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昼下がりの教室。
窓際に差し込む陽光は、いつものように柔らかく机を照らしていた――。
はずだった。
しかし、その空気は、唐突に、歪み始めた。
チリ、と黒い火花が床をかすめる。
誰かの笑い声が、途切れた。
次の瞬間、教室の空気がどろりと重く沈み込む。
「……え?」
最初に異変に気付いたのは、前列の女子だった。
足元で教科書が勝手に開き、ページが一人でにめくれて行く。
そのページには――。
昨日、[#dn=#3]が流した涙が、インクのように滲んでいた。
「きゃっ!」
悲鳴が上がる。
机が揺れる。
椅子が勝手に後退し、黒板のチョークが勝手に動き出す。
そこに書かれていく文字。
――《我が痛みを映せ》
冷たい風が、窓ガラスを内側から叩いた。
ざらついた低音のような気配が、
教室の隅々に満ちていく。
「な、なんだよこれ……!?」
「誰か、ふざけてんのか!?」
男子たちが慌てて立ち上がる。
だが、その背中を黒い糸のような影が絡め取った。
「ひっ……!?」
次の瞬間、彼らは動けなくなった。
口だけが震えて、声にならない。
――復讐(NEMESIS)
それは"痛みの共鳴"を糧に生まれた、
[#dn=#3]の心の分身。
拒絶の先にある、報いの力。
「許さない」という言葉に宿った、冷たい刃。
黒い羽のような影が天から舞い落ち、
机の上に、椅子の背に、ノートの余白に、
無数の文字を刻んでいく。
《痛みを返す》
《許しは与えない》
その言葉のひとつひとつが、
まるで呪詛のように黒く染まっていく。
空気が焦げ、電球が明減する。
生徒たちは悲鳴を上げ、教室を出ようとするが――。
扉は、びくともしなかった。
窓際のカーテンが破れ、紙が宙を舞う。
まるで嵐の中心にいるかのように、風が渦を巻く。
「きゃーっ!」
「ドアが開かない!誰かー!」
「助けてよ!」
叫びが重なり、涙が混ざる。
だが、[#dn=#3]だけは――。
静かだった。
彼女は机に座ったまま、ゆっくりと顔を上げる。
視界の端で、黒い羽が散っている。
それが、自分の心の一部だと直感していた。
(……あれは、わたしの"怒り")
(わたしが誰にも見せたくなかった感情)
しろちゃんが肩の上で叫ぶ。
「[#dn=#3]!ダメだよ、NEMESISが暴走してる!」
「……いいの」
小さな声が、嵐の中でもはっきりと響く。
「わたしの痛みを、誰かに分かってもらわないと
――前に進めないから」
その言葉を聞いて、しろちゃんは息を吞む。
「でも、こんなの……!」
「……国ちゃんに呼ばれてるんだった」
[#dn=#3]は立ち上がった。
足元で風が裂ける。
復讐の影が、それに反応するようにざわめいた。
――主が動く。
黒い影が道を空ける。
まるで女王の帰還を迎えるかのように。
[#dn=#3]の髪が風に舞い、制服の袖がふわりと揺れた。
誰もがその姿を見つめながら、何も言えなかった。
彼女の瞳には、涙も怒りもない。
ただ、静かな決意の光だけが宿っていた。
「[#dn=#3]、どこ行くの!?」
「外に出ちゃダメだよ!」
誰かの声が聞こえたが、彼女は答えない。
拒絶の残滓が、彼女の背中を守るように光を放つ。
教室のドアがひとりでに開いた。
その瞬間、復讐の気配が一瞬だけ鎮まる。
まるで、主の意志を確認するかのように。
[#dn=#3]は一歩、また一歩と廊下に出た。
その背中を、黒い羽根がゆっくりと追いかける。
彼女の通った後には、冷たい風が残る。
それは怒りではなく――。
彼女の『決意』が形を取った空気だった。
そして[#dn=#3]は誰もいないところで、
夢の鍵を取り出し、胸元に掲げた。
「夢の力を秘めし鍵よ、真の姿を我の前に示せ――。封印解除!」
鍵が杖になり、[#dn=#3]はそれを取る。
くるくると回すと、復讐(NEMESIS)のカードに囁いた。
「今日はもういいよ、NEMESIS!カードに戻って!!」
[#dn=#3]の声でカードに戻り、彼女のもとへ戻る――。
NEMESIS。
それと同時に、教室での騒ぎも収まった。
クラスメイト達は、ほっとする。
泣きだす者もいた。
「国ちゃんのところに行かなくちゃ」
[#dn=#3]は杖を鍵に戻すと、手塚のもとへ走っていくのだった。