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曦澄SSまとめ

秘密


例えば、そう。
連日飽きもせずに、此方へ送りつけてくる文。こんなに書く事があるのだろうか、それ程分厚い文。この男らしい繊細な筆跡で綴られる、甘ったるい愛の言葉の数々。

涼やかな声、耳触りの良いそれで此方の名前を呼ぶ瞬間。他の者から呼ばれる名前とはまた異なり、特別な何かを感じるそれ。

透き通った瞳、飴色をしたそれが此方を捉える時。仄かに甘く染まり、まるで吸い込まれてしまいそうだと。その甘さを帯びた色を知るのは、永遠に自分だけでありたいと。そんな事を思う、らしくもなく。

柔らかい笑み。此方に微笑みかける時は、隠し切れない愛おしさを滲ませて。

此方の思いを汲み取ってくれる。宗主として、個人として、全てを含めて。

……挙げれば切りがない。


「晩吟」

此方の髪を梳くように撫でながら、甘い声で。

「私の何処が好きですか?」

この男を愛おしく思う理由、その瞬間を。例えば伝えたとしたら。
きっと、喜ぶに違いない。綺麗な顔をとろけさせ、ああそんなにも私の事を、私もあなたを愛しています、その様なことを言われるだろう。

「……何処だろうな」

だがそれを面と向かって言えるほど、素直な性格はしていない。
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