四部
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七時三十一分が起点だ。そこから先の未来で何かが“数回”、繰り返された。
繰り返されたことによって世界への書き換えが起こり、その差違がアマネの意識へと強制的に修正をかけようとしてきたのである。以前平行世界の未来へ行った時と同じような現象が起こったのだ。
問題があるとすれば、繰り返しの終点がいつであるのかが分からないことである。今日の七時三十一分から丸ごと一日か一年か、書き換えが行なわれる分の時間が分からない。
だが逆に考えると、吉良吉影にそれだけ近付いたということでもある。書き換えを行わなければ逃げられないところへまで追いつめた。そう考えていいだろう。
ならばアマネがやることは一つしかない。
「大丈夫父さん?」
「……だいじょばねぇ。水くれぇ」
ベッドへ座らされて承太郎が呼んでくれたトムに水を頼む。急いで水を汲んで戻ってきたトムの頭を撫でながら一息でその水を飲み干した。
ナギニが気遣うようにバスタオルをくわえて運んでくる。承太郎はジョセフと赤ん坊の朝食とこれから赴く川尻少年への聴取の支度をしていた。
露伴との待ち合わせの時間は八時半で、ホテルから待ち合わせ場所へまでは二十分。今は七時五十五分。
目を閉じて深呼吸をする。
あまり仲の良くない露伴が死んだとしても、仗助は悲しむだろう。あの他人の傷だけしか治せない優しい子が泣くのは駄目だ。
「トム。ごめん」
「……いいよ。父さんがそうしたいんだからいいんだよ」
俯いて頭を抱える。脳裏に一気に情報の映像や音が洪水のように押し寄せてくるのを感じながら、欲しい情報だけを必死に探した。
『×××』は未来過去現在に拘らず有象無象の全ての知識の塊だ。いくらアマネでも脳の処理が追いつかず数分で激しい頭痛を引き起こす。
川尻早人。
川尻しのぶ。
川尻浩作。
切り取られた手。
石の弓。
ビデオテープ。
キラークイーン。
伸びる爪。
猫草。
吉良吉影。
雨が降る。
落雷。
露伴が死ぬ。
質問。
承太郎が死ぬ。
仗助が死ぬ。
時間が戻る。繰り返すことで排除する。
解除するには――。
「――ごふっ」
飲んだ水がせり上がってきて吐いた。ナギニが持ってきてくれていたタオルでそれを押さえる。それでも汚してしまったので承太郎へ謝らなければいけない。ここはアマネ達の部屋ではなかった。
吐いた水に赤いものが混じっている。それを眺めて舌打ちしてから、アマネはふらつく足に力を込めて立ち上がった。
「父さん……」
不安げな息子の声。息子を不安がらせるのは父親失格だ。
肩に掛けていたストールをトムの肩へかけてやる。
「預かっててくれぇ。終わる頃にはとっくに雨がやんでるけど、濡れたら寒ぃからなぁ」
繰り返されたことによって世界への書き換えが起こり、その差違がアマネの意識へと強制的に修正をかけようとしてきたのである。以前平行世界の未来へ行った時と同じような現象が起こったのだ。
問題があるとすれば、繰り返しの終点がいつであるのかが分からないことである。今日の七時三十一分から丸ごと一日か一年か、書き換えが行なわれる分の時間が分からない。
だが逆に考えると、吉良吉影にそれだけ近付いたということでもある。書き換えを行わなければ逃げられないところへまで追いつめた。そう考えていいだろう。
ならばアマネがやることは一つしかない。
「大丈夫父さん?」
「……だいじょばねぇ。水くれぇ」
ベッドへ座らされて承太郎が呼んでくれたトムに水を頼む。急いで水を汲んで戻ってきたトムの頭を撫でながら一息でその水を飲み干した。
ナギニが気遣うようにバスタオルをくわえて運んでくる。承太郎はジョセフと赤ん坊の朝食とこれから赴く川尻少年への聴取の支度をしていた。
露伴との待ち合わせの時間は八時半で、ホテルから待ち合わせ場所へまでは二十分。今は七時五十五分。
目を閉じて深呼吸をする。
あまり仲の良くない露伴が死んだとしても、仗助は悲しむだろう。あの他人の傷だけしか治せない優しい子が泣くのは駄目だ。
「トム。ごめん」
「……いいよ。父さんがそうしたいんだからいいんだよ」
俯いて頭を抱える。脳裏に一気に情報の映像や音が洪水のように押し寄せてくるのを感じながら、欲しい情報だけを必死に探した。
『×××』は未来過去現在に拘らず有象無象の全ての知識の塊だ。いくらアマネでも脳の処理が追いつかず数分で激しい頭痛を引き起こす。
川尻早人。
川尻しのぶ。
川尻浩作。
切り取られた手。
石の弓。
ビデオテープ。
キラークイーン。
伸びる爪。
猫草。
吉良吉影。
雨が降る。
落雷。
露伴が死ぬ。
質問。
承太郎が死ぬ。
仗助が死ぬ。
時間が戻る。繰り返すことで排除する。
解除するには――。
「――ごふっ」
飲んだ水がせり上がってきて吐いた。ナギニが持ってきてくれていたタオルでそれを押さえる。それでも汚してしまったので承太郎へ謝らなければいけない。ここはアマネ達の部屋ではなかった。
吐いた水に赤いものが混じっている。それを眺めて舌打ちしてから、アマネはふらつく足に力を込めて立ち上がった。
「父さん……」
不安げな息子の声。息子を不安がらせるのは父親失格だ。
肩に掛けていたストールをトムの肩へかけてやる。
「預かっててくれぇ。終わる頃にはとっくに雨がやんでるけど、濡れたら寒ぃからなぁ」