プラチナ
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
静寂が支配する心の世界。
そこは、まるで氷のように冷たく、
果ての見えない世界だった。
光の欠片がゆっくりと舞い落ちるたびに、その中心――。
[#dn=#1][#dn=#2]はひとり、膝を抱えて泣いていた。
「……どうして、みんな笑うの……?」
声は震え、涙が頬を伝う。
その雫は床に落ちるたび、淡い桜色の花弁となって散っていく。
「"国ちゃん"って呼ぶことが、そんなに変なのことなの……?
わたし、ただ……大好きで、うれしくて……。
それを言葉にしたかっただけなのに……」
心の奥で、何度も自分に問いかける。
でも、答えはどこにもなかった。
冷やかしの声、笑い声。
『姫』『特別扱い』『部長の彼女だから』
そんな言葉たちが、まるで針のように胸を刺す。
――わたし、いけないことをしたのかな。
「……好きになっちゃ、いけなかったの……?」
鳴咽が溢れる。
胸が痛い。息が苦しい。
心の空がひび割れていく。
まるで世界そのものが、涙で崩れ落ちていくようだった。
「……国ちゃん……」
小さく、その名前を呼ぶ。
その瞬間――。
柔らかな風が吹いた。
光が差し込む。
どこからともかく、あの声が届いた。
「――[#dn=#3]」
涙に濡れた瞳を上げると、そこには――。
手塚国光がいた。
真っ直ぐな瞳。
しずかで、けれど決して揺らがない光を宿した目。
「……国ちゃん?」
夢か、幻か。
[#dn=#3]は呟くように名前を呼んだ。
手塚はゆっくりと歩み寄り、彼女の前で膝をつく。
そして、何も言わずにそっと腕を伸ばした。
その腕は、優しく、温かく、
壊れそうな心を包み込むように――。
[#dn=#3]を抱きしめた。
「……っ!」
胸に顔を埋めた瞬間、
堰を切ったように涙が溢れた。
「どうして……どうして来てくれたの……?」
「お前が泣いていたからだ」
低く、穏やかな声。
それだけで、世界が再び色を取り戻す気がした。
「……俺の中の"特別"は――」
彼は、さくらの肩を抱きながら、
ゆっくりと彼女の瞳を見つめる。
「[#dn=#1][#dn=#2]。お前だけだ」
その言葉はさくらの胸の奥で弾けた。
温かく、柔らかく、まるで春の風のように。
「……わたしも……」
[#dn=#3]の声が震える。
けれど、その瞳は真っ直ぐだった。
「わたしの"特別"も、国ちゃんだけだよ」
二人の視線が重なる。
時が止まる。
世界の音が消える。
そして――。
手塚はそっと[#dn=#3]の頬に手を添えた。
そのまま、唇を重ねる。
一瞬。
けれど永遠にも感じられるほど、優しく、確かな口づけ。
[#dn=#3]の涙が光に変わり、
二人を包み込むように舞い上がる。
その光は天へと昇り、無数の羽のように広がった。
「…光…?」
[#dn=#3]が手を伸ばすと、
その掌に淡い輝きが宿った。
それはゆっくりと形を成し、
ひとつのカードへと変わっていく。
そこには、
"BLESS―祝福"の文字が刻まれていた。
カードの中央には、
手を取り合うふたりの姿が描かれている。
『――愛が交わる時、世界は癒される。
涙は祈りとなり、願いは光へと変わる』
まるで、[#dn=#3]の心そのものが形になったようだった。
「……これが……」
「お前の"心"の証だ」
手塚が静かに微笑む。
「誰かを想い、誰かに救われた証――。それが"祝福"だ」
[#dn=#3]はその言葉に、また涙をこぼした。
今度の涙は、悲しみではなく、
"生きている"という喜びの涙だった。
光が再び満ちていく。
心の世界が溶け、現実の景色が戻ってくる。
足元に風を感じる。
耳に聞こえる、遠くの鳥の声。
目を開けると――。
そこは、青春学園のテニスコートだった。
朝日が差し込み、桜の花びらが舞う。
まるで、ふたりの帰還を祝福しているかのように。
「……国ちゃん……帰ってきた?」
「――ああ」
手塚は頷き、彼女の手をぎゅっと握りしめた。
「お前が俺を呼んだんだ。
お前の"想い"が、俺をここへ導いた」
[#dn=#3]の瞳が潤み、笑顔が咲く。
「……ありがとう。
わたし、もう泣かない。
もう、誰にも負けないよ」
その瞬間、空からひとすじの光が降り注いだ。
「――[#dn=#3]!」
しろちゃんの声が響いた。
次の瞬間、白い羽が駆け寄り、さくらに飛びつく。
「うわぁぁぁん![#dn=#3]―――!!
もうっ、もうっ、心配したんだからぁ!!」
小さな身体をすりすりと押し付けながら、
涙をぼろぼろとこぼすしろちゃん。
[#dn=#3]は笑いながら、その頭を撫でた。
「ごめんね、しろちゃん。
でもね、もうだいじょうぶ。
国ちゃんが、迎えに来てくれたから」
「……ほんとに、戻ってきたんだね。ほら、[#dn=#3]のだよ」
しろちゃんは[#dn=#3]に夢の鍵と星の鍵を渡した。
[#dn=#3]はそれを受け取り、頷いた。
「うん、みんなのところに」
手塚は静かに彼女の背に手を添えた。
「そして、お前の"心"も戻った。もう一人じゃない」
その時、BLESSのカードが淡く光り出す。
花びらが舞い、コートの空気が柔らかく包まれていく。
不二や大石たちが遠くからそれを見ていた。
「……見ろ、光だ」
「[#dn=#3]ちゃん……戻ってこれたんだね」
カードの輝きは空へと昇り、
校庭中の花々が一斉に咲き誇る。
それはまるで、春が再び訪れた瞬間のようだった。
しろちゃんが涙の中で微笑む。
「……これが、"祝福"の力。
悲しみを乗り越えて、愛を選んだ者にだけ与えられる奇跡……」
[#dn=#3]はBLESSを胸に抱き、そっと呟いた。
「ありがとう、国ちゃん。
この世界を、もう一度信じられるようにしてくれて」
手塚は微笑んで、彼女の頭を撫でた。
「信じるだけでいい。
――それが、お前の一番の強さだ」
朝日が差し込む。
風が桜の花を運ぶ。
世界は再び、愛の色に満たされていった。
31/31ページ