四部
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トム視点
季節が夏へ移り変わり、杜王町へ本格的に人の集まる時期となった。
以前父のアマネが警察署へ忍び込んで調べた行方不明者リストも夏には他の季節より被害者が増えており、それはこの町へ旅行客が増えて品定めに事欠かないからと暑い季節故に殺した後の遺体が早く腐りやすい為だったのだろう。いくら犯人だった吉良吉影のスタンド能力によって遺体を爆発させて隠滅するとはいえ、死体の腐臭は残りやすい。
その吉良吉影は、名も分からぬ誰かへ成り代わってからは今のところ大人しくしているようだった。少なくとも行方不明者が出ていないというのがその証拠だろう。杜王町から離れて犯行を行なっていたらまた別だが、アマネが調べた範囲内ではその可能性も低いらしい。
その吉良吉影が大人しくしているのと日本へいるのを理由に、トムは父のアマネとその友人である承太郎と一緒に墓参りへ向かった。
「今年はいつもより早ぇけど、そもそも命日でも何でもねぇしなぁ」
手桶へ汲まれた水と柄杓。途中で買った仏花。『花京院家』と書かれた墓石。
十年前に死んだ二人の知人の墓である。
彼のことは、トムは又聞きでしか知らない。けれども彼が死んでしまったからトムはこの世界へ生まれることになった。父のアマネは数多の転生を繰り返して人生を歩む人であり、世界に一人はきっといるのだろう彼を支えてくれる人に、この墓の下の人物はなれる可能性を持っていたのである。
しかし彼はアマネが心を許す直前で死んでしまった。
花瓶の中で枯れた花の茎が雨水に浸って腐っている。それを丁寧に洗ったアマネと承太郎が花を供えた。承太郎が持ってきたサクランボのパックと線香を供えて手を合わせる。
彼が死んでしまったから、トムは父を支える為に無理矢理この世界へ生まれた。父も知らないであろうそれを、トムはきっとこの世界を全うするまでは誰にも言えない。多分そのせいでトムの寿命も短いだろうけれど構わなかった。
「……天気雨、か」
手桶を戻しに行ったアマネを待っている間に降ってきた雨に承太郎が呟く。空は晴れているのに雨はやまない。
「父さんとここに来るといつも降りますよ。承太郎さんの時はどうなんですか」
「……墓参り自体、久しぶりだ」
「僕は、墓参り好きですけどね」
きっと今までにも父に泣くチャンスはたくさんあっただろう。こういった雨の日に。
けれどもトムの父は泣いてくれないので、せめてこの第二候補の男は死なないように守ってやらなければならない。
季節が夏へ移り変わり、杜王町へ本格的に人の集まる時期となった。
以前父のアマネが警察署へ忍び込んで調べた行方不明者リストも夏には他の季節より被害者が増えており、それはこの町へ旅行客が増えて品定めに事欠かないからと暑い季節故に殺した後の遺体が早く腐りやすい為だったのだろう。いくら犯人だった吉良吉影のスタンド能力によって遺体を爆発させて隠滅するとはいえ、死体の腐臭は残りやすい。
その吉良吉影は、名も分からぬ誰かへ成り代わってからは今のところ大人しくしているようだった。少なくとも行方不明者が出ていないというのがその証拠だろう。杜王町から離れて犯行を行なっていたらまた別だが、アマネが調べた範囲内ではその可能性も低いらしい。
その吉良吉影が大人しくしているのと日本へいるのを理由に、トムは父のアマネとその友人である承太郎と一緒に墓参りへ向かった。
「今年はいつもより早ぇけど、そもそも命日でも何でもねぇしなぁ」
手桶へ汲まれた水と柄杓。途中で買った仏花。『花京院家』と書かれた墓石。
十年前に死んだ二人の知人の墓である。
彼のことは、トムは又聞きでしか知らない。けれども彼が死んでしまったからトムはこの世界へ生まれることになった。父のアマネは数多の転生を繰り返して人生を歩む人であり、世界に一人はきっといるのだろう彼を支えてくれる人に、この墓の下の人物はなれる可能性を持っていたのである。
しかし彼はアマネが心を許す直前で死んでしまった。
花瓶の中で枯れた花の茎が雨水に浸って腐っている。それを丁寧に洗ったアマネと承太郎が花を供えた。承太郎が持ってきたサクランボのパックと線香を供えて手を合わせる。
彼が死んでしまったから、トムは父を支える為に無理矢理この世界へ生まれた。父も知らないであろうそれを、トムはきっとこの世界を全うするまでは誰にも言えない。多分そのせいでトムの寿命も短いだろうけれど構わなかった。
「……天気雨、か」
手桶を戻しに行ったアマネを待っている間に降ってきた雨に承太郎が呟く。空は晴れているのに雨はやまない。
「父さんとここに来るといつも降りますよ。承太郎さんの時はどうなんですか」
「……墓参り自体、久しぶりだ」
「僕は、墓参り好きですけどね」
きっと今までにも父に泣くチャンスはたくさんあっただろう。こういった雨の日に。
けれどもトムの父は泣いてくれないので、せめてこの第二候補の男は死なないように守ってやらなければならない。