四部
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仗助視点
吉良吉影と対峙していた時とは違い、いつものハーフアップにされた髪と肩へ掛けられたストール姿。彼の息子であるトムの話では私用の時はいつもそういう格好だが、仕事の時は流石にもっと男性らしい格好らしい。
潮風にその毛先が遊ばれている。穏やかに微笑む姿に初めて会った時の事が思い出された。
つり目がちな紫の瞳が印象的で、思えばあの時見た瞳がもう駄目だったのだろう。
「帰っちまうんスね」
「うん」
優しく微笑まれる。
「でも時々来るよ。そんな寂しい顔はするもんじゃねぇ」
「……寂しい顔、してましたか」
「俺がそういう顔をして欲しいと思ってるだけかもなぁ」
冗談なのか首を傾けてアマネが悪意なく微笑んだ。指先で頬を引っかいて動揺を隠す。
寂しいと思った。無論ジョセフや承太郎やトムがいなくなることも寂しいのだけれど、この人がいなくなることが寂しい。
彼に対する気持ちは多分尊敬とか憧れではなかった。けれどもだからといって恋愛とかそういう露伴がネタにしそうなモノでもないだろう。むしろそうやってからかうことすら不敬な気がする。
これは言葉に出来ない。したくない。
「寂しいんすか」
「寂しいよ」
「――行かないでくれって、言ったらどうします?」
アマネが仗助を見つめて、口を開く。
「何もしねぇよ。俺はこのまま空条達と船へ乗るし、君はこの杜王町で暮らす。この町じゃ色々な人が傷ついたなぁ。重ちー少年の家族は帰ってこない重ちー少年を待つし、川尻少年も父親が殺されたという真実をきっと隠して過ごしていく。そんな“見えない傷”を、治せる力を持つ君はどうしたい?」
「……分かんねーっスよ」
「ふふ。俺も分かんねぇよ。でも自分の見えない傷も治せねぇし、どうしても痛みに耐えられなくなったら君に会いに来よう。そうしてお互いの傷を癒そうかぁ。俺達は“お揃い”らしいから」
そう言って笑って、アマネが腕を伸ばしてくる。抱き締められて、耳のすぐ傍でキスをされた様なリップ音が響く。
思わず耳を押さえて離れれば、アマネは予想以上にあっけらかんとしていた。
「な、なッ……ッ」
「ジョセフさんの息子でも日本育ちだからこういうスキンシップは苦手かぁ? それともこんなオジサンにされると思ってなかったかぁ?」
外人の挨拶だと気付いて、照れていたのが嫌に恥ずかしくなる。してやられた気分でアマネを睨めば、アマネは楽しくて仕方がないとばかりに微笑んでいた。
港へ船が到着したのか警笛の音がする。トム達がアマネを呼んでいた。多分誰にも今のことは見られていない。と思いたかった。
第四部 完
吉良吉影と対峙していた時とは違い、いつものハーフアップにされた髪と肩へ掛けられたストール姿。彼の息子であるトムの話では私用の時はいつもそういう格好だが、仕事の時は流石にもっと男性らしい格好らしい。
潮風にその毛先が遊ばれている。穏やかに微笑む姿に初めて会った時の事が思い出された。
つり目がちな紫の瞳が印象的で、思えばあの時見た瞳がもう駄目だったのだろう。
「帰っちまうんスね」
「うん」
優しく微笑まれる。
「でも時々来るよ。そんな寂しい顔はするもんじゃねぇ」
「……寂しい顔、してましたか」
「俺がそういう顔をして欲しいと思ってるだけかもなぁ」
冗談なのか首を傾けてアマネが悪意なく微笑んだ。指先で頬を引っかいて動揺を隠す。
寂しいと思った。無論ジョセフや承太郎やトムがいなくなることも寂しいのだけれど、この人がいなくなることが寂しい。
彼に対する気持ちは多分尊敬とか憧れではなかった。けれどもだからといって恋愛とかそういう露伴がネタにしそうなモノでもないだろう。むしろそうやってからかうことすら不敬な気がする。
これは言葉に出来ない。したくない。
「寂しいんすか」
「寂しいよ」
「――行かないでくれって、言ったらどうします?」
アマネが仗助を見つめて、口を開く。
「何もしねぇよ。俺はこのまま空条達と船へ乗るし、君はこの杜王町で暮らす。この町じゃ色々な人が傷ついたなぁ。重ちー少年の家族は帰ってこない重ちー少年を待つし、川尻少年も父親が殺されたという真実をきっと隠して過ごしていく。そんな“見えない傷”を、治せる力を持つ君はどうしたい?」
「……分かんねーっスよ」
「ふふ。俺も分かんねぇよ。でも自分の見えない傷も治せねぇし、どうしても痛みに耐えられなくなったら君に会いに来よう。そうしてお互いの傷を癒そうかぁ。俺達は“お揃い”らしいから」
そう言って笑って、アマネが腕を伸ばしてくる。抱き締められて、耳のすぐ傍でキスをされた様なリップ音が響く。
思わず耳を押さえて離れれば、アマネは予想以上にあっけらかんとしていた。
「な、なッ……ッ」
「ジョセフさんの息子でも日本育ちだからこういうスキンシップは苦手かぁ? それともこんなオジサンにされると思ってなかったかぁ?」
外人の挨拶だと気付いて、照れていたのが嫌に恥ずかしくなる。してやられた気分でアマネを睨めば、アマネは楽しくて仕方がないとばかりに微笑んでいた。
港へ船が到着したのか警笛の音がする。トム達がアマネを呼んでいた。多分誰にも今のことは見られていない。と思いたかった。
第四部 完