらが、まるで祝福のように舞っていた。
手塚が立ち止まり、振り返る。
「……さくら」
その声は、いつもよりわずかに低く、真剣だった。
「俺が小学校を卒業した時のこと、覚えてるか?」
さくらは驚いたように目を瞬き、それから小さく笑った。
「うん。覚えてる。『わたしが中学生になったら付き合って』って……」
頬を染めて真っすぐに手塚を見つめるさくら。
手塚は静かに頷く。
そして、真正面からその瞳を見つめた。
「改めて言う。……お前が好きだ」
風が一瞬止み、世界がその言葉だけを残したように感じる。
「これからは、恋人として付き合ってほしい」
その言葉にさくらは大きく頷いた。
「……うん!」
さくらの瞳に涙が光り、頬に笑顔が弾けた。
「喜んで!わたしも、国ちゃんが大好き!」
最後の言葉は、もう堪えきれなかった。
さくらは一歩駆け寄り、その胸にぎゅっと抱き着く。
手塚の腕がためらいがちに、それでもしっかりとさくらを包んだ。
桜の花びらが二人の肩に降り積もり、約束の証のように淡く輝いていた。
―――――
その夜。
入学式も終わり、放課後に交わした約束の余韻がまだ胸の奥で温かく残っていた。
机の上にはさくらと国ちゃんの『一緒日記』。
ページの端に桜のシールを貼りながら、
さくらは楽しげにペンを走らせる。
『今日は国ちゃんと"正式に"恋人になった日。
夢みたいに嬉しくて、ずっと笑ってばっかりだった。
それから国ちゃんに桜のストラップももらったの。
部活も見学させてくれた。みんなかっこよかった。
わたし、テニス部のマネージャーになるんだ』
「ねえ、しろちゃん」
ベッドの上で白い小さな『ルミネル』。
通称『しろちゃん』がふわふわ浮かぶ。
「んー?どうしたの、さくら?」
「わたし、本当に幸せ……。
国ちゃんがいるだけで、胸がポカポカするの」
「うふふ、それが恋ってやつだねぇ」
しろちゃんのからかうような声に、さくらは頬を赤くして笑った。
日記を書き終えると、ライトを消して、毛布の中に潜り込む。
そのまま、幸せそうな表情で、ゆっくりと眠りについた。
静かな闇の中。
カチ、カチ、と時計の針の音が響く。
気が付くと、さくらは巨大な時計の歯車の上に立っていた。
足元を金色の光が走り、空には星々が輝いている。
目の前には――宙に浮かぶ一本の鍵。
「なんだろう……鍵……?」
そっと手を伸ばすと、鍵は優しく光りだし、
ふわりと羽根を広げるように形を変えていく。
まばゆい光の中から、一冊の本が現れた。
表紙には淡く輝く文字で――。
『CLEAR』
「……クリアカード……」
夢の中でさくらがその名を呟くと、
歯車が静かに回り始め、眩い光に包まれていった。
鳥の声が聞こえる。
ゆっくりと瞼を開けると、さくらの手には夢の中で出てきた鍵が握られていた。
「……夢じゃなかったの?」
隣では、しろちゃんがすやすやと丸くなって眠っている。
その足元――そこには、夢で見たあの
『CLEAR』と書かれた本が、
柔らかい朝の光を受けて静かに佇んでいた。
さくらはゆっくりと身体を起こした。
夢の中の鍵を見つめながら、小さく息を飲む。
「……本当に、出てきたんだ……」
朝の光がカーテンの隙間から差し込み、
枕元の『CLEAR』と書かれた本を照らす。
表紙の桜の模様が、まるで呼吸をするように淡く光っていた。
その時。
「ん……」
小さな声が布団の中から漏れる。
白い羽根のような光がふわりと舞い、
しろちゃんが瞬きをしながら浮かび上がった。
「おはよう、さくら……」
寝ぼけた声で欠伸をしながら、
ふと視線を落としたしろちゃんの目がすぐに見開かれる。
「それ……まさか……!」
さくらは頷く。
「夢で見たの。歯車の中で……この本と、夢の中の鍵が輝いて……」
しろちゃんはしばらく黙ってその本を見つめていたが、
やがて穏やかに微笑んだ。
「……また始まるんだね、さくら」
「えっ?」
「君の新しい物語が。
カードが静かに眠りを終えて――
"夢"が、次の"願い"を形にしようとしてる」
さくらの胸がきゅっと高鳴った。
昨日までの幸せな日常が、
今、光の中で少しずつ"魔法の現実"へと変わっていく。
「……うん」
さくらは小さく笑い、夢の中の鍵を抱きしめた。
「何があっても、国ちゃんは絶対に守る」
朝の風がカーテンを揺らし、
その音がまるで『頑張って』と背中を押すように優しく輝いていた。
さくらは新しい制服の袖をぎゅっと握りしめながら、
落ち着かない様子で誰かを待っていた。
「国ちゃん」
入学式の時の手塚もカッコよかったななんて頬を染める。
人の波が途切れたころ、ようやく見慣れた背中が現れる。
手塚国光だった。
「待たせたな」
短くそう言うと、彼は少し歩みを止め、さくらに視線を向ける。
「……部活、見ていくか?」
「えっ、いいの!?」
ぱぁっと顔を輝かせるさくら。
「仮入部までまだあるが……見学くらいなら構わん」
二人は並んでテニスコートへ向かう。
そこでは、すでに部員たちが汗を飛ばしながら練習に励んでいた。
鋭いサーブ、軽やかなラリー、力強い声。
「わぁ……!」
さくらは思わず声を漏らす。
「みんなすごい……!一生懸命で、かっこいい……!」
コートの外から、その様子を夢中で見守るさくらの横顔を、
手塚は横目でちらりとみる。
その目には、何処か誇らしげな光があった。
少し離れたところで、不二周助がラケットを持ったまま歩いてくる。
ちらりと視線を向け、さくらを見つけると、目を細めた。
「……あれ?あの子……」
何も続けず、ただ穏やかに微笑んだ。
春風が桜の花びらをさらっていき、
さくらの胸は仮入部の日への期待でいっぱいになっていた。
――――
放課後の陽射しは、昼間よりも柔らかく、
桜並木の道を淡い金色に染めていた。
部活帰りの生徒たちが遠ざかり、
道にはもう二人しかいない。
風に揺れる花びらが、まるで祝福のように舞っていた。
手塚が立ち止まり、振り返る。
「……さくら」
その声は、いつもよりわずかに低く、真剣だった。
「俺が小学校を卒業した時のこと、覚えてるか?」
さくらは驚いたように目を瞬き、それから小さく笑った。
「うん。覚えてる。『わたしが中学生になったら付き合って』って……」
頬を染めて真っすぐに手塚を見つめるさくら。
手塚は静かに頷く。
そして、真正面からその瞳を見つめた。
「改めて言う。……お前が好きだ」
風が一瞬止み、世界がその言葉だけを残したように感じる。
「これからは、恋人として付き合ってほしい」
その言葉にさくらは大きく頷いた。
「……うん!」
さくらの瞳に涙が光り、頬に笑顔が弾けた。
「喜んで!わたしも、国ちゃんが大好き!」
最後の言葉は、もう堪えきれなかった。
さくらは一歩駆け寄り、その胸にぎゅっと抱き着く。
手塚の腕がためらいがちに、それでもしっかりとさくらを包んだ。
桜の花びらが二人の肩に降り積もり、約束の証のように淡く輝いていた。
―――――
その夜。
入学式も終わり、放課後に交わした約束の余韻がまだ胸の奥で温かく残っていた。
机の上にはさくらと国ちゃんの『一緒日記』。
ページの端に桜のシールを貼りながら、
さくらは楽しげにペンを走らせる。
『今日は国ちゃんと"正式に"恋人になった日。
夢みたいに嬉しくて、ずっと笑ってばっかりだった。
それから国ちゃんに桜のストラップももらったの。
部活も見学させてくれた。みんなかっこよかった。
わたし、テニス部のマネージャーになるんだ』
「ねえ、しろちゃん」
ベッドの上で白い小さな『ルミネル』。
通称『しろちゃん』がふわふわ浮かぶ。
「んー?どうしたの、さくら?」
「わたし、本当に幸せ……。
国ちゃんがいるだけで、胸がポカポカするの」
「うふふ、それが恋ってやつだねぇ」
しろちゃんのからかうような声に、さくらは頬を赤くして笑った。
日記を書き終えると、ライトを消して、毛布の中に潜り込む。
そのまま、幸せそうな表情で、ゆっくりと眠りについた。
静かな闇の中。
カチ、カチ、と時計の針の音が響く。
気が付くと、さくらは巨大な時計の歯車の上に立っていた。
足元を金色の光が走り、空には星々が輝いている。
目の前には――宙に浮かぶ一本の鍵。
「なんだろう……鍵……?」
そっと手を伸ばすと、鍵は優しく光りだし、
ふわりと羽根を広げるように形を変えていく。
まばゆい光の中から、一冊の本が現れた。
表紙には淡く輝く文字で――。
『CLEAR』
「……クリアカード……」
夢の中でさくらがその名を呟くと、
歯車が静かに回り始め、眩い光に包まれていった。
鳥の声が聞こえる。
ゆっくりと瞼を開けると、さくらの手には夢の中で出てきた鍵が握られていた。
「……夢じゃなかったの?」
隣では、しろちゃんがすやすやと丸くなって眠っている。
その足元――そこには、夢で見たあの
『CLEAR』と書かれた本が、
柔らかい朝の光を受けて静かに佇んでいた。
さくらはゆっくりと身体を起こした。
夢の中の鍵を見つめながら、小さく息を飲む。
「……本当に、出てきたんだ……」
朝の光がカーテンの隙間から差し込み、
枕元の『CLEAR』と書かれた本を照らす。
表紙の桜の模様が、まるで呼吸をするように淡く光っていた。
その時。
「ん……」
小さな声が布団の中から漏れる。
白い羽根のような光がふわりと舞い、
しろちゃんが瞬きをしながら浮かび上がった。
「おはよう、さくら……」
寝ぼけた声で欠伸をしながら、
ふと視線を落としたしろちゃんの目がすぐに見開かれる。
「それ……まさか……!」
さくらは頷く。
「夢で見たの。歯車の中で……この本と、夢の中の鍵が輝いて……」
しろちゃんはしばらく黙ってその本を見つめていたが、
やがて穏やかに微笑んだ。
「……また始まるんだね、さくら」
「えっ?」
「君の新しい物語が。
カードが静かに眠りを終えて――
"夢"が、次の"願い"を形にしようとしてる」
さくらの胸がきゅっと高鳴った。
昨日までの幸せな日常が、
今、光の中で少しずつ"魔法の現実"へと変わっていく。
「……うん」
さくらは小さく笑い、夢の中の鍵を抱きしめた。
「何があっても、国ちゃんは絶対に守る」
朝の風がカーテンを揺らし、
その音がまるで『頑張って』と背中を押すように優しく輝いていた。