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曦澄SSまとめ

失敗


最も幸福な瞬間、それは朝。

共に過ごした夜、その後に迎える朝。先に目覚め、安らかな寝顔を見つめる瞬間。閉じられた目蓋、長い睫毛、ほんのりと色づく真白な肌。何処かあどけなさの残るその表情。一切の警戒心もなくすやすやと眠りにつく姿、絡めた指もそのままに。彼に心を許されていると実感出来る。それが堪らなく嬉しく、幸福感に包まれる。

そして暫くすると、ゆっくり目蓋が開かれる。まだ眠りの世界の余韻が残る、ぼんやりとした薄紫色。おはよう、と囁けば此方の姿を捉えた白い肌がじわじわと朱に染まっていく。どうして起こさない、などと咎めるような言葉付きで。見つめてはいけませんか、そう返せば恥ずかしそうに目を逸らされる。悪趣味だ、などと言われるが、決して嫌がっている訳ではない事が分かる。
あまりにも愛おしく、可愛らしい。
とても幸せな瞬間だ。



ゆっくりと目蓋を開く。ぼんやりとした視界に映るのは、此方を見つめる恋人の表情。何処か得意げで、そして嬉しそうなそれ。

「おはよう、藍渙」
「……阿澄」

どうやら、今日は彼の方が先に目覚めていたらしい。少しだけ体温の低い手で、此方の頬をゆるりと撫でられる。

「あなたの寝顔は、随分と可愛らしいな」

嬉々とした態度を隠さない声。
先に起きる事が叶わなかった。きっと先に起きた彼は、眠る此方の姿を見つめていたであろう。決して起こさず、いつもの朝、彼の寝顔を見つめているように。
その事実が何処か恥ずかしく、少しだけ頬が熱くなっていく。

「……照れますね」
「ふん。俺の気持ちが少しでも分かったか」
「ですが目覚めた瞬間にあなたの顔が見れるのも、悪くありません」
「……本当にあなたは悪趣味だ」
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