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夕方の空が、ゆっくりと茜色に染まっていく。
部活を終えた校門前。
テニスバッグを肩にかけた手塚と、
その隣を歩くさくらの足音だけが静かに響いていた。
蝉の声が遠くで鳴いている。
沈みかけた太陽の光が、桜の並木道を金色に照らしていた。
「……国ちゃん」
「ん?」
「わたし……」
言いかけて、少し唇を噛む。
それでも勇気を振り絞って、顔を上げた。
「冷やかされたり、からかわれたり……
茶化されるの、いやなの」
手塚が立ち止まった。
さくらの横顔を見つめる。
その目は、少し潤んでいた。
「今日、みんなの前で笑おうとしたけど、
"国ちゃん"って呼ぶたびに、笑われて……。
"国ちゃん"はわたしにとってすごく大事な言葉なのに……」
声が小さく震えた。
桜の花びらが、彼女の肩に落ちる。
「笑顔でいたいのに……笑えなくなっちゃうときがあるんだ」
手塚は静かに息をつき、
ほんの少しだけ目を細めた。
「……そうか」
短い返事。
けれど、その声は温かかった。
手塚は視線を前に戻し、歩きながら静かに言った。
「お前がどう呼ぼうと、それはお前の自由だ。
俺は、誰かの言葉より、お前の気持ちを信じる」
「……国ちゃん」
「俺は部長として、場を締めるために"静かに食え"と言った。
でも、恋人としては――お前の笑顔を守りたかった」
さくらの胸の奥が、じんと熱くなる。
気づけば、涙が一粒零れていた。
「……ありがとう。国ちゃんがいてくれるだけで、だいじょうぶだよ」
手塚はその涙を見て、少しだけ微笑んだ。
「泣くな。お前は笑顔の方が、ずっと似合う」
「うん」
桜の並木道を、二人の影が寄り添うように伸びていく。
春の風が抜け、淡い花びらが舞った。
"二人の心は、誰にも触れられない場所でつながっている。"
―――――
今日もさくらは日課の日記をつけていた。
今日は国ちゃんとお昼を食べた。
手作りのお弁当、『美味い』って言ってくれた。
それだけで、胸がいっぱいになった。
練習中も、国ちゃんはみんなのことを真剣に見てて、
その姿がとてもカッコよかった。
部長さんってすごい。
……だけど、一つだけ気になることがある。
このあいだ、テニスボールから庇ってくれた時。
国ちゃんの腕に、光が見えた気がしたの。
それは、傷跡のような……。
わたし、見ちゃったんだ。
過去の映像みたいに。
誰かに強く腕を打たれて―――
それを国ちゃんは、何も言わずに堪えていた。
―――あれは……ほんとうに"今"じゃなくて、"昔"のこと?
夢の鍵みたいに、わたしの魔力が見せた"過去視"だったのかもしれない。
でも、もし……あれが本当なら――悲しい。
あんなに優しい国ちゃんが、痛い思いをしていたなんて。
わたし、何も知らなかったんだね。
国ちゃんの笑顔の裏に、どんな思いがあったのか……。
それでもわたしは信じてる。
国ちゃんは強くて、優しくて、誰よりも真っすぐだから。
だからわたしは笑顔でいよう。
国ちゃんが安心できるように。
―――さくら
その夜。
さくらは日記を閉じ、ベッドの上でペンを握ったままぼんやり天井を見つめていた。
国ちゃんの腕のあの光景。
思い出すたびに、胸が痛くなる。
「……国ちゃん、無理してないかな」
しろちゃんは、足元で丸くなって眠っていた。
その穏やかな寝息を聞いてるうちに、
さくらの瞼が少しずつ重くなっていく。
ふと――部屋の空気が、揺れた。
カチ、カチ、カチ……。
時計の針の音が妙に大きく響く。
「え?」
部屋の中に淡い光の立方体が浮かんでいた。
その表面には、奇妙な模様が浮かび上がっていく。
どこからともなく、しろちゃんの声が響いた。
「さくら、気を付けて。
そのカード、空間を包み込む力を持ってる。
逃げ場がなくなる前に…!」
「っていっても、もう逃げ場なんてないよぉぉぉ」
「ええええええ」
次の瞬間、透明な壁が"パンッ"と音を立てて現れ、
さくらの部屋全体を包み込んだ。
手を伸ばしても壁に触れられない。
押しても引いても、何も動かない。
「嘘っ……!」
周囲の空気が歪み、まるで部屋ごと別の空間に
閉じ込められたようだった
その時、夢の鍵が淡く光る。
「……夢の鍵!」
さくらはそれを胸の前で掲げた。
「夢の力を秘めし鍵よ、真の姿を我の前に示せ!―――封印解除!!」
鍵が光に包まれ、杖に変化する。
さくらはそれを取り、くるくる回す。
そして一枚のカードを取り出した。
それは、一番最初に捕まえたカード。
「この空間を切りさけ!疾風―GAIL―!」
疾風のカードが壁を壊していく。
「主なきものよ、夢の杖のもと、我の力となれ―――固着(セキュア!)」
クリスタルに閉じ込められた箱のカード。
それはパリンと割れ、一枚のカードになった。
『包囲』『SIEGE』
そのカードはさくらの手元に降り立った。
「……また、新しいカード」
しろちゃんが目を開け、ふわりと浮かび上がった。
「さくら……カード達は、君の心の動きに呼応している。
"守りたい""閉じ込めたい"――そのどちらも、君の中にあるんだよ」
さくらはしばらく黙ってカードを見つめ、やがて小さく頷いた。
「……でも閉じ込めるより、わたしは"守りたい"。
だから――次は、もっと優しいカードが出てきてくれるといいな」
窓の外には、春の夜風が流れていた。
遠く、青学の方向に見える街の灯りを見つめながら、
さくらはそっとカードを胸に抱いた。
――――
シージュの騒動が収まった後。
部屋の空気はすっかり静まり返っていた。
さくらはベッドの上で膝を抱き、
胸の奥に残る不安を押し込めようとしていた。
「……また、カードが出てきちゃった」
しろちゃんが肩の上でふわりと羽ばたく。
「大丈夫。今回は誰も傷つかなかったよ」
その声が少しだけ心を軽くしたとき――。
―――ピリリリリリ……。
机の上で携帯が震えた。
画面を見ると、『手塚国光』
「……国ちゃん?」
慌てて通話ボタンを押す。
「さくら、大丈夫か?」
落ち着いた声が耳に響いた瞬間、胸の奥がじんと熱くなった。
「う、うん……どうして?」
「さっき、大きな音が聞こえた。
風が吹いたような……窓が割れるような音も。
心配になってな」
―――そんな遠くまで聞こえてたんだ。
窓の外を見ながら、さくらは小さく笑う。
「ごめんね、国ちゃん。ちょっと……ドジしちゃって」
「怪我はないか?」
「ないよ、ありがとう」
電話の向こうで、小さく息をつく音がした。
「……さくら」
「うん?」
「部活の時の呼び方の件だが。
お前の好きなように呼べばいい。
"国ちゃん"でも構わない」
一瞬、時間が止まったようだった。
「……ほんとに?」
「あぁ、誰が何と言おうと、
それがお前にとって大事な言葉なら、
俺はそれを否定しない」
電話越しの声は低く穏やかで、
まるで心の奥に直接響くようだった。
「……ありがとう、国ちゃん」
声が震える。
目の奥が熱くなって、涙が零れそうになる。
「泣くな。……もう遅い。早く休め」
「うん……おやすみ、国ちゃん」
「おやすみ、さくら」
通話が切れた後も、耳の奥には彼の声が優しく残っていた。
「……"国ちゃん"って呼んで良いんだね……」
小さく呟いて、携帯を胸に抱きしめる。
しろちゃんが、ふわりと羽音を立てて微笑んだ。
「優しい人だね、さくら。君の心をよくわかってる」
さくらは頬を赤らめ、涙を拭いながら笑った。
「うん。……国ちゃんは、いつだって優しいの」
窓の外では、夜風が桜の花びらをひとひら運んできた。
枕元のカードが小さく光り――。
まるで"安心"の魔法が、彼女を包み込むようだった。
部活を終えた校門前。
テニスバッグを肩にかけた手塚と、
その隣を歩くさくらの足音だけが静かに響いていた。
蝉の声が遠くで鳴いている。
沈みかけた太陽の光が、桜の並木道を金色に照らしていた。
「……国ちゃん」
「ん?」
「わたし……」
言いかけて、少し唇を噛む。
それでも勇気を振り絞って、顔を上げた。
「冷やかされたり、からかわれたり……
茶化されるの、いやなの」
手塚が立ち止まった。
さくらの横顔を見つめる。
その目は、少し潤んでいた。
「今日、みんなの前で笑おうとしたけど、
"国ちゃん"って呼ぶたびに、笑われて……。
"国ちゃん"はわたしにとってすごく大事な言葉なのに……」
声が小さく震えた。
桜の花びらが、彼女の肩に落ちる。
「笑顔でいたいのに……笑えなくなっちゃうときがあるんだ」
手塚は静かに息をつき、
ほんの少しだけ目を細めた。
「……そうか」
短い返事。
けれど、その声は温かかった。
手塚は視線を前に戻し、歩きながら静かに言った。
「お前がどう呼ぼうと、それはお前の自由だ。
俺は、誰かの言葉より、お前の気持ちを信じる」
「……国ちゃん」
「俺は部長として、場を締めるために"静かに食え"と言った。
でも、恋人としては――お前の笑顔を守りたかった」
さくらの胸の奥が、じんと熱くなる。
気づけば、涙が一粒零れていた。
「……ありがとう。国ちゃんがいてくれるだけで、だいじょうぶだよ」
手塚はその涙を見て、少しだけ微笑んだ。
「泣くな。お前は笑顔の方が、ずっと似合う」
「うん」
桜の並木道を、二人の影が寄り添うように伸びていく。
春の風が抜け、淡い花びらが舞った。
"二人の心は、誰にも触れられない場所でつながっている。"
―――――
今日もさくらは日課の日記をつけていた。
今日は国ちゃんとお昼を食べた。
手作りのお弁当、『美味い』って言ってくれた。
それだけで、胸がいっぱいになった。
練習中も、国ちゃんはみんなのことを真剣に見てて、
その姿がとてもカッコよかった。
部長さんってすごい。
……だけど、一つだけ気になることがある。
このあいだ、テニスボールから庇ってくれた時。
国ちゃんの腕に、光が見えた気がしたの。
それは、傷跡のような……。
わたし、見ちゃったんだ。
過去の映像みたいに。
誰かに強く腕を打たれて―――
それを国ちゃんは、何も言わずに堪えていた。
―――あれは……ほんとうに"今"じゃなくて、"昔"のこと?
夢の鍵みたいに、わたしの魔力が見せた"過去視"だったのかもしれない。
でも、もし……あれが本当なら――悲しい。
あんなに優しい国ちゃんが、痛い思いをしていたなんて。
わたし、何も知らなかったんだね。
国ちゃんの笑顔の裏に、どんな思いがあったのか……。
それでもわたしは信じてる。
国ちゃんは強くて、優しくて、誰よりも真っすぐだから。
だからわたしは笑顔でいよう。
国ちゃんが安心できるように。
―――さくら
その夜。
さくらは日記を閉じ、ベッドの上でペンを握ったままぼんやり天井を見つめていた。
国ちゃんの腕のあの光景。
思い出すたびに、胸が痛くなる。
「……国ちゃん、無理してないかな」
しろちゃんは、足元で丸くなって眠っていた。
その穏やかな寝息を聞いてるうちに、
さくらの瞼が少しずつ重くなっていく。
ふと――部屋の空気が、揺れた。
カチ、カチ、カチ……。
時計の針の音が妙に大きく響く。
「え?」
部屋の中に淡い光の立方体が浮かんでいた。
その表面には、奇妙な模様が浮かび上がっていく。
どこからともなく、しろちゃんの声が響いた。
「さくら、気を付けて。
そのカード、空間を包み込む力を持ってる。
逃げ場がなくなる前に…!」
「っていっても、もう逃げ場なんてないよぉぉぉ」
「ええええええ」
次の瞬間、透明な壁が"パンッ"と音を立てて現れ、
さくらの部屋全体を包み込んだ。
手を伸ばしても壁に触れられない。
押しても引いても、何も動かない。
「嘘っ……!」
周囲の空気が歪み、まるで部屋ごと別の空間に
閉じ込められたようだった
その時、夢の鍵が淡く光る。
「……夢の鍵!」
さくらはそれを胸の前で掲げた。
「夢の力を秘めし鍵よ、真の姿を我の前に示せ!―――封印解除!!」
鍵が光に包まれ、杖に変化する。
さくらはそれを取り、くるくる回す。
そして一枚のカードを取り出した。
それは、一番最初に捕まえたカード。
「この空間を切りさけ!疾風―GAIL―!」
疾風のカードが壁を壊していく。
「主なきものよ、夢の杖のもと、我の力となれ―――固着(セキュア!)」
クリスタルに閉じ込められた箱のカード。
それはパリンと割れ、一枚のカードになった。
『包囲』『SIEGE』
そのカードはさくらの手元に降り立った。
「……また、新しいカード」
しろちゃんが目を開け、ふわりと浮かび上がった。
「さくら……カード達は、君の心の動きに呼応している。
"守りたい""閉じ込めたい"――そのどちらも、君の中にあるんだよ」
さくらはしばらく黙ってカードを見つめ、やがて小さく頷いた。
「……でも閉じ込めるより、わたしは"守りたい"。
だから――次は、もっと優しいカードが出てきてくれるといいな」
窓の外には、春の夜風が流れていた。
遠く、青学の方向に見える街の灯りを見つめながら、
さくらはそっとカードを胸に抱いた。
――――
シージュの騒動が収まった後。
部屋の空気はすっかり静まり返っていた。
さくらはベッドの上で膝を抱き、
胸の奥に残る不安を押し込めようとしていた。
「……また、カードが出てきちゃった」
しろちゃんが肩の上でふわりと羽ばたく。
「大丈夫。今回は誰も傷つかなかったよ」
その声が少しだけ心を軽くしたとき――。
―――ピリリリリリ……。
机の上で携帯が震えた。
画面を見ると、『手塚国光』
「……国ちゃん?」
慌てて通話ボタンを押す。
「さくら、大丈夫か?」
落ち着いた声が耳に響いた瞬間、胸の奥がじんと熱くなった。
「う、うん……どうして?」
「さっき、大きな音が聞こえた。
風が吹いたような……窓が割れるような音も。
心配になってな」
―――そんな遠くまで聞こえてたんだ。
窓の外を見ながら、さくらは小さく笑う。
「ごめんね、国ちゃん。ちょっと……ドジしちゃって」
「怪我はないか?」
「ないよ、ありがとう」
電話の向こうで、小さく息をつく音がした。
「……さくら」
「うん?」
「部活の時の呼び方の件だが。
お前の好きなように呼べばいい。
"国ちゃん"でも構わない」
一瞬、時間が止まったようだった。
「……ほんとに?」
「あぁ、誰が何と言おうと、
それがお前にとって大事な言葉なら、
俺はそれを否定しない」
電話越しの声は低く穏やかで、
まるで心の奥に直接響くようだった。
「……ありがとう、国ちゃん」
声が震える。
目の奥が熱くなって、涙が零れそうになる。
「泣くな。……もう遅い。早く休め」
「うん……おやすみ、国ちゃん」
「おやすみ、さくら」
通話が切れた後も、耳の奥には彼の声が優しく残っていた。
「……"国ちゃん"って呼んで良いんだね……」
小さく呟いて、携帯を胸に抱きしめる。
しろちゃんが、ふわりと羽音を立てて微笑んだ。
「優しい人だね、さくら。君の心をよくわかってる」
さくらは頬を赤らめ、涙を拭いながら笑った。
「うん。……国ちゃんは、いつだって優しいの」
窓の外では、夜風が桜の花びらをひとひら運んできた。
枕元のカードが小さく光り――。
まるで"安心"の魔法が、彼女を包み込むようだった。