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曦澄SSまとめ

両手を広げてハグを求める



「……疲れてるんじゃないか?」
此方の顔を覗き込む、心配そうな表情と目が合う。大丈夫だよ、などと普段となんら変わらずに返したが。その返答に納得がいかないのか、薄紫色の瞳にきつく睨まれてしまう。
「俺には心配もさせてくれないのか」
「そんなつもりは……」
「貴方は狡いな。いつもいつも俺のことばかり」
確かにその指摘通り、多少なりと疲労が溜まっているかも、しれない。だが、滅多に逢えない愛しい恋人と一緒にいるのだから。貴方の顔を見ただけで、疲れなんて何処かへ行ってしまったよ、そう言ってみれば呆れたように溜息を吐く目の前の恋人。
冗談でも何でもなく、事実だけれど。きっと信じてはくれないだろう。
「藍渙、来い」
名前を呼ばれたかと思えば、両手を広げている恋人の姿。意外な姿に思わず瞬きを数回。どうしたの、と恋人に問えば白い頬をじわじわと赤く染めていき、此方から視線を逸らしてしまった。
「俺が疲れている時、いつも抱き締めてくれるだろう。だから……」
「だから?」
「……抱き締めてやる!」
その言葉に、緩む口元が抑えられない。何とも可愛らしい事を、言うのだろうか。では、抱き締めて貰おうかな、そう返し腕の中に飛び込む。ふんわりと鼻腔をくすぐる、甘い香り。
「阿澄」
「どうした」
「頭も撫でてくれる?」
「……急に甘えただな」
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