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曦澄SSまとめ




繰り返し見る夢の話をしようか。

とても変な夢だ。悪夢ではない、ただただ可笑しな夢。初めてその夢を見た時は、あまりにも非現実的な内容に笑ってしまった程だ。一回限りであれば笑って終わるはずだった。しかし、そこから繰り返し、同じ夢を見る。同じと言ったが、厳密に言えば少しだけ違う。ただ夢に現れる人物、関係性。それらは同じ。夢に現れる人物は、ずっと一人だけだ。姑蘇藍氏の宗主、藍曦臣。夢の中でも現実と差異なく物腰柔らかで、穏やかな微笑みを携え此方を見つめている。殆ど、現実と変わらない。ただ、関係性が大きく違う。

夢の中で藍曦臣は、飴色の瞳を甘く染め此方を見つめ。そして、愛を囁いてくる。夢の中の自身は、何の疑問も抱かずにそれを受け入れる。藍曦臣の腕の中に収まり、優しい温もりに包まれながら。ああなんて幸せなのだろうか、などと思う。

本当に、可笑しな夢だ。

藍曦臣をそういった対象で見た事は、一度もない。だが、恩がある。蟄居に入った彼を、幾度と気遣った事もあった。近頃は以前のように戻った、と聞いていたが。

繰り返し可笑しな夢を見るようになったのは、まさにその吉報を聞いてからであった。

可笑しいのは夢だけではない。目覚めた時に、夢に対する不快感などを一度も感じなかった事もそうだ。寧ろ、少しの寂しさすら覚える程である。

夢を見る理由が分からない。

分からないまま、今日も夢を見る。

同じ夢を。



「少しだけ、私の悩みを聴いてくれませんか?」

江宗主、そう藍曦臣に切り出される。清談会で久しぶりに顔を合わせ、少しだけ話をしませんかと声を掛けてきたのは藍曦臣の方からだった。可笑しな夢は、未だ変わらずに見続けている。夢の事もあり、顔を合わせるのも内心気まずかった。だが避ける訳にもいかず、藍曦臣に用意された部屋へと向かった。そうして悩みを聴いて欲しい、と言うそれ。

「悩み?」

相談、の割に表情は普段と変わらない。此方の言葉に藍曦臣は薄く笑い、ええ、悩みです、などと相槌を返してくる。

「不思議な夢を見ます」

夢、その単語に少しだけ驚いてしまう。まさか、藍曦臣の夢を見てることを知られたのではないか。そんな事を一瞬思うが、誰にもその事は話していない。知られる訳もないだろう。

「繰り返し、同じ夢……あなたの夢を」

そう穏やかな声で話す藍曦臣。じっと此方を見つめる瞳は、繰り返し見る夢と同じく。ほのかに甘く、染まっているようにも感じられた。

「どうして私は、あなたの夢を見るのでしょうか?」
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