六部
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トム視点
「運命の存在しない者がいるわけがないッ!」
色々言っておいて何だが、正直その通りだとトムは思う。ただトムと神父では決定的に運命の定義が違うだけだ。
トムは『運命』とは『道』と同じで後ろへ出来るものだと考えている。暗闇を切り開いた努力の事であり、切り開こうとした覚悟へ『運命』なんて格好付けた言い方をしているのだ。
神父は『運命』とは終点も始点もないレールだと考えているだけのこと。人類はそのレールの上を延々と走り続けるだけの存在。
そんなの面白くも何ともない。ボロボロになったレールがさっさと老朽化して崩れてしまえとも思う。
「――エンポリオ。よく聞け」
神父がトムを睨むのに、トムは後ろへ庇ったエンポリオにだけ聞こえるように小声で話しかけた。
「僕は父さん程強くない。戦い慣れてもいないしそもそも魔法使いって戦う者じゃない。承太郎さんでも追えない相手を追うなんて到底無理だし、まず今の僕は幽霊同然だ。呼吸もしてない。だからエンポリオ。神父へ止めを差すのは君にしか出来ないよ」
「えッ」
「運命は決まってないさ。決めるのは――切り開くのは君だ」
神父が階段を駆け下りる動作をした瞬間にその姿が消える。それへ応えるようにトムは構えていたチャクラムを現在出来る最大限の量まで『増殖』させた。
父のアマネがセンターの屋上で、鎖を使ってやったのと同じ事だ。障害物を増やして足止めする。ただトムが足止めに使っているのは触っても問題ない鎖と違ってよく切れるであろうチャクラムであるということ。
それから、チャクラムの投擲技術なら自分の腕前を信じているということだ。
投擲技術はアマネから教わった。守ってやりたいと考えることは幼い徐倫を見て思った。実行する決意は承太郎の背を見て感じた。
誰かへ託すことを、ブチャラティとジョルノの姿から悟った。
そういった縁があってこそ人は強くなる。絡み合った糸が強固になるように、たった一人ではなく、誰かと。――彼らと。
「運命なんか知らなくたって、人間は覚悟も出来るさ」
全てのとは流石にいかなかったが、チャクラムの殆どはやはり避けられてしまった。加速された時間に崩れていくチャクラムが避けられた理由だろう。父が幻覚で作り出す鎖とトムのチャクラムは違うのだ。
けれどもそれで構わなかった。チャクラムの本体だったナギニがエンポリオと一緒に壁の隙間へと逃げていく。他のチャクラムは全てそのナギニの動きを隠すためのもの。
神父に押しのけられる。押しのけ様、神父は承太郎へそうしたように手刀でトムを殺したつもりだったのだろう。振り返りもせずに隙間へと追いかけていった。
「運命の存在しない者がいるわけがないッ!」
色々言っておいて何だが、正直その通りだとトムは思う。ただトムと神父では決定的に運命の定義が違うだけだ。
トムは『運命』とは『道』と同じで後ろへ出来るものだと考えている。暗闇を切り開いた努力の事であり、切り開こうとした覚悟へ『運命』なんて格好付けた言い方をしているのだ。
神父は『運命』とは終点も始点もないレールだと考えているだけのこと。人類はそのレールの上を延々と走り続けるだけの存在。
そんなの面白くも何ともない。ボロボロになったレールがさっさと老朽化して崩れてしまえとも思う。
「――エンポリオ。よく聞け」
神父がトムを睨むのに、トムは後ろへ庇ったエンポリオにだけ聞こえるように小声で話しかけた。
「僕は父さん程強くない。戦い慣れてもいないしそもそも魔法使いって戦う者じゃない。承太郎さんでも追えない相手を追うなんて到底無理だし、まず今の僕は幽霊同然だ。呼吸もしてない。だからエンポリオ。神父へ止めを差すのは君にしか出来ないよ」
「えッ」
「運命は決まってないさ。決めるのは――切り開くのは君だ」
神父が階段を駆け下りる動作をした瞬間にその姿が消える。それへ応えるようにトムは構えていたチャクラムを現在出来る最大限の量まで『増殖』させた。
父のアマネがセンターの屋上で、鎖を使ってやったのと同じ事だ。障害物を増やして足止めする。ただトムが足止めに使っているのは触っても問題ない鎖と違ってよく切れるであろうチャクラムであるということ。
それから、チャクラムの投擲技術なら自分の腕前を信じているということだ。
投擲技術はアマネから教わった。守ってやりたいと考えることは幼い徐倫を見て思った。実行する決意は承太郎の背を見て感じた。
誰かへ託すことを、ブチャラティとジョルノの姿から悟った。
そういった縁があってこそ人は強くなる。絡み合った糸が強固になるように、たった一人ではなく、誰かと。――彼らと。
「運命なんか知らなくたって、人間は覚悟も出来るさ」
全てのとは流石にいかなかったが、チャクラムの殆どはやはり避けられてしまった。加速された時間に崩れていくチャクラムが避けられた理由だろう。父が幻覚で作り出す鎖とトムのチャクラムは違うのだ。
けれどもそれで構わなかった。チャクラムの本体だったナギニがエンポリオと一緒に壁の隙間へと逃げていく。他のチャクラムは全てそのナギニの動きを隠すためのもの。
神父に押しのけられる。押しのけ様、神父は承太郎へそうしたように手刀でトムを殺したつもりだったのだろう。振り返りもせずに隙間へと追いかけていった。