相対する罪科

 アメカジスタイルギャルの服装が好きなのは、服のお兄さん。いつもプレイモードの服装をしているからそれに合わせたものを着ている。でも、写真のお兄さんの好みは、わたしが色っぽく見えるものらしいけれど、よくわからない。
「なんで圭輔はわたしのこと撮るの?」
「は?」
「わたし可愛いってこと?」
「お前、何言われてん」
「気持ち悪いって言われたから」
「髪切ったんもそのせいか?」
「うん、そう。学、遅いね」
「お前に可愛いより綺麗より麗しいが言いって言われたからやし…お前のこと可愛いって褒めんと、お洒落やなで終わるの」
「それ、知ってたよ。好き」
ちょっと背伸びしたらすぐにわたしの意図に気づいてくれて、彼から唇を重ねてきた。それが嬉しくなって、わたしはどうしていいかわからなくて、彼に身を任せるってこういうことだろうなって思いながら、瞼を落とした。

「オレが二人の分も買ってきてるのに、なんで席取っててくれないんですか」
「取ってるよぉ。ソファにわたしと圭輔。で、椅子に学。一つの机でも食べられるでしょ」
「いや、悪い」
「てか、見てましたからね。オレ、二人キスしてたの」
学が愚痴を長々と言いたくなるのを抑えるためか、アイスティーをひと口だけ飲んで、ため息をついた。
「たこ焼きのたこいらんしあげる」
わたしがたこ焼きを割って、箸で取り出したたこを学のたこ焼きの上に飾った。
「は?」
「ララ、たこ嫌いやねんで」
「そう。わたし嫌いやし、クレープ買ってきていい?」
「は?」
今度は圭輔が素っ頓狂な声を出した。
「たこ残していいなら食べる」
「いや、いいけど…」
「後でクレープ買ったげる…」
「わーい。ありがと♡」

 学、わたし、圭輔の順で並ぶと大抵わたしだけが違和感を覚える。けれど、二人にとっては、間にいているのがわたしが当たり前になっていて、わたしが二人を好いているのは、二人の距離感がおかしいのが観察していて楽しいから。
「ララ、どこのクレープにする? 外にもあったけど」
「ここのでいいよ。アイス付けていい?」
「ここハーゲンダッツなんや。洒落てるな」
「わたしチョコソースに変えて欲しいです」
「カスタムできるんやな…」
「二人は食べへんの?」
「オレらアイスだけにしたよ」
「何と何?」
「オレはチョコレート」
「オレは無難にバニラにしといた」
「学ってチョコレート好き?」
「うん、好きやで」
「わたしも好き」
「うえ…圭輔は何味が一番好きなん?」
「オレは何でも好きやで」
「ありがとうございます」
「ララ、美味しい?」
「うん、美味しい。圭輔も学もありがと」
「ええよ。ララ、今日はどうする?」
「お泊まり?」
「あー、それは親にバレるやろ…」
「オレら誘拐犯になりますよ」
「学って気ぃ遣いぃやね」
「どした?」
「圭輔は堂々としていて男らしくてかっこいい」
「学は丁寧で大人らしくて可愛い。かっこいい」
「オレら仲悪いって思ってんの?」
「圭輔たまに怒ってるみたいに聞こえるよ。わたしは平気」
「で?」
「思ってたよ。圭輔、学のこといじめてないよね?」
「ララちゃん、やめてください」
「いじめてへんけど、ララ、お前オレらのこと知ってんのか?」
「知らないよ。本当か嘘かなんて。でも、二人が好きやし会ってるんやよ」
「ララちゃん、オレのこといつから知ってるの?」
「学のこと? うーん、かっこいいひとは昔から知ってるよ。変なの」
「ララ、何嫌なことあってん」
クレープを食べ終えて、ゴミ箱に紙を捨てて、二人も同じようにして、わたしが二人の間に立つ姿をいったいどれくらいの人が覚えているのだろうと不思議に思った。
「嘘吐きって言われたのか、思われていたのかわからないけれど、それだけやよ」
「ララ、オレ達のこと、なんやと思ってる?」
「恋人のお兄さんじゃだめ?」
「お前…」
「はぁ……なんとなくララのことわかった。オレら何回目やと思う?」
「うーん、三回目?」
「違うよ……ここで会うのは三回目。梅田行ってるでしょ……」
「お前、頭打ったんか?」
「あー、あるよ。自転車とぶつかって」
「は?」
「ララ、それ……」
「それで頭おかしくなったのかなぁ……」
「いや、元々やな。うん」
「ゲーセン行くの?」
「プリ撮るの?」
「いや……撮る?」
「いい」
「わたしもいらない」
「オレ、ララとキスしたい」
圭輔の鈍い声とともに唇に違和感あり。キスされた。学に。背伸びしても学の唇に届かないのに、学はすぐにわたしに届く。
「あー、この年でホテル無理やしな」
「普通のホテルやったら、入れるよ」
「いや、ええわ……」
「オレ、ホテル代出しますよ」
「は?」
「学、何か嫌なことあったの?」
「ララ、電車代オレが出すし、梅田行こ」
「お前、まじで言ってんのか?」
「ララと一緒にいてたい」
「圭輔くん、わたし平気だよ。学が出してくれるなら、行こう」
「ララ、オレ上本町に近いとこのがええと思うけど」
「圭輔? 二人とも変だよ」
いつだってわたしの気狂いは、ひとの感情を知りすぎたせいだ。
「写真、二人が持っててほしいから、写真撮りたい」
「どこで?」
「わからへん」
「なあ、ララ、レンタルスペースって知ってる?」
「あー、難波とかにあるよね。パーティーしたり撮影したり……」
「そこ行こ♡」
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