五部
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空港を出ると既に他の空港利用者がタクシー乗り場へ並んでしまっていた。康一がモタモタしていなければと少しだけ思ったが、流石に海外旅行初心者へそれを告げるのは酷だろうと口を閉ざす。下手に康一を傷つけて後から養父のアマネに注意されるのも、康一の彼女である由花子へグチグチ文句を言われるのも御免である。
空港の警備員達が、タクシー運転手のバイトをしているらしい金髪の少年と談笑しているのが視界へ入った。サボっていないで仕事をしろと思うがイタリア人は大らかだ。多少のサボリはサボリとされないどころか、昼寝の時間もある勤め先もある。それだけ平和だといえばいいのか、呑気なのか。トムなら断然呑気だと罵る。
警備員達と談笑している少年は、トムも含めて外人は発育がいいのでこと細かくは分からないものの、自分の外見と照らし合わせれば見たところトムよりもいくつか年上なだけの様に見えた。多少奇抜な髪型をしているが一般的には美形へ分類されるだろう顔立ちに、何となく目がいく。
少年は一発芸なのか警備員達へ言われるがままに耳の穴へ耳たぶを全部入れるなんて真似を披露していた。
「あの人おもしろい事出来るね」
「そうですね」
康一も同じ少年を見ていたらしい。ひとしきり笑った警備員達が去っていこうとするのに、少年がこっそりと煙草の箱を渡していた。
その箱の中へ紙幣が入っているのを見てトムは少年から目を逸らす。だがそれより一瞬早く、少年のほうが康一とトムへ気付いて声を掛けてきた。
「タクシーかい? ねえタクシー探してる?」
「探してるけど君のタクシーへ乗る気にはならない。康一さん行くよ」
「アルバイトだし後は帰るだけだから安くしときますよ。八千円でどう?」
「プ、高いよ。結構です」
「君達言葉すごくペラペラですね。いやすごいなぁ。イタリアに住んだことある?」
「え? それはですねー、露伴先生に喋れるようにしてもらっ……」
「康一さん!」
トムは無視したかったのに康一が完全に捕まってしまっている。話しかけられたらそう無視が出来ない日本人の性だと分かっていても頭が痛くなった。
もう放置したいのに、康一の護衛こそトムがここへいる理由なのだから困る。
「いやでも、少しは異国文化を体験すると思えば無視していいのかな……?」
そう考え直してトムが口出しせずにいると、康一はまんまと少年の口車に乗ってタクシーへトランクを乗せて手放した。旅慣れしていない日本人のお人好しだと思うなと少年へ忠告していたが、どう見ても旅慣れしていないおのぼりさんだろう。
走り出すタクシー。運転席の少年とトムの視線が一瞬絡む。
空港の警備員達が、タクシー運転手のバイトをしているらしい金髪の少年と談笑しているのが視界へ入った。サボっていないで仕事をしろと思うがイタリア人は大らかだ。多少のサボリはサボリとされないどころか、昼寝の時間もある勤め先もある。それだけ平和だといえばいいのか、呑気なのか。トムなら断然呑気だと罵る。
警備員達と談笑している少年は、トムも含めて外人は発育がいいのでこと細かくは分からないものの、自分の外見と照らし合わせれば見たところトムよりもいくつか年上なだけの様に見えた。多少奇抜な髪型をしているが一般的には美形へ分類されるだろう顔立ちに、何となく目がいく。
少年は一発芸なのか警備員達へ言われるがままに耳の穴へ耳たぶを全部入れるなんて真似を披露していた。
「あの人おもしろい事出来るね」
「そうですね」
康一も同じ少年を見ていたらしい。ひとしきり笑った警備員達が去っていこうとするのに、少年がこっそりと煙草の箱を渡していた。
その箱の中へ紙幣が入っているのを見てトムは少年から目を逸らす。だがそれより一瞬早く、少年のほうが康一とトムへ気付いて声を掛けてきた。
「タクシーかい? ねえタクシー探してる?」
「探してるけど君のタクシーへ乗る気にはならない。康一さん行くよ」
「アルバイトだし後は帰るだけだから安くしときますよ。八千円でどう?」
「プ、高いよ。結構です」
「君達言葉すごくペラペラですね。いやすごいなぁ。イタリアに住んだことある?」
「え? それはですねー、露伴先生に喋れるようにしてもらっ……」
「康一さん!」
トムは無視したかったのに康一が完全に捕まってしまっている。話しかけられたらそう無視が出来ない日本人の性だと分かっていても頭が痛くなった。
もう放置したいのに、康一の護衛こそトムがここへいる理由なのだから困る。
「いやでも、少しは異国文化を体験すると思えば無視していいのかな……?」
そう考え直してトムが口出しせずにいると、康一はまんまと少年の口車に乗ってタクシーへトランクを乗せて手放した。旅慣れしていない日本人のお人好しだと思うなと少年へ忠告していたが、どう見ても旅慣れしていないおのぼりさんだろう。
走り出すタクシー。運転席の少年とトムの視線が一瞬絡む。