四部
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アマネが父親の治療を頼まれた億泰という少年は、ほんの少し前に亡くなった兄と二人きりで十年近く父親を救う方法だけを探していたらしい。だからと言いきってしまうのもアレだが頭はあまり良くなく、けれども懐へ入れば素直で良い子だった。
「――で、そのトニオさんとこの料理がスゲー美味かったんすよ!」
父親の食事の支度を手伝いながら、アマネへ今日学校帰りに行ってきたらしい店の話をする。とても美味しい上に体の調子が悪かったところがたちどころに良くなると言うその料理店は、確かスタンド使いになったイタリア人料理人が経営する店だったか。
調べは済んでいるが、その料理人はスタンドの力を『美味しい料理を食べさせる』事にだけにしか使わないようで、悪用しないだろうという報告書を書いたばかりだった。
「あ、モチロンアマネさんのメシも美味いっすよ!」
「ふふ、ありがとう。でもレストランと家庭料理じゃ比べちゃ失礼だろぉ。億泰君が美味しいと思ってくれたのならそれでいいよ」
父親が居るとは言え実質一人暮らしで自炊しなければならない億泰に、せめて夕食はと申し出たのはアマネである。本当は成長期の食べ盛りの男子高校生にもっとちゃんと食事をとってもらいたいというのが本音だが、ずっと彼の面倒を見るわけでもないのにそんなことは出来ない。
だからホテルへ帰る前の夕食を作る際に、少しずつ料理の手ほどきもしているのだ。
今日の夕飯は、そのイタリアンレストランで食べてきたのなら軽くていいだろうとあまり重い物は作らない。味噌汁の味噌を溶きながら話していた億泰は、自分の手元を見て黙り込んでから、ポツリと落とすように呟いた。
「……オヤジや兄貴にも、食わせたかったな」
「……。お父さんはまだチャンスがあると思うけどなぁ」
彼の父親には、アマネがここ数日毎日通って『虹色の光』を当てている。一気に治すことも出来なくはないが、アマネの身にどれだけの負担がかかるか分からず、それにあの姿になってしまってからの十年分の記憶と、なる前の記憶が変に混同されても困るので慎重にならざるを得ないのだ。
それでも今日、やっと『オヤジ』という呼びかけを人の声で聞き分ける程度にはなった。億泰へはまだ言っていないが、食事を運ぶ時に教える予定である。
「でもお父さんは億泰君が作ったご飯でも充分美味しいって言うと思うぜぇ」
「げぇー。オヤジがんな事言うと思うっすか? 吐かねーだけマシって感じっすよきっと」
そう言っておきながら、食事を運んだ際に億泰の呼びかけへ反応していた父親に、億泰は涙をこぼす寸前で感動していた。
「――で、そのトニオさんとこの料理がスゲー美味かったんすよ!」
父親の食事の支度を手伝いながら、アマネへ今日学校帰りに行ってきたらしい店の話をする。とても美味しい上に体の調子が悪かったところがたちどころに良くなると言うその料理店は、確かスタンド使いになったイタリア人料理人が経営する店だったか。
調べは済んでいるが、その料理人はスタンドの力を『美味しい料理を食べさせる』事にだけにしか使わないようで、悪用しないだろうという報告書を書いたばかりだった。
「あ、モチロンアマネさんのメシも美味いっすよ!」
「ふふ、ありがとう。でもレストランと家庭料理じゃ比べちゃ失礼だろぉ。億泰君が美味しいと思ってくれたのならそれでいいよ」
父親が居るとは言え実質一人暮らしで自炊しなければならない億泰に、せめて夕食はと申し出たのはアマネである。本当は成長期の食べ盛りの男子高校生にもっとちゃんと食事をとってもらいたいというのが本音だが、ずっと彼の面倒を見るわけでもないのにそんなことは出来ない。
だからホテルへ帰る前の夕食を作る際に、少しずつ料理の手ほどきもしているのだ。
今日の夕飯は、そのイタリアンレストランで食べてきたのなら軽くていいだろうとあまり重い物は作らない。味噌汁の味噌を溶きながら話していた億泰は、自分の手元を見て黙り込んでから、ポツリと落とすように呟いた。
「……オヤジや兄貴にも、食わせたかったな」
「……。お父さんはまだチャンスがあると思うけどなぁ」
彼の父親には、アマネがここ数日毎日通って『虹色の光』を当てている。一気に治すことも出来なくはないが、アマネの身にどれだけの負担がかかるか分からず、それにあの姿になってしまってからの十年分の記憶と、なる前の記憶が変に混同されても困るので慎重にならざるを得ないのだ。
それでも今日、やっと『オヤジ』という呼びかけを人の声で聞き分ける程度にはなった。億泰へはまだ言っていないが、食事を運ぶ時に教える予定である。
「でもお父さんは億泰君が作ったご飯でも充分美味しいって言うと思うぜぇ」
「げぇー。オヤジがんな事言うと思うっすか? 吐かねーだけマシって感じっすよきっと」
そう言っておきながら、食事を運んだ際に億泰の呼びかけへ反応していた父親に、億泰は涙をこぼす寸前で感動していた。