ジョルノが倒れる直前何かを叫んだ。倒れたテーブルの向こうへ見えなくなったジョルノはやけに静かだが、それより康一は違うことが気になったらしい。

「何だ、今……倒れていく時チラッと何か見えたぞ」
「何が？」
「まさか……こいつまさかッ」

カウンターの向こうにいた店主が倒れたテーブルに身を乗り出して騒いでいる。振り返ってトムが仕方なく謝っていると、その間に康一が倒れたテーブルを回り込んで一緒に倒れたはずのジョルノを探し出した。
人に謝罪をさせておいてその態度かと思ったが、荷物を盗んだ犯人を見つけて興奮しているからだろうとこの場は許してやる。後で言うかも知れないが。
トムが椅子だけ起こして康一とジョルノを追いかけると、路地に入ったところで康一が降ってきた。思わず避けると康一の体が地面へとめり込む。
その向こうにはジョルノが立ってこちらを眺めていた。

「同じ様な『能力』……。しかしそのボクに対する攻撃、ボクは君の荷物を盗った。――なのに――手加減していたことが君のダメージを見ると逆によく分かる。君は『いい人』だ」
「康一さんに攻撃したの？」

トムが問いかければ落とした紙幣を拾ったジョルノがトムを見る。

「攻撃はしてない。反撃はさせてもらったけど」
「正当防衛だね」
「トム君！」
「煩い。――でも君が彼から荷物を盗まなければこんな事は起こらなかった。因果応報でもあるね」
「心が痛むよ。それじゃあね」

ジョルノがトムの横を抜けて歩き去っていく。その後ろ姿へ小さくしたナギニを投げてトムはその姿を見送った。ナギニがこっそりとジョルノの服の中へと潜り込んでいく。出来る限り小さくしたし、ナギニなら彼が寝泊まりしている場所へ戻るまでバレずにいられるはずだ。
スタンドを戻したらしい康一が立ち上がってそれを追いかけようとする。だが通りでは既にジョルノの姿は見えなくなっていた。

「トム君！ どうして逃がしたんだよ！？」
「ちゃんと追う為の手がかりは付けたからいいでしょ？ それに荷物は既に換金された後のようだったし、だったらここで怒るより荷物は諦めた方がいいですよ」

換金されてしまったのであれば、荷物が全て元通りに戻って来るということはないだろう。ならば目的をおそらくはそう簡単に換金出来ないパスポートへ絞ったほうがいい。

「でも彼が『汐華初流乃』で、スタンドを顕現させてることは確定したと考えていいと思います。荷物を盗まれたことのついでに、承太郎さんへ報告したほうがいいでしょう」
「でもお金……」
「コレクトコールで」

国際電話なのだから当たり前だ。