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朝の光が柔らかく差し込む桜並木。
校門へ続く歩道に、さくらと手塚の姿があった。
手塚の制服の裾に、そっと触れながら歩くさくら。
春の風が舞う花びらが、二人の間を通り抜けていく。
「……国ちゃん、手、繋いでもいい?」
小さな声で尋ねると、手塚は少しだけ視線を向けた。
その瞳には、迷いも照れもなく――。
ただ、穏やかさがあった。
「……ああ」
その言葉にさくらは嬉しそうに微笑む。
彼の手に指を絡める。
――恋人繋ぎ。
指先が触れた瞬間、胸の奥が温かくなった。
ただ、それだけのことが、こんなにも嬉しいなんて。
「国ちゃんの手、あったかいね」
「お前の手が冷たいだけだ」
ふと笑いあう。
その自然な空気が、まるで世界の全部が二人だけになったように思えた。
けれど――。
校門が近づくにつれて、
ざわめきが聞こえてきた。
「えっ……手塚部長!?」
「うそ、手つないでる……!」
「木之本さんだよね?」
「恋人つなぎじゃん!」
たちまち、廊下や昇降口の方からひそひそ声が広がっていく。
「……っ」
さくらの足が止まる。
手に汗が滲む。
笑っていた顔が、少しずつ曇っていった。
(また……みんなに見られてる……)
(冷やかされるの、やっぱり苦手……)
俯いたさくらの横で、
手塚は立ち止まらなかった。
繋いだ手を、静かに握りなおす。
「……気にするな」
その一言。
低く、確かな声。
さくらは顔を上げた。
彼の横顔は、いつも通り凛としていて、
周囲の声などまるで届かないようだった。
(国ちゃんは……恥ずかしくないのかな……)
(それとも、わたしのことちゃんと守ってくれてるの?)
心の中でそっと呟きながら、
さくらは小さく微笑んだ。
「うん……気にしない」
そう言って、もう一度手を握り返す。
冷やかしの声はまだ聞こえていたけれど、
二人の歩幅は、変わらなかった。
桜の花びらが、光を反射して舞い上がる。
まるで二人を包み込むように――。
優しい春の風が通り抜けていった。
昼下がりの教室。
窓の外では、春の陽射しが穏やかに揺れていた。
英語の授業中、先生が黒板に例文を書いている――。
はずなのに、後ろの席の男子たちはこそこそと盛り上がっていた。
「なぁ、手塚先輩の彼女って木之本だよな?」
「お前、朝見ただろ?恋人繋ぎだってさ!」
「いいなぁ、部長モテるわ~。なぁ、木之本、どんな魔法掛けたんだ?」
その瞬間、さくらの肩がびくっと震えた。
消しゴムを持つ指が止まり、目が泳ぐ。
「……や、やめてよ……」
小さな声。
けれど、男子たちは面白がるように続ける。
「そんな照れんなって!」
「"国ちゃん♡"って呼んでみ?」
くすくす笑いが広がり、
教室の空気がねじれたように重くなる。
黒板の前の先生も、一瞬気づいたが、
「静かにしなさい」
と軽く注意するだけで、波は完全には止まってなかった。
さくらは俯いて唇を噛む。
胸の奥がきゅっと縮む。
(……また、笑われてる……)
(国ちゃんと一緒にいるだけで、そんなにおかしいことなの……?)
そのとき――。
机の下の鞄から、ぴくりと白い毛玉が顔を出した。
「……しろちゃん!?だめ、いま、授業中――」
ピリッ
次の瞬間、空気が弾けるような音が教室に走った。
蛍光灯が一瞬だけ明減し、
後ろの席の男子たちが「うわっ!?」と
声を上げた。
「い、いまビリって……!」
「静電気か!?」
「いや、今の絶対おかしい!」
驚きで沈黙する教室。
さくらは慌てて鞄の中をそっと押さえる。
(もー、しろちゃん!怒っちゃだめだよぉ……!)
中から、テレパシーの声が返る。
「さくらを笑うやつ、許せない。でも、心配いらないよ」
(もぉ……ありがとう。でも、心配いらないよ)
ほっと息をつくさくら。
その瞳にはまだ小さな涙が滲んでいたが、
今度は、ほんの少しだけ強く笑った。
チャイムが鳴る。
昼休み、教室を出ようとすると――。
廊下の角に、手塚が立っていた。
「……大丈夫か?」
その低い声に、さくらの胸が震える。
こくりと頷くと、彼は静かに言った。
「誰に何を言われても、俺は気にしない」
「うん……わたしも」
(でも、ちょっと限界来てるかもしれないんだよね)
ほんの少し勇気を出して、
さくらは笑顔を見せた。
彼の背中に隠れるようにして歩きながら――。
心の中で、小さく呟く。
(ありがとう、国ちゃん。ありがとう、しろちゃん)
春の午後。
窓の外では、さくらの花びらが一枚、
光の中に舞い上がった。
校門へ続く歩道に、さくらと手塚の姿があった。
手塚の制服の裾に、そっと触れながら歩くさくら。
春の風が舞う花びらが、二人の間を通り抜けていく。
「……国ちゃん、手、繋いでもいい?」
小さな声で尋ねると、手塚は少しだけ視線を向けた。
その瞳には、迷いも照れもなく――。
ただ、穏やかさがあった。
「……ああ」
その言葉にさくらは嬉しそうに微笑む。
彼の手に指を絡める。
――恋人繋ぎ。
指先が触れた瞬間、胸の奥が温かくなった。
ただ、それだけのことが、こんなにも嬉しいなんて。
「国ちゃんの手、あったかいね」
「お前の手が冷たいだけだ」
ふと笑いあう。
その自然な空気が、まるで世界の全部が二人だけになったように思えた。
けれど――。
校門が近づくにつれて、
ざわめきが聞こえてきた。
「えっ……手塚部長!?」
「うそ、手つないでる……!」
「木之本さんだよね?」
「恋人つなぎじゃん!」
たちまち、廊下や昇降口の方からひそひそ声が広がっていく。
「……っ」
さくらの足が止まる。
手に汗が滲む。
笑っていた顔が、少しずつ曇っていった。
(また……みんなに見られてる……)
(冷やかされるの、やっぱり苦手……)
俯いたさくらの横で、
手塚は立ち止まらなかった。
繋いだ手を、静かに握りなおす。
「……気にするな」
その一言。
低く、確かな声。
さくらは顔を上げた。
彼の横顔は、いつも通り凛としていて、
周囲の声などまるで届かないようだった。
(国ちゃんは……恥ずかしくないのかな……)
(それとも、わたしのことちゃんと守ってくれてるの?)
心の中でそっと呟きながら、
さくらは小さく微笑んだ。
「うん……気にしない」
そう言って、もう一度手を握り返す。
冷やかしの声はまだ聞こえていたけれど、
二人の歩幅は、変わらなかった。
桜の花びらが、光を反射して舞い上がる。
まるで二人を包み込むように――。
優しい春の風が通り抜けていった。
昼下がりの教室。
窓の外では、春の陽射しが穏やかに揺れていた。
英語の授業中、先生が黒板に例文を書いている――。
はずなのに、後ろの席の男子たちはこそこそと盛り上がっていた。
「なぁ、手塚先輩の彼女って木之本だよな?」
「お前、朝見ただろ?恋人繋ぎだってさ!」
「いいなぁ、部長モテるわ~。なぁ、木之本、どんな魔法掛けたんだ?」
その瞬間、さくらの肩がびくっと震えた。
消しゴムを持つ指が止まり、目が泳ぐ。
「……や、やめてよ……」
小さな声。
けれど、男子たちは面白がるように続ける。
「そんな照れんなって!」
「"国ちゃん♡"って呼んでみ?」
くすくす笑いが広がり、
教室の空気がねじれたように重くなる。
黒板の前の先生も、一瞬気づいたが、
「静かにしなさい」
と軽く注意するだけで、波は完全には止まってなかった。
さくらは俯いて唇を噛む。
胸の奥がきゅっと縮む。
(……また、笑われてる……)
(国ちゃんと一緒にいるだけで、そんなにおかしいことなの……?)
そのとき――。
机の下の鞄から、ぴくりと白い毛玉が顔を出した。
「……しろちゃん!?だめ、いま、授業中――」
ピリッ
次の瞬間、空気が弾けるような音が教室に走った。
蛍光灯が一瞬だけ明減し、
後ろの席の男子たちが「うわっ!?」と
声を上げた。
「い、いまビリって……!」
「静電気か!?」
「いや、今の絶対おかしい!」
驚きで沈黙する教室。
さくらは慌てて鞄の中をそっと押さえる。
(もー、しろちゃん!怒っちゃだめだよぉ……!)
中から、テレパシーの声が返る。
「さくらを笑うやつ、許せない。でも、心配いらないよ」
(もぉ……ありがとう。でも、心配いらないよ)
ほっと息をつくさくら。
その瞳にはまだ小さな涙が滲んでいたが、
今度は、ほんの少しだけ強く笑った。
チャイムが鳴る。
昼休み、教室を出ようとすると――。
廊下の角に、手塚が立っていた。
「……大丈夫か?」
その低い声に、さくらの胸が震える。
こくりと頷くと、彼は静かに言った。
「誰に何を言われても、俺は気にしない」
「うん……わたしも」
(でも、ちょっと限界来てるかもしれないんだよね)
ほんの少し勇気を出して、
さくらは笑顔を見せた。
彼の背中に隠れるようにして歩きながら――。
心の中で、小さく呟く。
(ありがとう、国ちゃん。ありがとう、しろちゃん)
春の午後。
窓の外では、さくらの花びらが一枚、
光の中に舞い上がった。