五部
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トランクはトムの魔法でも戻ってこない。杖の代わりになってくれていたナギニを肩へ戻し康一を振り返った。スタンドのエコーズもどうやら逃げた少年を見つけることが出来なかったらしく、康一は残念そうにうなだれている。
「仕方ない。お金は社会勉強だと思って諦めましょう。でもパスポートに関してはどうにかしないと」
国籍が違う時点でどんな旅行者もパスポートだけは大切にしなければいけない。身分証明として必須であるし、それを使って自分の存在を悪用される場合もあるからだ。
ただ、先程の少年が康一のパスポートを盗んでいったのだとしても、パスポートは裏社会へ脚を踏み込んでいる事でもない限り転売は難しい。少年はタクシーを利用してのスリに手慣れた様子ではあったが、その割には警備員へ賄賂を渡していた。
裏社会と関わりがあるのなら、個人で賄賂を流すことはしない。なので彼は裏社会とは繋がっていないだろう。なので早々に日本大使館へでも連絡するか、パスポートを取り返せばまだ取り返しはつく。
こんなところで『前世』のマフィアと親戚だった記憶が役に立つとはと思いながら、トムは改めて落ち込んでいる康一へ声を掛けた。
「康一さん。とりあえず僕のお金で『汐華初流乃』を探しに行きましょう。さっきの泥棒の名前も気になりますし、彼が着ていたのは改造されてたけど制服でした。ということはおそらく学生だ。確か『汐華初流乃』も学生だったし、最悪『汐華初流乃』からこの辺の小悪党の情報を聞き出せばいい」
「そうだね……。ごめんね、迷惑かけて」
「覚悟してましたから大丈夫、と言えたら良かったんですけど」
今度こそまっとうなタクシー乗り場の列へ並ぶ。タクシーが来るのを待っている間、出来るだけ周囲の無関係な人達へ聞き取られないように、に異本語で康一へと話しかけた。
「さっきの彼、『ジョルノ・ジョバァーナ』って言うらしいですね」
「君も聞いた? なんか『汐華初流乃』と名前の発音が似てるよね。まさかとは思うけど同一人物とか」
「そうですね、多分、イタリアで生活するのに呼びやすい発音を使ってるのかも知れません。僕だって日本以外じゃ『トム・オルカ・グラマト』って名乗ってますし」
「グラマト? 斑鳩じゃないの?」
「父さんの母の姓ですよ。日本以外じゃ和名と英名に近い名前の組み合わせは変に思われますし」
「ああそっか、養子だっけ君」
発音の問題で愛称で通していたりそれらしい発音で誤魔化してしまうことは、実は結構よくあることだ。
「あれ、じゃあ君ってアマネさんに引き取られる前はなんて名前だったの?」
「トム・リドルですよ」
「仕方ない。お金は社会勉強だと思って諦めましょう。でもパスポートに関してはどうにかしないと」
国籍が違う時点でどんな旅行者もパスポートだけは大切にしなければいけない。身分証明として必須であるし、それを使って自分の存在を悪用される場合もあるからだ。
ただ、先程の少年が康一のパスポートを盗んでいったのだとしても、パスポートは裏社会へ脚を踏み込んでいる事でもない限り転売は難しい。少年はタクシーを利用してのスリに手慣れた様子ではあったが、その割には警備員へ賄賂を渡していた。
裏社会と関わりがあるのなら、個人で賄賂を流すことはしない。なので彼は裏社会とは繋がっていないだろう。なので早々に日本大使館へでも連絡するか、パスポートを取り返せばまだ取り返しはつく。
こんなところで『前世』のマフィアと親戚だった記憶が役に立つとはと思いながら、トムは改めて落ち込んでいる康一へ声を掛けた。
「康一さん。とりあえず僕のお金で『汐華初流乃』を探しに行きましょう。さっきの泥棒の名前も気になりますし、彼が着ていたのは改造されてたけど制服でした。ということはおそらく学生だ。確か『汐華初流乃』も学生だったし、最悪『汐華初流乃』からこの辺の小悪党の情報を聞き出せばいい」
「そうだね……。ごめんね、迷惑かけて」
「覚悟してましたから大丈夫、と言えたら良かったんですけど」
今度こそまっとうなタクシー乗り場の列へ並ぶ。タクシーが来るのを待っている間、出来るだけ周囲の無関係な人達へ聞き取られないように、に異本語で康一へと話しかけた。
「さっきの彼、『ジョルノ・ジョバァーナ』って言うらしいですね」
「君も聞いた? なんか『汐華初流乃』と名前の発音が似てるよね。まさかとは思うけど同一人物とか」
「そうですね、多分、イタリアで生活するのに呼びやすい発音を使ってるのかも知れません。僕だって日本以外じゃ『トム・オルカ・グラマト』って名乗ってますし」
「グラマト? 斑鳩じゃないの?」
「父さんの母の姓ですよ。日本以外じゃ和名と英名に近い名前の組み合わせは変に思われますし」
「ああそっか、養子だっけ君」
発音の問題で愛称で通していたりそれらしい発音で誤魔化してしまうことは、実は結構よくあることだ。
「あれ、じゃあ君ってアマネさんに引き取られる前はなんて名前だったの?」
「トム・リドルですよ」