プラチナ
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
午後の陽射しが傾き始めたテニスコート。
今日も青春学園男子テニス部の掛け声が響いていた。
グラウンドにはジャージ姿が並び、その中央には―――。
人の小さな影。
マネージャー・木之本桜。
彼女はいつものように、笑顔でボールを拾い、水を配り、
「おつかれさまです!」
と明るい声を響かせていた。
けれど、その笑顔の奥で――。
胸の奥は、もう何日も前から悲鳴を上げていた。
――――――
「木之本~!今日も"国ちゃん"が来てるぞー!」
「おい、木之本ー、"部長の特別枠"って噂、本当かー?」
「マネージャーって言うより、姫だろ、姫~!」
「……っ」
言葉が胸に突き刺さるたびに、
さくらは笑ってごまかした。
「ち、ちがうよぉ。そういうんじゃ……」
でも、笑顔はどんどん引きつっていった。
(どうして、みんなそんなこと言うの……?)
(わたしは、ただ国ちゃんのそばで……応援したいだけなのに)
少し離れた場所で、手塚は練習を見つめていた。
無表情のようでいて、その瞳には
確かに彼女の様子を気にかける光があった。
しかし、彼の静かな庇護の気配さえ、
周囲の冷やかしを完全に止めることはできなかった。
―――――
そして、その日――。
「なぁ、手塚、今日も"国ちゃん"って呼ばれてたぞ~」
「やっぱ特別扱いじゃん、部長の彼女だし!」
「いいよな~、あんな可愛い子に尽くされて~!」
ざわつく声の中で、
さくらは手にしていたボール箱を落とした。
カラン――。
その音に、コートが静まり返る。
「……もう、やめて……!」
絞り出すような声。
それは、いままでの彼女からは想像できないほど震えていた。
「そんな風に言わないで……!
わたし……本気で国ちゃんが好きなの!
冷やかしとか、冗談とかじゃないの!」
一気にあふれた涙が頬を伝う。
部員たちは言葉を失い、ただ立ち尽くす。
「国ちゃんは……!わたしを守ってくれて、支えてくれて……!
誰よりも優しくて、まっすぐで……!
そんな人を好きになっちゃ、いけないの……!?」
息を詰まらせながら叫ぶさくら。
それは、心の底からの悲鳴だった。
「わたし、"特別扱い"なんかされたくない!
国ちゃんと同じ場所で、同じ空を見ていたいだけなのに……!」
拳を握り締め、涙を落としながら、
さくらはその場を走り去った。
誰も声をかけられなかった。
ただ、静まり返るコートに、風の音だけが響いていた。
―――――
「……さくら!」
最初に動いたのは手塚だった。
彼はラケットを置き、一直線に走り出す。
コートの出口、渡り廊下、校舎の影――。
あの小さな背中を追いかけて。
「さくら!」
角を曲がるたび、ジャージの裾がかすかに見えた。
もうすぐ追いつける――。
そう思った瞬間。
「……っ!」
次の角を曲がった先、
さくらの姿は――。
なかった。
そこには、春風だけが吹き抜けていた。
花びらがひらりと舞い上がる。
「……さくら?」
呼びかけても、返事がない。
まるで、空気そのものに溶けてしまったように、
彼女の気配がどこにもなかった。
当たりを見回しても、誰もいない。
風だけが静かで。
彼はそのまま、コートへと戻った。
―――――
「手塚!木之本は!?」
「見つからない。姿が消えた」
ざわめく部員たち。
不二が顔を曇らせ、菊丸が青ざめる。
「消えたって……マジかよ……!」
「お、おれたち……言いすぎたのか……?」
手塚は冷ややかに彼らを見渡した。
その視線だけで、空気が凍る。
「――お前たち、何を言った」
低く、静かな声。
それは怒り声ではないのに、
誰よりも重く響いた。
桃城が唇を噛み、菊丸が視線を逸らす。
「ちょっと……からかっただけで……」
「"特別扱い"だとか、"姫"だとか……言いました」
沈黙。
次の瞬間、手塚の眉がわずかに動いた。
「……グラウンド70周」
「えっ!?」
「ふざけ半分で、人の想いを侮辱するな。
さくらはお前たちと同じ部員だ。
心を軽く扱うなら、ここにいる資格はない」
その言葉に、誰も逆らえなかった。
「……す、すみませんでした……!」
「謝る相手が違う」
「……はい!」
グラウンドに走り出す部員たち。
菊丸も、桃城も、息を切らしながら何度も謝罪を繰り返した。
残った静けさの中で、
不二が小さく呟いた。
「……手塚、あの子、どこに?」
「わからない。だが――」
手塚はコートの外を見上げた。
風がひときわ強く吹く。
「必ず、見つける」
その言葉は、誓いのように重く響いた。
今日も青春学園男子テニス部の掛け声が響いていた。
グラウンドにはジャージ姿が並び、その中央には―――。
人の小さな影。
マネージャー・木之本桜。
彼女はいつものように、笑顔でボールを拾い、水を配り、
「おつかれさまです!」
と明るい声を響かせていた。
けれど、その笑顔の奥で――。
胸の奥は、もう何日も前から悲鳴を上げていた。
――――――
「木之本~!今日も"国ちゃん"が来てるぞー!」
「おい、木之本ー、"部長の特別枠"って噂、本当かー?」
「マネージャーって言うより、姫だろ、姫~!」
「……っ」
言葉が胸に突き刺さるたびに、
さくらは笑ってごまかした。
「ち、ちがうよぉ。そういうんじゃ……」
でも、笑顔はどんどん引きつっていった。
(どうして、みんなそんなこと言うの……?)
(わたしは、ただ国ちゃんのそばで……応援したいだけなのに)
少し離れた場所で、手塚は練習を見つめていた。
無表情のようでいて、その瞳には
確かに彼女の様子を気にかける光があった。
しかし、彼の静かな庇護の気配さえ、
周囲の冷やかしを完全に止めることはできなかった。
―――――
そして、その日――。
「なぁ、手塚、今日も"国ちゃん"って呼ばれてたぞ~」
「やっぱ特別扱いじゃん、部長の彼女だし!」
「いいよな~、あんな可愛い子に尽くされて~!」
ざわつく声の中で、
さくらは手にしていたボール箱を落とした。
カラン――。
その音に、コートが静まり返る。
「……もう、やめて……!」
絞り出すような声。
それは、いままでの彼女からは想像できないほど震えていた。
「そんな風に言わないで……!
わたし……本気で国ちゃんが好きなの!
冷やかしとか、冗談とかじゃないの!」
一気にあふれた涙が頬を伝う。
部員たちは言葉を失い、ただ立ち尽くす。
「国ちゃんは……!わたしを守ってくれて、支えてくれて……!
誰よりも優しくて、まっすぐで……!
そんな人を好きになっちゃ、いけないの……!?」
息を詰まらせながら叫ぶさくら。
それは、心の底からの悲鳴だった。
「わたし、"特別扱い"なんかされたくない!
国ちゃんと同じ場所で、同じ空を見ていたいだけなのに……!」
拳を握り締め、涙を落としながら、
さくらはその場を走り去った。
誰も声をかけられなかった。
ただ、静まり返るコートに、風の音だけが響いていた。
―――――
「……さくら!」
最初に動いたのは手塚だった。
彼はラケットを置き、一直線に走り出す。
コートの出口、渡り廊下、校舎の影――。
あの小さな背中を追いかけて。
「さくら!」
角を曲がるたび、ジャージの裾がかすかに見えた。
もうすぐ追いつける――。
そう思った瞬間。
「……っ!」
次の角を曲がった先、
さくらの姿は――。
なかった。
そこには、春風だけが吹き抜けていた。
花びらがひらりと舞い上がる。
「……さくら?」
呼びかけても、返事がない。
まるで、空気そのものに溶けてしまったように、
彼女の気配がどこにもなかった。
当たりを見回しても、誰もいない。
風だけが静かで。
彼はそのまま、コートへと戻った。
―――――
「手塚!木之本は!?」
「見つからない。姿が消えた」
ざわめく部員たち。
不二が顔を曇らせ、菊丸が青ざめる。
「消えたって……マジかよ……!」
「お、おれたち……言いすぎたのか……?」
手塚は冷ややかに彼らを見渡した。
その視線だけで、空気が凍る。
「――お前たち、何を言った」
低く、静かな声。
それは怒り声ではないのに、
誰よりも重く響いた。
桃城が唇を噛み、菊丸が視線を逸らす。
「ちょっと……からかっただけで……」
「"特別扱い"だとか、"姫"だとか……言いました」
沈黙。
次の瞬間、手塚の眉がわずかに動いた。
「……グラウンド70周」
「えっ!?」
「ふざけ半分で、人の想いを侮辱するな。
さくらはお前たちと同じ部員だ。
心を軽く扱うなら、ここにいる資格はない」
その言葉に、誰も逆らえなかった。
「……す、すみませんでした……!」
「謝る相手が違う」
「……はい!」
グラウンドに走り出す部員たち。
菊丸も、桃城も、息を切らしながら何度も謝罪を繰り返した。
残った静けさの中で、
不二が小さく呟いた。
「……手塚、あの子、どこに?」
「わからない。だが――」
手塚はコートの外を見上げた。
風がひときわ強く吹く。
「必ず、見つける」
その言葉は、誓いのように重く響いた。